67 菅原君のトラウマ
菅原直人です。
高校1年生だったら、好きな女の一人や二人はいるのが当然だ。
なのに俺にはいない。
俺はアニメの二次元女子に夢中になって生身の女子を好きにならないようにしている。
自分でも変なヤツだと突っ込みたくなる。
マジかよ?とか変態だな?とかオタクとか
いろいろ言われるが別に気にはしない。
俺が通っている高校は男子校だ。女子に非難されることはないんだ。
ラッキーだ。
生身の女子が全くダメかというと、実はそうではない。
ちゃんと事情がある。
実は中学の時のひどい失恋のキズが大きすぎて、
しばらくは恋愛から距離を取りたい・・・そう思っている。
俺は中学の時頑張っていた生徒会活動で苦楽を共にした女の子をずっと好きだった。
俺が生徒会長、彼女が副会長で、仲は良かった。
彼女の名前は星野瑠香。
俺と同時期、中一の時に生徒会に入り、生徒会活動を引退するまでずっと一緒に活動した仲間だ。
真っ黒なロングヘアと、意思の強そうな目、はっきりした口調は男子生徒からキツイ性格だと恐れられることがあったが、俺には頼もしく、可愛くも思えた。
生徒会というのはいろんな生徒を引っ張る仕事である。
受験を潜り抜けてきた結果、ある意味大人になった進学校の高校生とは違い、
まだ小学生の雰囲気を残っていて、学力レベルの差が激しい公立中学では生徒を動かすのが大変だった。
言うことを聴かないやつらが多い。
星野のような、はっきりものを言う女子生徒は生徒会には必要だったのだ。
強引に話を進めて、教師にも物を言える生徒は俺だけじゃ心もとない。
だから、俺は彼女の存在がたのもしかった。
そして、俺は、いつの間にか彼女を好きになっていく。
プライベートでも一緒にいたら、うまくいくんじゃないか?そう思ってしまったのだ。
生徒会の活動に差し支えがあるから、告白はしなかったけど、いつかは告白しようと常に思うようになる。
いっしょに生徒会をやってて、全然嫌われてる感じはしなかったし、どちらかというと
俺のリーダーシップを尊敬してくれるようなことも言ってたから、十分脈はあると感じていた。
彼女に浮いた話もなかったから、ライバルもいないと判断する。
星野は美人だったが、性格のきつさから、男子人気は低かったのだ。
まあ、告白さえすれば、落とせる自信があったのだ。
3年の秋に、生徒会を引退したら告白して、ちゃんとカップルになれると思い込んでいた。
自信過剰と笑えば笑え!
人生経験の少ない中学生としては単純な思考しかできなかった。
学力も同程度であったことから、同じ県立高校にはいれば、高校時代も安泰だとも思っていた。
結果は?
惨敗だった。まさかの、失恋。
自信満々で、告白したら、サッカー部のエース山形勝人と付き合うことになったと返答があった。
えっ、星野って文化系だろ?
なんで、運動部と接点があったんだ?
なんていろいろ疑問が湧いたのだが、後の祭りだ。
人気がないと思ってたのは大間違いで、やはり美人の星野は実は男子生徒から人気があった。
そして、星野は自分とは違うスポーツマンが意外に大好きだったりした。
付き合うなら運動部の男子がいいと思ってたそうだ。
何だ、最初っから勝ち目はなかったんだ。
「菅原君は素敵な男子だから、似合う女の子いっぱいいると思う。
人間的に尊敬してるよ。」
なんて、言われたけど、バカにされているような気がした。
「あ、ありがとう。山形と仲良くやってくれ。」
と情けない返事をしてしまう自分にも腹がたった。
で、この失恋は後を引く。
まず、高校進学は当初予定していた県立高校をやめ、それよりレベルの上の桃花高校に変更。
面接試験の時は「僕は起業して、社長を目指します。」なんて大見えを切って学校に存在を印象付けた。
学力レベルを上の高校にしたのは、星野や山形より上のレベルの高校に行きたかったからだ。
悔しい気持ちを何とかしたかった。
そして、男子校にしたのは、しばらく女性を見たくないと思ったからである。
また失恋したくない・・・そういう気持ちが強かった。
生徒会はやろうと思ってたけど、生徒会に女性が入ってくれば、また好きになっちゃうかもしれない。
そのリスクを回避しようと思った。
そして、希望通り男子校に合格した俺は、さらに保険をかける。
大好きなアニメのヒロインに夢中になるように心がけたのだ。
男子校にはいれば、女子と出会う機会がないから、恋愛はしないだろうとは考えたものの、
近くに女子校はあるし、通学時やイベント等で女子との接触はある。
やはり危険だ。
二次元に夢中になっていれば、恋愛はしないだろうと考えた。
おかげさまで、その目論見はうまく行きそうだ。
高校1年の夏休みが終わった現在、好きな女子はいない。
このまま高校が終わるまで恋愛はしないで過ごすことはできそうだ。
恋愛は大学くらいから始めればいいや。
それまでは生徒会と勉強と、趣味である芝居とアニメの鑑賞、これだけで過ごせばいい。
ところが・・・
忘れてた。
男子校と女子校の文化祭の協力態勢があり、女子校の文化祭に丸一日顔を出さなければいけなくなった。
女子校の文化祭の手伝いや男子校の文化祭の宣伝とかしなきゃいけない。
当然、女子校の女子生徒といろいろ接触が起きる。
うーん、女子との接触をなるべく避けてたのに。
女子校の生徒会とは、普段から時々打ち合わせをしているけど、時間は短いから、あんまり気にしてなかったんだ。
今回は丸一日女子校の中にいるんだ。
嫌だなー。
うーん、生身の女と長時間一緒にいたくない。
間違って恋愛感情を持っちまったら、困る。
小出や板谷、尾崎と一緒に演劇部の芝居を見る時間を作ったけど、気楽になれるのはその時くらいだ。
後の時間はちょっとなあ・・・
男子校の文化祭の時に女子校の支援は不可欠だからなあ。
女子校の生徒会や文化祭実行委員会と仲良くしないとなあ。
あーあ、割り切るか。
事務的に女子と仕事をやればいいんだ。
可愛い子がいたとしても、変な気持ちを持たないようにしよう。
うん、何とかなるだろう!




