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89 ブロック大会で優勝

演劇部のことを何も知らない私が、こんな物語を書くのは恥ずかしいのですが、高校生の気分になって、何とか書いています。

高校の時の同級生に演劇部の女の子がいたんです。

もっと話を聴いとけばよかったなー。

12月下旬。

クリスマス直前の3日間、全国高等学校演劇大会地方ブロック大会が開催されました。


近県の強豪高校が集まって、全国大会進出をかけて、しのぎを削ります。


でも、私たちはおじけづいたりしませんでした。

直前に山野先生から、

「ここは通過点だと思え、全国大会で戦うつもりで、やるんだ。

君たちはもうすでに全国レベルになっている。」

と、太鼓判を押されていたからです。


私たちは、ここ数週間、ハードな練習を積んできました。

県大会と同じ劇でありながら、細部をかなり変更します。

こだわったのは、

「観客と審査員を泣かせる!ほかの小さいことは気にしない!」

それ一点。

このシンプルな山野先生の指導は演劇部員にストレートに伝わり、新たな活力となりました。


「演技の上手い下手じゃない。本物の演技をするんだ。

見る人の心を動かすことだけを考えよう!」

私たちはそういう考え方のもとに一つになります。


役に感情移入するだけでなく、観客の心を揺さぶるセリフと表情、声の出し方を徹底的に考え、表現することにしました。


そう、エキセントリックな芝居をするのは、主役の男子高校生の板谷君だけだったんですが、他の役もそれぞれ、凝った芝居を見せるようになりました。


ただし、わざとらしい演技は鼻につきます。

大げさすぎる演技はしらけます。

演技の迫力だけを増し、いかにもわざとらしいという演技はしないという難しいものを求められ、みんな苦労しますが、何度も演技の練習をしているうちに、それぞれが役を掴んでいきます。


「だめだめ、わざと感動させようとしているのが見え見え!もっとシンプルに!

考えていることが透けてみえたらだめだよ。

観客をバカにしちゃいけない!

観客が自然に演技に引き込まれるようにしよう。

上手くやろうなんて思うな。」

そんな山野先生の激にみんな応えようとします。


私も、情けない女子高校生の役を演じているだけの演技から、心の変化がはっきりとわかるような演技ができるように演技を研ぎ澄ませていきます。

山野先生から何度もダメ出しをうけながらも、ブロック大会直前には

「うん、少しよくなった。」という少しのお褒めのことばをいただき、自信になります。


最後の方は、みんな普通じゃない感覚、いわゆるゾーンというか仙人のような境地に入っていきます。

普段の生活の時から、劇中のセリフや動きが頭を駆け巡るようになります。



そして、ブロック大会が開催され、あっという間に演技時間が終了してしまいました。


地方ブロック大会という大舞台なのに、私たちは何故か緊張することもなく、

お芝居に集中することができました。


普段の練習がきつかっただけに、本番は楽に感じたくらいです。



結果は・・・


「優勝、桃花高校!来年の全国大会への出場決定です!」

高らかに、司会者の声が響いて、私たちは正気に戻ります。


山野先生の「ブロック大会は踏み台」みたいなイメージコントロールから、開放されてしまいました。


「うそ・・・!私たち全国出れるの?」

私はあまりにすごい事実に驚きます。ほんのちょっと前まで、こんな大会、全国大会の練習みたいなものだと軽くみてたにも関わらず。


「おお、やったな、小出!全国だ!!」

板谷君が拳を突き上げ、喜びを爆発させました。


「う、うそみたいっ!やったー!!」

私は歓びで、隣にいた板谷君に抱き着いてしまいます。

大きくて、たくましい板谷君、うわー、ずっと抱き着いていたいと思っちゃいました。

私をはじめ、みんなの演技のランクアップによって、勝ち抜いたのは間違いないと思いますけど、

やはり板谷君が主役だったからの桃花高校!

板谷君すごい!!ふふふ、大好き!!


でも、私は板谷君によって、引きはがされます。


「おい、ちょっと・・・いつまで抱き着いているんだ!興奮しすぎだぞ。

変に思われるだろ?」


「あっ!」

横で、尾崎君や他の部活の仲間が苦笑しています。


尾崎君が「小出、板谷と結婚したいのか?」なんてからかってきます。


そういえば、私は女の子のカッコしてたんだ。男女が抱き合っているみたいで、周りの人から変に思われる。ここでは多くの人が私を男性だって知ってるんだから気をつけないと。しまった!


「ご、ごめん、板谷君。」

私はバツが悪そうに、何もなかったような顔に戻ります。


そのあとは、みんなの歓びの声が交錯します。


「ありがとう、1年生のみんな!俺たち2年生は春の新歓公演で全員引退するつもりだったけど、これで、夏までやる決心がついた。まだまだ演技するぞ。

全国大会、優勝しようぜ。」と2年生。


「おお、よくやったな!受験勉強をちょっとだけ休んで、応援に来たかいがあった。

全国大会行くのってかなり久しぶりだぞ。

こりゃ来年、応援にいかなきゃな。

全国大会もがんばれよ!」と3年生。


「すごいよ!すごい!

男子校の演技、すごかった。主役から脇役まで、みんなすごいエネルギーだった。

おめでとう!」と女子校の部長から引退した荒木さん。


「ううっ、よくやったね葵、私も嬉しいっ。私より遅く演劇始めたのにすごい演技だよ。

なんか、嬉しくて泣いちゃう。」

なんと、幼馴染みの由奈が私に抱き着いてきました。

由奈は私より胸が大きいから、変な気分です。

見た目は女子高生同士の抱擁だから、いいかな?

これも、知っている人がみたら、男女の抱擁だけど・・・

でも、私も女性ホルモンで体は女の子っぽくなってるからいいよね?


もう、祝福と喜びの声で、私たちの高校の席周辺は大騒ぎです。

盆と正月が一緒にやってきたという表現が似合いそう。

私は興奮が収まるまで、かなりの時間を要しました。


ううっ、演劇部にはいってよかった。

女形になってよかった。

私は歓びをかみしめました。


そして・・・長いセレモニーが終わり、ブロック大会は終了します。


会場を出ようとしたとき、一人の女子高生が私に声をかけてきました。


「完敗だよ・・・悔しいっ。

でも、負けは負けだよね。

おめでとう!

全国で絶対優勝してね!」


私、泉蘭高校の主演女優の神谷明里かみやあかりさんです。


「正直言って、ここまで、桃花が演技を成長させるなんて思ってなかった・・・

やっぱり、成長って大事ね・・・

私も、絶対成長する・・・」


彼女は私に手を伸ばしてきた。


私はその手を握る。堅い握手・・・


「友達になって欲しい・・・

女優のライバルとして友達になってほしい・・・

来年、負けないから・・・」


「もちろん!

私も負けない!」


私たちは連絡先を交換した。

来週は男子校・女子校の合同クリスマスパーティのお話。

10代の男子と女子が集まって、パーティなんて、楽しそう!

恋が始まるかな?

お楽しみに。

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