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76 演劇部の仲間にカミングアウト

葵です。


11月初め・・・

県大会に備えてのミーティングが終わった後、私、小出葵は演劇部全員の前で、カミングアウトしました。


「突然ですが、私から発表があります。

私事わたくしごとで申し訳ありません

みなさんの中には、何となく気づいていた方もいらっしゃったかもしれません。

私、男子なのに女子のかっこをする女形をやっていますが、それだけじゃないんです。

実は、あの、私、性転換を目指しています。

その、女性の体になろうとしています。

わかりやすく言うと、ニューハーフの道を歩み始めたという感じでしょうか?

専門用語を言うなら、GID、性同一性障害、性別違和ということになります。

LGBTという言葉でも、最近は表現されてると思います。

具体的には、夏休みにホルモン治療を開始しました。

いわゆる女性ホルモンを体に入れています。

もう通常の男性には戻れない状況になってしまいました。

今後は、睾丸摘出をして、女性化を進め、高校3年の夏休みには、性転換手術をしようと思っています。

だから、演劇部は3年生になったあとの新入生歓迎会のお芝居を最後に引退しようと考えています。

治療過程で、皆様にご迷惑をかけないようにしますので、よろしくお願いします。

貴重なお時間をいただいて申し訳ありません。」


あらかじめ、この発表をするために、話しをしておいた早坂部長も追加説明がありました。


「以上が、小出からの報告だ。

性転換するっていっても、まあ、24時間女装している小出の場合はそんなに違和感ないと思う。

元々、トイレや更衣室も別にしていたし、日常生活、行動において影響はない。

みんなとの関わり合いも影響ないはずだ。

ただ、今後体型の変化が顕著になってくるから、本人は説明しなければいけないと思ったそうだ。

玉をとったり、性転換手術をしたりという大きな節目も迎える。

メンタル面の不安要素もあるから、みんなも理解してほしい。

暖かい目で見てほしい。」


みなさん、じっと聴いてくれます。


山野先生からも一言ありました。


「まあ、今までどおり、女の子扱いをしてあげてほしい。

ホルモン投与の影響で体調・精神面が不安定になる可能性があるかもしれない。

そこんところよろしくね。

小出君が本格的に女の子をめざすということにみんなは違和感ないでしょ?」


山野先生はあえて、自分も性転換したとは言いません。

とりあえず、在校生にはカミングアウトしないみたいです。


話を聴いた演劇部の先輩、同期のみなさんはたいして混乱はせず、冷静に受け止めてくれました。


「やっぱりそうか!そんな雰囲気あった。」

「うん、何となくわかる。」

「女性っぽいもんなー。演技とは関係なく、女の子っぽいよ。」と、肯定してくれます。


先輩、同期からは、いくつか質問がありましたが、治療に伴う副作用とか、

睾丸摘出手術の内容などについての質問で、そのあたりは詳しい山野先生が答えてました。


山野先生はいかにも自分で勉強して最近知ったみたいな顔で説明します。

うーん、役者だ。すごい!


部長同様に、事前に説明していた尾崎君からも質問はありません。


事前に説明したとき、尾崎君は

「やっぱりな、そうだと思ってたんだ。

どんどん、女の子っぽくなっていくもんな。

板谷もそう思ってただろう?」

一緒に説明を受けた板谷君に同意を促してました。

板谷君は「まあ、何となくな。」とさりげなく答えます。

(ほんとは、板谷君だけ先にカミングアウトしていたんですが、それは二人だけの

秘密にしました。

一応、尾崎君、板谷君に同時説明という体をとりました。)


まあ、そんなわけで全員が私の性転換への道について知り、納得してくれました。

24時間女性で過ごすという男子校「姫制度」のおかげで、学校生活に影響がないことが大きいかな?


みんなの興味は引退したあとも女装するのか?性転換した後も男子校に残るのか?というところに集中します。

他の質問は山野先生が答えてくれましたが、その質問については私が答えました。


「本来なら、演劇部の姫は引退したら、髪を切って、男子の服装になって、男子生活に戻るのが通例です。でも、私の場合は、先ほど説明した事情があるために、学校側と交渉して、卒業まで、女性の姿でいいということになりました。

また、性転換手術したのに男子校にいるのかという疑問もありますが、戸籍を変えるのは20才になってからですので、そこも問題ありません。卒業までこの男子校にいます。」


みんな納得してました。


あと、先生からは冗談のように、

「みんな、小出君の胸のふくらみは今後は本物だから、ふざけて触っちゃだめよ。」

なんて、話しがありました。


まあ、今までもそんな部員はいませんでしたが、念のためでしょう。


同期の一人がつぶやきます。


「すると、小出が3年になるときは、新入生から新しい「姫」を選ばなければいけないってことだ。」


「そうだな。でも、小出は女装をやめないというか、女性として学校にいるから、女装男子が学校に2人といるという現象になる。未だかってないんじゃないか?」


「いや、過去にも卒業まで女性の姿でいた姫がいるらしいぞ。

聴いたことがある。

誰だかわからないけど。」


山野先生は全然知らんぷりです。やっぱり役者です。


「大学は女子として入学することになりそうだな?でも、戸籍が男性だから微妙か?」


副部長の小森さんがちょっと心配してくれます。


「最近はLGBTに配慮してくれる大学もあるんです。

そうした大学があることを調査済みです。

たぶん、女子として入学は可能です。

できれば、演劇部で良好な成績を残して、推薦入試で、大学の受験を突破したいと思ってます。」


「そっか!なら、全国大会をめざさなきゃな。全国大会に出場すれば、大きな勲章になる。

当校は残念なことに最近、県大会やブロック大会止まりだ。

ぜひ、今年は全国大会を目指そう。

小出の場合3年の春に引退だから、全国大会に出るんだったら、今年がんばらないと。」


説明しましょう。高校の演劇部の全国大会は翌年にあるんです。

秋深く、地方ブロック大会があるんですが、その先の全国大会は翌年の夏なんです。

つまり学年をまたぐんですね。

だから、3年生の演劇部員がブロック大会を勝ち抜いて、全国大会出場権を得ても、全国大会には出れないという不可思議な現象が発生します。

そのような状況があるから、3年生は早めに引退するんですね。

私も、全国大会出るなら、今年がチャンスなんです。

高校生の演劇部の全国大会って不思議。

2年にわたってするんだから。

3年生はブロック大会を勝ち上がっても全国大会に出れなかったりします。

逆に新入生は予選を経験せず全国大会に出れたりします。

調べて驚きました。

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