79 由奈と菅原君にカミングアウト
葵です。
柏原由奈は幼馴染でかつご近所さんです。
そして・・・毎朝、学校の最寄りの駅まで一緒に通学している仲です。
それなのに、私が性別移行の治療をしていることを知りません。
もう11月だし、教えないと!
体つきや肌質変わってるし、そろそろヤバい。
通学時、距離が近いんだから、変に思われないうちに教えないと!
そうだ!
由奈の彼氏の菅原君にも教えなきゃ!
板谷君、尾崎君とも仲いいんだから、他のクラスメイトより早めに教えるのが当然です。
そう思った私は、「ちょっと打ち明けたいことがあるの。」と由奈と菅原君のカップルに話しかけ、二人を自宅に招きました。
外で話すと誰が聴いているかわからないので、なるべく密室で話したかったんです。
家族がいない午後、ケーキと紅茶を用意して、二人を迎え入れます。
「葵、いったい、私たち二人に話したいことがあるって何なの?」
「小出の打ち明け話か?板谷と尾崎は知っているのか?」
「順々に話すよ。まずはケーキと紅茶を飲んで。」
「うん。」
「いただきます。」
一息入れたところで、本題にはいる。
「実はね、私、今、女形役者っていうことで、24時間女装しているけど、
あの、そのー・・・
実はね・・・性転換も目指してるの。
つまりね、肉体を改造して、女性になろうと考えてるんだ。
ホルモン治療も始めてるの。」
「やっぱり、そうか!由奈、当たっただろう?」
「菅原君の予想、まさかだと思ったけど、そうなの?信じられない!!」
「え、わかってたの?」
「いやあ、由奈が最近、小出の体型や肌の感じが変わってきてるっていうから、
ふと、思いだしたんだ。
ニューハーフの人がホルモン治療すると、体型や肌が変わるっていう話をテレビで聴いたかネットで読んだかした記憶があったんだよ。
それで、由奈に話したら、まさか、いくら何でもそんなことしないよ!葵は中学まで普通の男の子だったんだよ!って信じなかったんだ。」
「そっか、さすが菅原君だね。知識があるよ。
由奈もやっぱり体の変化に気づいたんだね。」
「うーん、何か体つきや肌がいままでと違うような気がしたんだ。
まさか、ホルモン治療しているとは思わなかったけどね。
女の子の役に入り込んで、それが、肌とか体型に影響を与えているのかと思ってた。
ちょと待って!えーっ、ということは、あそこも手術するの?
オチンチンとっちゃうの?」
由奈は大声を出して、驚きます。やっぱり自宅でのカミングアウトにしてよかった。
由奈はちょっと会話がオバサンっぽいところがあるんです。
「ぶっ!」菅原君が思わず吹き出す!
「由奈、女の子がそんなに直接的に言うもんじゃないよ。
ごめん、小出、俺も吹き出しちゃった。許してくれ。」
「全然、気にしてないよ。
由奈は幼馴染みで、私が男の子だったのを、幼稚園の頃から知ってるから、信じられないと思う。
それこそ、幼い頃にはオチンチン見られてるしね。
私、中学まで、女の子になりたいって言ったことないし・・・。
由奈にも、他の友達にも。
・・・
決心したのは、高校に入ってからなんだ。
でもね、今、思い返すと、ずーっと女性になりたいって何となく思ってたことは事実なんだ。
精神科に提出した私の自分史がここにあるから、二人で読んでみて。」
あらかじめ用意した私の自分史のコピーを私は二人に一枚づつ手渡します。
自分史に目を通した二人は、納得したような顔になりました。
由奈は
「この自分史はよくできてるね。うーん、複雑な心の葛藤がよくわかるよ。
なるほどね、女の子になりたいって気持ちを押し殺して、男らしくしようとして、それを実践してたけど、少しづつ本当の気持ちが出てきて、女形になったとたん本来の気持ちに素直になっちゃったって感じか?」
とまとめてくれた。
菅原君も
「やっぱり、女性としての素質、才能もあるよな。
小出は女の子の容姿だからな。
男で生きるより、女性になった方が、絶対自然な感じだ。
女性になりたいっていう気持ちが強くても、いかにも男性的な体型や顔じゃ、ちょっと無理がある。」
「ありがとう。理解してくれて。
でも、私の人生の荒波はこれからいっぱい押し寄せてくると思うから、油断できないよ。
高校在学中に性転換手術して、大学には女性として入学して、そして20才になったら戸籍の変更をして、一つの目標を達成できるけど、それからが大変。女性としての就職、男性との結婚、健康、老後。いろいろ悩むべき問題がいっぱいあるの。」
「そっか、性転換って言ったって、外面的に女性になるだけで、子供を産めないんだものね。
恋愛、結婚からして大変そう。結婚となれば、相手の家族の反対だって考えられる。
就職も、女性としてするんだろうけど、社会的に女性として過ごせるのか?やっていけるのか?って、ちょっと考えちゃう。女子高で、女の子と一緒に授業を受けるのとは違うだろうね。」
「さすが、由奈。
女性の社会って、男性社会とは違うから、本物の女性とは違う私が、上手くなじめるかは本当にわからないんだ。
女性は感情が優先するけど、男性は理屈が優先するとか、いろいろあるよ。」
菅原君からは、近い将来のことを聴かれます。
「大学とか、就職の時とかは、カミングアウトするの?MtF(男性から女性への性移行者)って、明かして、入っていくのかな?」
「それはしない。最近、LGBTへの差別撤廃とか、権利の主張とか叫ばれたりしてるけど、私はそういうのを自分で訴えるつもりはないんだ。自分らしく生きるために、自分の正体を明かして生活をするのが一番って言う人もいるけど、私は嫌なの。生まれた時からの普通の女性として、世間にMtFと気づかれないようにひっそりと生きていきたい。まあ、女形と名乗っている高校時代はしょうがないけど。
だから、大学入学の時は、女性としての入学を認めてもらい、就職の時も女性としての就職を目指すつもり。
邪道と言われても、それが私の目指す道。」
「じゃあ、秘密を抱えて生きていくんだね。
大変だ。
バレるかもしれないよ。
バレたらどうするの?」
菅原君はリスク管理を気にします。
「ばれても、性転換手術と戸籍の変更後なら、堂々とふるまうつもり。
あくまで、積極的にはばらさないってこと。」
「そうか、ばれて問題になるっていうのは、やはり、身体が女性になってない場合や戸籍が女性になっていない場合だよね。
例えば、見かけ女性に見えても、オチンチンがついていたり、戸籍が男性だったら、公衆浴場の女湯やいろいろな施設の女子更衣室に入ったら問題だけど、そうでなければ問題は発生しないもんね。」
さすが女性の由奈は女性目線で、リスクを考えてくれました。
エピソードがなかなか思い浮かばなくて苦しんでたんですが、気分転換で紅葉を見に行ったら、けっこう思いつきました。登場人物も増えそうです。
では、次の土曜日に続きを読んでくださいね。




