82 クラスメイトにカミングアウト
葵です。
ついに12月がやってきました。
今月は演劇部の地方ブロック大会が開催されます。
来年の全国大会出場をかけて、強豪校と勝負する月です。
山野先生の指導は熱を帯びます。
私たち部員は県大会までの演劇からステップアップさせるために、新しいセリフや新しい演技を取り組みました。
今までの演技じゃ勝てないという想いから必死になったのです。
そして、そんな時に私は、
ついに・・・
クラスメイトにカミングアウトすることにしました。
顔や体つきの変化が、ごまかしのきかないところまできたんです。
クラス担任でもある山野先生も
「そろそろいいかもね。体つきが女っぽくなってきたし、顔も可愛くなってきたし。
うん、タイミングね。」
とアドバイスしてくれました。
で、ある朝、先生がクラスのメンバーがそろったところで、私に声を掛けます。
「みんな、実は小出から発表がある。
みんながわかっている通り、小出は女形、すなわち『姫』として、演劇部の女役に集中するために、24時間体制で女装をしているけど、ちょっと将来にかかわることで、変化が生じてきている。本人からの説明を聴いてもらいたい。」
いつもながら、男っぽい言い回しです。
山野先生の男っぽい女性キャラはホント不思議です。
元男性って感じが皆無。
あくまで女性っぽいのに男っぽくふるまっているという感じ。
私はどんなキャラになっていくんだろう?
私は、みんなの前に出ていき、説明を開始しました。
「えーっと、すみません、突然の発表で。
実は今回、ここに立たせてもらって、みんなに発表することになったのは、
ある変化について説明せざるを得ない時期になったからです。
もしかしたら、何となく、みんなも変化を感じているかもしれません。
実は、私、夏休みから、女性ホルモンを体に入れています。つまり性同一性障害の
治療を始めています。身体の女性化が体におこっているんです。」
「そうだったのかー。」
「ニューハーフ?」
「そういえば、最近、顔つきとか変わったよなー。」
「というと、その胸は本物?」
「ただの女形じゃなかったんだ。女性になりたい男だったのか?」
「というと、恋愛対象は男?」
教室中で、いろんな声が出てきます。
「そうですね。わかりやすく言えば、ニューハーフと同じで、医療技術で、身体の女性化を目指しているんです。実は、女形になって、女性を演じているうちに、自分の本来の性指向が明らかになったんです。
自分でも、信じられないくらい短期間で、女性化することを決心しました。
みんなにはわかりにくいと思うけど・・・。
それで・・・
私は、24時間、女装しているし、みんなも女性として扱ってくれてるから、今までの学校生活にそれほど変化はないと思います。
ただ、普通の『姫』は引退すると、男性の姿に戻って学校生活を送るけど、私は卒業まで、女装して過ごします。
体が女性化しているのに、男性姿に戻るわけにはいきません。学校側には許可を得ています。」
「て、いうことは性転換手術とかするの?」
一人の生徒から質問がありました。
「うん、します。
予定としては、高校3年生の夏休みです。
男性性器にメスを入れ、女性性器に作り変えます。」
その瞬間、クラスの男子はほぼ全員股間を抑えたくなるような気持ちになったようです。
みんなしかめっ面しましたから。
「戸籍については、20才にならないと変更できないので、高校在学中は男性の戸籍です。
でも、身体は女性になっちゃいます。」
そこまで話して、山野先生がフォローしてくれました。
「みんな、というわけだ。小出の体は女性化しているので、今まで以上に、小出の体に気安く触らないように。とにかく、小出の体はみんなと違った状況にある。治療過程で、いろんな副作用も考えられる。そのへんを思いやってほしい。よろしく。」
正式な発表はそれで終わりました。
一安心というところでしたが、クラスの仲間はいろいろ気になったようです。
休み時間になると、私は次々と性転換の道筋や今後の人生について質問を受けます。
想定内でしたので、用意していた回答を即座にしましたが、恋愛系の話になると、歯切れが悪くなります。
「女になりたいっていうことは、男が好きなんだろ?
好きな男っているのか?
たとえば、クラスの中とか、演劇部の中とか?」
「恋愛については、何か自分でもわからない。
治療を始めたって言ったって、私の股間には、みんなと同じものがぶら下がっているから、
まだ体は男っていう意識が強いんだ。
性転換手術を終えてからでないと、たぶん、男子を好きになるという気持ちにゴーサインは出せないと思う。」
「ふーん、そうなのか?男が好きだから、女になりたいっていう話をよく聞くけど、そうじゃないの?」
「そのタイプが多いと思われてるのはわかるよ。
でも私はそのタイプじゃない。
そういえば、女になりたいけど、女が好きっていう人もいるらしいよ。
私は女性になったら男性を好きになるつもりだからそのタイプでもない。」
「こりゃ、複雑だな?」
みんなからの質問は尽きません。クラスメイトが性別の移行を図るというのはけっこう刺激的な事件だったようです。
もちろん、板谷君、尾崎君にも質問がありました。
「二人は知ってたんだろ?どう思ってるんだ?」
みたいなことを聴かれてます。
板谷君は
「まあ、男だろうが、女だろうが、演劇部の部活仲間だ。関係は変わんないよ。」
なんて、優等生的な回答をしていました。
そこは、ドキドキしてるとか、可愛くなって困ってるとか言ってほしいなってちょっと
思うんだけど・・・。
そしたら、胸がキュンとするのに。
クラスメイトの興味は性転換手術のやり方にも興味が向かいます。
「手術には反転法と大腸法があって、いまはタイでやるのが一般的で・・・」
みたいな話に興味をもつんですが、
性器を作る具体的な話になると、やはり、ちょっとショックを受けます。
「なるほど、あそこの感覚を活かすんだな。男の性器がなくなっちゃうというよりは、
神経とか皮膚とか再利用して、生まれ変わらせるって感覚か?
すげえな。
セックスとかできるのか?快感てあるのか?」
なんて、エッチな話にもなっていきます。
まあ、男の子ですからね。仕方ありません。
「セックスは可能みたい。快感もあるって話聴くけど。
それ以上はわからないよ。」
本当は、膣内拡張のための作業である「ダイレーション」についても知識があったけど、
そこまでは説明しません。
まあ、性転換についての私への質問は年末まで続きます。
やっぱりみんな興味津々です。




