68 女子校の文化祭
私の小説は性転換を目指す少年の話がメインですが、普通の男女高校生の恋愛も描きたくなっています。思春期の男女は不器用で、なかなか言い出せなくて、じれったくて・・・。でも、ふとした拍子に恋が進展することがあるんですよね。そんな話です。
柏原由奈です。
きょう9月21日は女子校の文化祭当日。
きょうは二つのドキドキがある日になってしまいました。
まずは、きょうは演劇部の文化祭公演があります。
私はけっこう重要な役をもらっちゃったのです。
けっこう主役のまわりでウロチョロする役で、出演時間が長い。
気が抜けません。
緊張しそう。
もう一つのドキドキは、菅原君への告白です。
ううっ、恥ずかしいよ。
菅原君は私の顔を知っていることは知っているはず。
電車の中で、葵と一緒の時に会うもん。
でも、私のことはよく知らないはず。顔を知っている程度だよね・・・
そんな女の子から告白を受けて、付き合ってくれるなんてあり得るかな?
あまりにも無謀だ。
でも、もう我慢できない・・・
やるしかない。
これ以上、片想いを募らせたら変になりそう。
当たって砕けろの感じかな。
砕けたくはないけど・・・
「おはようっ!」
いつもより早い時間に、葵の家に寄って、一緒に登校します。
今日は葵も女子校で朝から夕方まで過ごします。
男子校の「姫」として、女子校で次週開催の男子校の文化祭のPRをしなければいけいないし、
私のクラスの出し物「メイド喫茶」のお手伝いもするのです。
そんな葵がためらいがちに切り出しました。
「由奈、舞台がんばってね。それから・・・」
「うわっ、そこから先は言わないで、そっちの方は相手次第のところがあるから、
頑張りようがないよ。」
「そっか・・・
菅原君は女の子の話って、全然しないから、私もなんとも言えないけど、
彼女がいる感じは全くしないから、可能性はあると思う。
とにかく、想いをちゃんと伝えることが大事だと思う。」
「ありがとう・・・
まずは、舞台に集中する。
そのあと気持ちを切り替えるから、
呼び出しの段取りはよろしくね。
舞台が終わったら、体育館の裏に連れてきて。」
「ふふ、任せて。
そうだ、板谷君、尾崎君も菅原君と一緒にいるけど、二人には黙っておいたほうがいいのかな?」
「ばらしちゃっていいよ。
協力してもらったほうが、呼び出しうまく行きそうだから。
ただ、口外しないようにきつく言っといてね。
振られたら、後がつらいし。」
「うん、協力たのんどく。」
そう、菅原君は仲良しの二人の男性がいるんだった。
あの二人には事情を話しておいた方がいいんだろうな。
その方が、告白の舞台がスムーズに成立しそう。
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葵です。
きょうは、女子校で朝から、メイド喫茶のメイドをやっています。
そうです。春の研修で出席したクラス、つまり、由奈と祐希のクラスの出し物がメイド喫茶だったので、
参加することにしました。
最初は、男子校の「姫」ですっていう名札をつけようか?って話があったのですが、
どこまで女の子として通じるかやってみようということになり、女子校生徒のふりをして、メイドをやってみました。
結果は、見事にバレません。
それどころか、けっこうナンパとかされて、困りました。
それにしても、メイドの衣装はテンションあがります。
いつもと違う人間になったようで、ウキウキしてしまいました。
お昼になると、校門で1週間後に開催される男子校のチラシ配りをやります。
女子校の「王子」である祐希と一緒に、他校の生徒や親御さんにチラシをいっぱい配りました。
祐希だけ「王子」のタスキをつけました。
私はメイドの時のように、「姫」であることは隠し、女子校の生徒のふりをします。
「うわっ、王子だ!宝塚みたい!かっこいい!」
他校の女子生徒や、OG、母親や姉妹など、女性客は祐希に釘付けです。私はちらりと見られる程度で、
男か女かというチェックはされません。
やっぱり、王子が女子校の「華」なんです。
たまに、
「あの子、王子の彼女?」なんて、変なコメントが聞えたりします。まあ、二人でチラシ配りをやっているので、そんな感想もあるかもしれません。とりあえず男とばれてないので安心します。
「そういえば、男子校は姫っていうのがいるんだよね?王子みたいに目立つのかな?」みたいな声も聞こえてきて、ちょっと緊張します。
そんな声が聞こえてきた時は、「姫は男子校の文化祭の劇で観れますよ。」なんて、チラシを配りながら、話しかけたりしました。
なんか恥ずかしいなって気持ちがあったけど、「姫」に興味を持ってほしいと強く思ったからです。
チラシを配っていると、親友の板谷君と尾崎君がやってきました。
「藤原、小出、チラシ配りごくろうさま。」
「おお、見事なカップルっぷりだな。小出が普通に女子に見える。」
「あ、二人とも、女子演劇部の演劇ちゃんと見てね。俺、殺陣を披露するから、そこを見てほしいな。」
男性陣が祐希を「藤原」と呼び捨てにすると、祐希も自分を「俺」と呼びます。うん、スイッチ入ってる。
気分は男なんだなあって思います。
「え、日本刀とか振り回すのか?」
「おもちゃの日本刀だけどね。でも、難しいんだよ。かっこよく見せるの。」
「それは、楽しみだな。じっくり見せてもらうよ。おっ、そろそろ準備する時間だぞ。」
「あ、いけない。じゃ、私の持ってるチラシ、板谷君と尾崎君で配って。残しちゃだめだよ。」
「おお、任せてくれ。」「かしこまりました、王子様。」
「尾崎君に王子様って言われると、すごく変な感じ。じゃ、任せたよ。また、後でね。」
その後、30分くらいかけて、チラシを配り切った私たちは、食事をすることにしました。
演劇部の公演まで1時間くらい時間があったからです。
もちろん、メイド喫茶に行きました。お客さんを一人でも増やすことに貢献したかったから。
そして、生徒会の仕事をしている菅原君とここで合流することになってたからです。
食事をしながら、
早速、「実は・・・」と由奈の告白の件を説明します。告白の段取りについて説明して、告白の場所に
菅原君をうまく誘導することについて協力を依頼します。
「そうなの?そりゃ、ワクワクしちゃうな!他人事だと実に面白い。菅原って二次元しか興味ないって言ってるけど、反応が楽しみだぞ。演劇より絶対おもしろそうだ。もちろん、協力するよ。な、板谷。」
尾崎君が結構喜びます。他人事だと思って、はしゃぎすぎです。
「もう、面白がるだけじゃダメ。由奈の告白がうまく行くようにフォローしてよ。私、失恋させたくないんだから。」
「うっ、ワリい。でも、菅原か?あいつ、女の話しないからな?なんか封印している感じ?そこがちょっと不安だな。」
対して、板谷君は冷静です。
「うん、協力するよ。
由奈ちゃんって、いつも朝、葵と一緒にいる子だろ?けっこう可愛いじゃないか?
菅原は彼女いないはずだから、もしかしたら、うまく行くかもしれないな。
でも、きつい性格の女子は苦手って聞いたことあるぞ。由奈ちゃんって、どうなんだ?」
「うーん、けっこう気が強いかも。
でも、いい子なんだよ。中学の時も結構モテてた。
菅原君とも合いそうな気がするんだけど・・・」
「そっかー。そこは微妙だな。気が強いのか?」
板谷君は考えてしまいます。
そして、しばらく黙ったあと、口を開けました。
「そうだな。気の強い子が苦手って言ってるけど、本人が言ってるだけの話だ。実際はわからないな。
とりあえず、応援しよう。」
「二人とも、ありがとう。
あっ、タイミングオッケー。菅原君が来たよ。」
由奈って、元気で、話し出すとおばちゃんみたいな感じでしゃべりまくる女子です。でも、容姿は可愛かったりします。そんな女の子、高校の時、いませんでしたか?
菅原君は凝り性の性格。こだわりがある少年です。ちょっとしたトラウマも抱えています。来週は二人の恋が進展します。




