71 男子校文化祭
葵です。
ついに男子校の文化祭の日、9月28日がやってきました。
緊張はあるけど、すっごく楽しみ!
何せ、女性ホルモンを体に入れるようになってからの初めての舞台。
女性らしさをできるだけ出したい感じがします。
あと「姫」として舞台に出るから、生徒の家族や、他校の生徒から「姫」としての能力?実力?を見られるだろうなあ~。
演劇部の「姫」制度を知らなければいいんだけど・・・
知っている人は知っているだろうし・・・
見られるポイントは二つ。
一つは女子に見える容姿か?ってこと。
もう一つは演技が上手か?ってこと。
うーん、怖いなあ。批判されるかもしれない。でも、やるべきことはやった。
とにかく、がんばろう!
ところで文化祭といえば、クラスの出し物が楽しみ!
私のクラスの出し物はアイスクリーム屋さんです!
女子校からのお客さんも来るので、やっぱりスイーツは外せないってことで、決めました。
私も甘いもの大好きだし、すっごく楽しみ!
あ、自分が食べるんじゃないんだけどね。
私は朝、オープンしたら、お店の前に立って呼び込みと演劇部公演のチラシ配りをやる予定。
男子校なのに女子の制服を着て接客するのですが、別に「姫」とわかるようにタスキとかしません。
ちょっとお客さんの反応を楽しむことにします。
女装した男子だってわかるかどうか確かめてみたくって。
他のクラス出し物はいろいろですね。
定番のお化け屋敷や、コントをやるクラスに加え、女装した生徒が店員をやる喫茶店をやるクラスがあります。
女装喫茶店は当然ウケ狙い。
コスプレをして、面白がってもらおうという趣旨です。
服装は女子高の制服ではなく、メイド姿。
女子校のメイド喫茶とイメージが被るんですが、中身は全然違います。
可愛い、キレイな女子高のメイド喫茶とちがって、笑いをとるのが目的。
けっこう体格のいい生徒にも女装させるので、見ててちょっと恥ずかしい感じがします。
まあ、女装して、きれいになる生徒もいるので、100%ギャグっていうわけでもありません。
キレイな女装も少しは楽しめます。
ところで、女装する生徒は数日前から、メイク方法を私に教わりに来ました。
私も忙しいんですが、いろいろ学校から特典を与えられている身ですから、冷たくはできません。
何とか時間を割いて、教えてあげます。
「おおっ、小出は教えるのうまいなあ。
俺も女装したら、そこそこきれいになるかな?」
私のクラスの連中も興味津々です。
「何か、メイクすると、違う自分になれるみたいだよ。クセになりそう!」
とメイク後にうっとりする生徒もいて、私も、自分を棚にあげて、
(女の子になりたいって思い始めちゃったらどうしよう?)なんて心配したりします。
さてさて、午前9時にアイスクリーム屋さん、オープンです。
私は呼び込みとチラシ配りです。
お客さんはすぐには来ないと思ってたら、女子校で同じクラスだった仲間が遊びにきてくれました。
いつでも元気な桑島純華と、私をよくからかうポニー・テールの北山文乃です。
二人には文化祭を案内する約束をしてたのですが、いっしょに回る時間がありません。
そこで、クラスの中で、まじめで、容姿もまともで、かつ彼女がいない二人の男の子を厳選して、案内役をお願いすることになりました。
純華も文乃も、最初がっかりしてましたけど、私が男の子二人を紹介すると、ちょっと嬉しそうな顔になりました。
男の子たちに聞こえないように私に耳打ちします。
「うん、なかなかいい線行ってる二人ね。」
「まあ、たまには男の子とお話するのもいいかもね。」
とまんざらでもありません。よかった。
「それにしても、葵って看板娘だよ!
うん、男子校の生徒に全然見えない。ふつうに女子高の生徒が応援に来てるって感じしかしない。」
「うん、女装には見えないね。普通に女の子。ノーメイクだから、素朴な高校生に見える。
そういえば、ちょっと肌の感じ変わった?」
「そう?そうかな?
よし、じゃ、本物の女の子のふりして、過ごしちゃおうかな?
まあ、わかる人にはわかると思うけど。」
実は私は、本物の女性に見えるかどうかについて、少し自信が出てきていました。
ホルモン投与をして、1カ月半以上たっています。
体型はほとんど変化していませんが、肌の感覚に変化を感じていました。
そのわずかな変化が自分を女と思わせる根拠として、強いものになっていました。
その後も、知っている人は除いて私を女装男子としてみるお客さんはいませんでした。
「あれっ、女子校の女の子が手伝ってるんだ?」
とか
「女子校から来てるの?男子校と女子校って仲いいんだ。」なんて、言われて、適当に相槌を打ってました。
そして、10時30分。
校門でチラシ配りを祐希と一緒にやります。
ここでも、「姫」「王子」のタスキなどはしません。
二人とも、来校者の反応を楽しむことにしたのです。
「俺、女子校から来てるってわかるかな?」
「うーん、微妙だよね。ウチの演劇部の売り物が「姫」だって知っている人は、気づくかも。
あ、こっちは「王子」だって推測できるもん。」
「演劇部には王子や姫がいるっていうこと知っている人、けっこういるもんね。
特にOB、OGは詳しいよね。」
予想は当たりました。
来場者で、20代後半のカップルが近づいてきて、声をかけてきました。
「お、演劇部だね。観ることにするよ。チラシもらおう。二人並んでるってことは、
姫と王子か。おお、今年の姫は可愛いな。これだけ本物の女性に見える姫は俺と同学年の桜井以来だ。
王子もイケメンじゃないか。やっぱり背が高いとかっこいいな。」
「えっ、姫?うわっ、可愛い。桜井君は美人って感じだったけど、今年の姫はアイドル系ね。
うん、高校時代を思い出した。王子もすらっとしてかっこいい。お似合いね。」
「ありがとうございます。演劇部の公演、よろしくお願いします!
桜井先輩は今、演劇部の顧問です。」
「そうなんだ?知らなかった。こりゃ、楽しみだな。うまく行けば、桜井にも会えるか?」
カップルがいなくなった後、祐希が私に質問してきます。
「桜井先輩って、誰?」
「うーん・・・
絶対誰にもしゃべらないでね。秘密なんだから。
実は山野先生・・・独身時代の苗字が桜井なんだ。」
「そうなの?!
・・・そうだったんだ!
そっか?じゃあ、葵も苗字変わるかもしれないね。結婚すればね。ふふふ。」
「祐希ったら・・・
私、まだまだ男性の体なんだから、そんなこと考えられないよ。」
「妄想するのは勝手でしょ。
あ、お客さんいっぱい来てる、チラシ配りがんばろうよ。
いっぱい、お客さん入れたいんでしょ?」
「そうだ、余裕ない!
あ、演劇部の公演、身に来てください!お願いします。」
私たち二人はチラシが無くなるまで、必死になって、来場者に声をかけていきます。
私は女子校からの応援と見られるのと、「姫」として見られるのと半々くらいでした。
祐希も男子校の男子として見られるのと、「王子」として見られるが半々くらいでしたでしょうか?
まあ、いずれにしろ、校門周辺で目立つことはできたようです。




