69 女子校の文化祭 続き
葵です。
菅原君が現れました。
「おお、みんな来てるな。
お疲れ様!
小出は完全に女子校の生徒と同化しちゃってるな。わかんないよ。
ふつうに、女子生徒だ。
知らない人はわからないだろうなー。すげえな!」
「ふふふ、ありがとう。
日頃の訓練の成果だよ。
ところで、菅原君、大変そうだね、生徒会の仕事。」
「ああ、けっこう女子校の生徒会長、人使いが荒い。他の人は優しいんだけど・・・
まあ、来週は手伝ってもらうから、しかたないんだけどな。
それにしても、女子校の演劇部の公演、楽しみだ。
女の子だけの演劇ってなかなか興味深い。」
「あれ?女の子は二次元しか興味なかったんじゃないか?
リアルの女子はオッケーになったのか?」
尾崎君が突っ込みます。
「演劇は別だ。
役者や裏方をやっている女子は好きだよ。
俺は演劇好きだからな。
さっき、女子校の生徒会の役員にたのんで、あらすじを教えてもらった。
何とアクション系で、殺陣があるみたいだ。
男子校の劇と対象的だな。」
板谷君がその話に乗ります。
「俺たちもさっき祐希から殺陣の話を聴いた。
どれだけ動きのある舞台になるかちょっとワクワクしてたところだ。
それにしても、演劇好きだとは知っていたけど、演劇に関わっている女子が
好きだとは初めて聴くな。」
「別に女子生徒に恋愛感情を持つっていう意味じゃないぞ。
演劇が好きだから、その関係者にも好意を持てるって意味だ。
そういう意味では、お前らも演劇やってるから、すごく話が合う。」
「なるほどな。演劇オタクってところか。
仲間意識の延長ってところかな。
じゃあ、そろそろ行くぞ。
いい席とろうぜ。」
「そうだな。俺は祐希の王子っぷりが楽しみだ。」
尾崎君はやっぱり祐希のことが気になることをアピールしてます。
あきらめていないみたい。
祐希可愛いからなあ。
そして、体育館で、定刻がやってきます。
女子演劇部の公演がスタートしました。
女の子だけの演劇部ですが、祐希以外にも男役の女子がいっぱいいました。
なんか、意外です。
男子演劇部は女役をするのは私だけなので、全然違います。
しかも、動きが激しい。
まさにアクション主体で、魅せるタイプの演劇でした。
男子の演劇部がちょっと考えさせるタイプの意味深の劇なので、被らないでよかったなとも思います。
ちょっと勧善懲悪的なストレートな劇で、深さはないのですが、爽快な活劇的雰囲気があり、
これはこれでありだなと思いました。
いつの間にかエンディングを迎え、私たちは拍手を送っていました。
「ねえ、菅原君、すぐ生徒会に戻る?」
「いや、まだ、お前らとだべっている時間あるぞ。
今の芝居について話しがしたいと思ってたところだ。」
「そうか。それなら、女子演劇部の1年生と会ってみないか?
葵につきあって、葵の友達とこの後合流することになってるんだ。藤原じゃないぞ。」
尾崎君が切り出しました。ナイスサポート。
板谷君もフォローします。
「柏原由奈さんっていうんだ。
俺たちは、演劇部の男女合同合宿で顔を合わせたりしてたから、顔見知りだ。
あ、朝、学校のある駅まで、葵と一緒に来てるから、菅原も会ってるはずだ。
中学の時から演劇部に所属しているから、演劇好きだぞ。
菅原とは話しが合うんじゃないか?」
「もしかして、いつも朝、葵と一緒に登校してくる女の子か?
今日、忍者の役をやってたよな。
けっこういい演技だった。
おお、話してみたいな。俺も会いにいく。」
作戦成功です。
自然な流れで由奈のところに連れていくことができます。
でも、告白っていう雰囲気じゃないかな?
よし、作戦変更しよう。
私は芝居を打つことにしました。
「ちょっと、みんなここで待っててくれる?
ちょっと女子演劇部に用事ができちゃった。」
「おお、わかった。」「うん、待ってる。」「いいぞ。」
私は、ちょっと離れたところで、由奈に電話します。
「あ、由奈?今、着替えているところなの?
作戦変更。
菅原君を誘うことは成功したよ。
でも、いきなりの告白はやめよう。
菅原君は由奈が演劇好きってところに食いついていて、話してみたいって言ってる。
今日は告白しないで、まずは、演劇の話で、仲良くなってみたら?
待ち合わせ場所は2年生の教室に設定されている休憩所にしよう。」
「えっ、告白やめちゃうの?!
うわーっ、それ、きついよっ!!
すごく緊張ためこんでたから。
うーっ、でも、まずはお話から始めた方がいいよね。
わかった。みんなに任せる。
着替え終わって、準備できたら、休憩所に行く。」
私は、尾崎君と、板谷君ににもスマホでメッセージを送ります。
(由奈と菅原君を二人きりにして、由奈が告白するっていうのはなしにした。
まずは、みんなで、楽しく演劇の話をしようよ。
その方が菅原君と由奈が仲良くなれる気がする。
場所も休憩所に変更するよ。)
すぐ、返事がありました。
「オッケー。」「了解。」
ちょっと時間をおいて、私は男性3名が待ってる場所に戻ります。
「じゃ、休憩所に行こう!」
笑顔でみんなに声をかけます。
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由奈です。
いきなり、告白の件がなくなりました。
安心したような、肩透かしに会ったような、変な気分です。
でも、まずは会話から始めようという葵の提案は正解です。
いきなり告白しても、相手は私のことを知らないわけだから、面食らうだけです。
私は、告白することにより、一つの目的を達することができるんですが、
相手は、どうしていいか困るでしょう。
その場で断るか、よくて、後日返事をするっていうパターンになるのが予想されます。
考えてみたら、私、告白を目的にしてました。
ホントの目的はお付き合いすることなのに。
冷静に考えれば、まずは友達にならないと。
今日は友達になれるチャンスです。
うん、友達にはなれそう!
なんか、ワクワクしてきました。
私、恋愛の順序を間違えていたんだ。
大体、菅原君、私の名前だって今日まで知らなかったはずだから、慌てちゃだめです。
そうだ。菅原君は演劇好きっていう話だった。
そして、私も、中学の時から演劇に夢中になっている演劇オタク。
演劇の話をすれば、何か通じるものがあるかもしれない。
よーし。




