83 文化祭に始まった恋
今回はクラスメイトの恋のお話。こういうじれったい奥手の男の子の恋って大好物です!
二人の男の子が恋した相手、桑島純華と北山文乃については第59話「2回目のホルモン注射」、第60話「夏休み終了直前に恋バナ?そしてカミングアウト」、第71話「男子校文化祭」で登場していますので、参照してくださいね。
「あのさ、小出、文化祭の時のこと覚えてるよな?」
葵です。私がクラスメイトにカミングアウトした翌日のことでした。
クラスメイトの二人の男子が私のところに、真面目な顔をして、話しかけてきました。
「うん。あの時はありがとう。助かった。急にお願いしたのに、付き合ってもらって感謝してる。」
「いや、あの時は俺たちもうれしかったよ。
クラスの出し物しかやらない俺たちだったけど、女の子の案内が出来て、すごく楽しい文化祭になった。」
「うん、すごくラッキーだった。」
二人は、佐藤友樹と、山中健太です。
まあまあイケメンで、性格も優しいけど、押しが弱そうなおとなしい二人。
当然、彼女なんかいない。
だから、文化祭の時に、仲良くしてる女子校の生徒、純華と文乃の案内役を頼んだんだ。
だって、お調子者だったりすると、すぐ二人を口説きそうで、私が後で困ることになりそうだから。
そうですね。
二人のキャラをもうちょっと細かく説明しましょう。
佐藤君は、長身。板谷君よりちょっと低いくらい。細身でスタイルがかっこいい。
顔は普通かな?でも、中の上って感じ。
バスケット部で、運動神経はそれなりにあります。
でも、優しいというか気の弱いタイプで、板谷君みたいに強烈な意思を示すタイプじゃない。
バスケの時は気が強くなるみたいだけど、バスケ限定の気の強さみたい。
バスケは小学校からやっていてかなり自信があるから、他のこととは違うって話しているのを聴いたことがあります。
そうですね、バスケ以外はいい人っていうのを絵に描いた感じ。
山中君はけっこう顔が整っているけど、やや背が低い。私みたいにちっちゃくはないけど、身長168くらいかな?イケメンというのには、ちょっと物足りない身長かな?
男性同士ではけっこうおしゃべりだけど、女子を目の前にすると、全く話せなくなるって噂。
スポーツは得意で、剣道の有段者みたい。
佐藤君と同じで試合の時は火花が散る感じの気合を見せるっていう噂だけど信じられない。
「それでさ、小出って、桑島さん、北山さんと時々連絡とってるの?」
佐藤君が質問してきました。
「うん、二人とはSNSで時々連絡とってるよ。何かイベントがあったり、面白い事件があったりすると、情報交換して盛り上がってる。」
次に、山中君からの質問です。
「あの二人って、あの、彼氏とかいるのかな?付き合っている男子っているのかな?小出、知ってる?」
「うーん、二人とも彼氏ができたって話は聞いていないよ。
夏休みの時はいないって言ってたけど、あれから、4カ月くらいたってるからねー。
どうだか。」
「そっかー。」
「二人とも可愛いから、彼氏できてるかもなー。」
佐藤君も、山中君も途端に元気がなくなります。
きわめてネガティブな二人です。
ははーん、文化祭の時に、純華と文乃に惚れたな!鈍い私でも、勘が働きます。
「でもね、二人は彼氏ができたら、私に教えてくれるって言ってたんだ。連絡がないってことは、まだできてないってことだよ。」
「そっか、じゃあ可能性はあるんだ。」
「うん、確かめてみないとわからない。」
佐藤君が改まった顔で、私にお願いをしてきました。
「あのさ、桑島さんと北山さんに付き合っている男子がいるか確認してほしいんだけど、だめかなあ?」
山中君も、
「それで、もし付き合っている男子がいなかったら、俺たちとまた会って、その、・・・4人で一緒に遊びに行ってもらえないか聴いてもらえないかな?例えば、遊園地とかさ?」
「ふーん、とりあえず、グループ交際をしたいってこと?」
「いや、まずはまた会えたらいいんだ。」
「そうそう、気楽に会える友達になれたら満足かも。」
相変わらず、ヘタレだなあ、自分たちでグイグイ行けばいいじゃないっ!って私は心の中で思います。
まずは、状況をよく聴かなきゃ。
「あのさ、佐藤君と山中君は、誰が好きなの?協力するけど、誰が誰を好きか知らないと応援できないよ。」
佐藤君は、「俺は、実は桑島さんが好きになっちゃった。背が俺よりもかなり低いけど、元気いっぱいで
俺も元気になれそうな気がするんだ。」と告白。
ふふ、意外にも簡単に告白してくれました。うん、素直でよろしい。
それにつられて山中君も、「俺は、北山さん。すらっとしてかっこいいし、あのポニーテールがすごく色っぽくて、憧れる。」と告白。
「おおっ、よく告白してくれました。
じゃあ、応援します。でも、相手の都合があるからね。
彼氏がいなくても、会うのは嫌だって言われたら、それでおしまいだから。
その覚悟はできてる?
そもそも、文化祭の時に、連絡先交換しなかったの?
チャンスだったじゃない。」
「いや、女子に飢えてるみたいで、とても聴けなかった。」
「そうそう、軽いと思われて、軽蔑されそうで。
もし連絡先を知りたいと思ったら小出に頼めばいいと思ったんだ。」
「でも、2カ月以上たってるよ。
何を今更って変に思われるかも。」
「それを言われると、辛いんだけど、俺たちも自分たちの気持ちに整理がつかなかったんだ。
たった1回会っただけなのに、好きになっていいのか?相手の迷惑になるんじゃないか?
って色々考えてさ。」
「そうなんだ。俺たち、ふだん女の子との接点がないから、おじけづいちゃってさ。
でも、昨日、小出が性転換というものすごいことにチャレンジする話をして、その勇気に刺激受けちゃったんだよ。
何もしないで、ダメかもしれないってあきらめるくらいなら、ちゃんと言葉で伝えて、ダメならそれですっきりしようって思ったんだ。」
「うん、うじうじ考えてるとあっという間に高校生活終わっちゃいそうだし。」
「そっか、
うーん、青春だなあ。
ちょっとキュンとくるね。
わかった。
二人に連絡とってみる。まずは、彼氏がいるか確認ね。
それで、いなければ、どこかで4人で会えるように誘導してみる。
そのうえで、グループ交際を申し込んでみたら?
とりあえず1回遊びに行ってくださいっていうノリはだめ。曖昧になるし、2回目以降ダメかもしれないかから。嫌でも一回くらいはいいかなって思わせちゃうから。
最初から交際を申し込もうよ。」
「そうだな。わかった。」
「頼む、段取りをよろしく。」
何か私は楽しくなってきました。彼氏彼女がいない男女を引き合わせるなんて、昔、存在したというおせっかいなお見合いおばちゃんみたい。ワクワクしてきました。
他人事だもんね。
すぐ近くにいた私の親友たち、板谷君、尾崎君、菅原君の3人がニヤニヤしながら、耳をダンボにして聴いています。
さて、どうなるやら。
このクラスメイトの恋のエピソードについて、別視点を書くことにしました。
「彼氏が欲しい!~男子校に姫がいる?アナザーサイド」というお話を本日アップしています。
女子校の女の子、桑島純華の視点からのお話です。
どうしても彼氏が欲しい彼女の、乙女心を少し詳しく書くことにしました。
ぜひ読んでくださいね!
本編と合わせて読むと面白いと思います。
男性側視点と女性側視点の違いというか、すれ違いが面白いかな?




