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72 文化祭公演

板谷翔です。


ついに文化祭公演が終わった。


いやー、緊張した。体育館の観客席、けっこう埋まってたし、OBもいっぱい来てたし、心臓が止まりそうになった。


今回の劇は、悩みを抱えた女子高生が、風変わりな男子高校生に会って、人生観を変えていくというようなストーリーで、主役は一応小出なんだけど、実質キーマンは男子高校生の俺。

つまり、俺が本当の主役。

俺が、生活や人生に疲れた色んな人をあっという間に元気づけていくという不思議な能力を持っていて、ちょっとエキセントリックな演技をしなきゃいけないから、すっごく大変だった。


観客の前でやるのは初めてだし、今後の大会に向けての試験的な演技でもあるから、手探り状態でもあったし・・・


結果は・・・まあまあかな?

普段、常識人の俺が、とんでもない声を出したり、変な演説をしたり、突然走り出したりと、まさに演劇の臨場感を意識した行動ができた。

演技の質はともかく、舞台を非日常的な空間にして、観客をその空間に引き込むことはできたとは思う。


先輩は55点と言ってくれた。

大会前の舞台としてはいいところだという評価らしい。

0点とかじゃないから、自信を持とう。


小出も、地味だけど、情けない女子高生をリアルに演じていた。なかなかの演技だったかな?

姫としては華がなかったような気はするけど、今回のストーリーではしかたがない。

いつか、あいつには華やかな女優をやってほしいもんだ。


公演がおわり、メイクをとって、後片付けをしてると、小出が声をかけてきた。


「板谷君、お疲れ様。なかなか良かったと思うよ。声もすごく通ってた。」


「おお、ありがとう。

そういえば、着替えたんだな。劇の中のセーラー服より、いつものブレザーの方が落ち着くか?」


「そうだね。やっぱ落ち着く。

セーラー服を着てると、いつまでも芝居をやってる気分になっちゃうから。

あ、板谷君はセーラー服の私と、ブレザーの私とどっちが可愛いと思う?」


「ええ?うーん、どっちもいいんじゃない?それぞれいいところがあると思うよ。」


「お、お二人さん、公演終わって、早速イチャイチャしてるな。

もう、交際発表しちゃったらいいんじゃないか?

女子校の新聞部が来てるから、独占スクープさせてやろうか?」


「尾崎、へんなこと言うなよ。誤解されたらどうするんだ?」


「尾崎君、板谷君は女子校の生徒にモテるチャンスなんだから、嘘の情報流しちゃだめだよ。」



尾崎は、俺と小出が仲がいいのを、よくからかう。

俺は小出との関係は男同志の感覚だと思ってるから、恋愛関係のように言われるのはちょっとな。

まあ、そんなには気にしていないけど。


そこで、登場したのは藤原さんだ。


「板谷君が女子校の生徒にモテるのは無理だと思う。

だって、葵との噂、けっこう広がってるもん。

けっこう盛り上がってるよ。

女の子って、男子同士の恋愛話って、すごく好物だから。」


「板谷、こりゃ、あきらめるしかないな。

BL街道まっしぐらだぞ。」


「別にいいよ。まあ、俺も、女子校の生徒にモテるつもりないから。

ただし、俺と小出はふつうの友達だからな。

そこんとこよろしく。藤原さん。」


「もう、板谷君、けっこう冷静だなあ。

女子校の腐女子の楽しみをもっと盛り上げてよ。」


「そうは行かないよ。藤原さんのレズの話でも作ったら、男子校のオタクが盛り上がるかもしれない。

そっちを盛り上げようか?」


「だめ、それはやめて。私はノーマルだから。

変な噂たったら困る。」


藤原さんもレズの噂は嫌みたいだ。

よし、弱みを握った。

今後、からかわれたら、これで切り替えそう。


それにしても、小出の扱いにはこれから困りそうだな。

容姿は変わってくるだろうし、全校生徒にカミングアウトすることになるだろうし。

俺としても、対応は難しいかも。


でも、キレイになっていく小出の変化も楽しみではある。

どこまで、色っぽくなるのかな?




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


葵です。


私と、板谷君の関係について、女子校では噂になっています。

男子校では全然、噂にはならないけど。

からかうのは尾崎君くらいです。

男子校では、噂にならないのは、男子校の生徒はBLという関係性が今一つ馴染みがないからかも。


男子校の生徒の中には、ゲイやGIDがいるとは思いますが、意外に話題に上りません。

きっと存在しているとは思いますが、意外にカミングアウトは聴きません。

もし、ゲイカップルがいて、あの二人は怪しいと思ったとしても、決して、口には出さないだろうし、

あくまで、仲のいい二人という捉え方をすると思います。

男子高校生の社会なんてそんなもんです。

女子校とは同性愛に対しての敏感度が違うと感じます。


だから、私が女性への性転換を目指していると学校で発表したら、それはそれで衝撃的な事件になるかもです。


それにしても、板谷君と私の噂があるのはちょっと嬉しい。

板谷君には気の毒だけど。

板谷君が女子校の生徒にモテて、告白とかあったら、ちょっといやだもん。


別に板谷君と恋愛関係になりたいとは思ってないけど、でも、本物の女の子と交際始めたら、

がっかりしちゃいそう。

私のわがままだけど。


ホルモン注射して、1カ月半以上たって、胸の痛みが本格化してきました。たぶん、おっぱいの成長が始まったんです。早く胸を大きくして、女性らしくなった姿を板谷君に見てほしいなあなんて思うこの頃。

板谷君は私の女性化を知っちゃったけど、どう考えてるんだろう?

女性らしくなったら、エッチな気分になるのかな?

それとも、あくまで、男友達として接するのかな?

そんなのわかんないか?

私としては、完全に女性の姿になるまでは、贅沢なことを考えちゃだめよね。


そこに、山野先生がやってきました。


「きょうは、みんなお疲れ様。この台本での初舞台としてはまあまあだと思います。

でも、いろんな修正点も見つかりました。

大会で審査員に突っ込まれるところもわかりました。大会は一カ月後ですから、気を抜いちゃだめよ。

全国大会めざしてがんばりましょう。」


うわっ、先生、全国だなんて、すごいこと言うなあ。

これからの一カ月、厳しい練習がありそう!





土日更新ですが、今度の祝日10月22日も更新しますのでよろしくお願いします。

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