65 文化祭の前は大変!
葵です。
9月8日になりました。
今日は、男子校の教室に女子校の演劇部員、男子校の演劇部員が全員集まっています。
夏の合宿以来の集合です。
何でかというと、これから始まる女子校の文化祭、男子校の文化祭での講演について、相互に盛り上げるための打ち合わせなんです。
ポスターを貼ったり、チラシを配布したりの仕事の分担や、自分の学校における相手の高校の宣伝状況等を直前に確認します。
夏休みの合宿の時から、計画的に行っていたのですが、もう2週間を切ったところで、最後に全員で活動状況を見直し、徹底します。
ちなみに、女子校の文化祭は9月の21日、男子校の文化祭は28日です。
1週間ずれているので相手の学校を支援できるのです。
いっぱい出しものがある中、演劇をみてもらうには相応の努力が必要。
バンドのライブに比べると演劇部の公演はやはり地味。
努力しないと父母とマニアックな客しか来ないということになります。
まずは、女子校には、男子校の生徒を、男子校には女子校の生徒を観客として呼び込むのが基本です。
やはり、同じ学校法人だし、仲間なんですから。
また、ネットでの発信すなわち複数のSNSや学校のHPを使ったPRはすでに実施していますが、
さらなる集客のための情報提供も計画しようということになりました。
「やっぱり桃花高校は姫、桃花女子高校は王子というのが知られているから、二人には広告塔になって
もらわないとな。」
男子校の早坂部長がつぶやきます。
「時間無いけど、今日にでも二人が出演するプロモーションビデオ作って動画サイトにアップするか?」
女子校の荒木部長が賛成します。
「そうね。お金かけないでいろいろやってみよう!当日、学校の入り口とか出店の横でチラシ配りもやってもらおうかな?」
どうやら姫と王子はかなり忙しそう!
おまけに私は、祐希のクラスがやるメイド喫茶のメイドまで急遽頼まれてしまいました。
女子校の文化祭見て回る時間あるのかなあ?
打ち合わせが終わると、すぐ動画サイト用の撮影が始まります。
別に本格的なカメラは使いません。
スマホで撮影です。
撮影場所は教室。超安上がりというか、時間もかけません。
男子の制服を着た祐希と女子の制服を着た私が、桃花高校と桃花女子高校の文化祭のPRをします。
そして、両校の演劇部の公演を観に来てと呼びかけを行います。
時間は5分。私たち二人も出演します!と発言しますが、「姫」「王子」「女形」「男役」というワードは使わないことにしました。
高校生の演劇は熱いよ!みたいなヒステリックな叫び声でインパクトを作りました。
完成したものを見ると、祐希は男の子っぽく見えるし、私は女の子っぽく見えました。
そうそう、最近、祐希は男声をマスターして、男っぽい動きもできるようになって、
けっこう男の子に見えるようになったんです。春先のいかにも男装した少女という雰囲気から脱皮しました。やっぱり努力すると変わるんだなって思いまました。
ただ、イケメンに見えるかっていうとそこは微妙。線の細い男子っていう感じかな?
華奢な男子?そんな雰囲気です。
骨格がそうだから。
まあ、私と並ぶと、背が高いから、男の子っぽく見えるマジックがあるかも。
とにかく反響が楽しみです。
撮影が終わると、今度は男子校メンバーで集まって、文化祭での細部の打ち合わせをします。
まあ、何回も演技の練習をしているし、本番は地区大会なので、文化祭は腕試し的なイメージです。
観客には悪いけど、意地悪な審査員がいないだけ、リラックスして望めます。
そんな中、主役と言っていい板谷君は先輩方から、いろんな指導を受けていて、ずっと真剣な表情です。
私よりプレッシャーが大きいことは間違いなし。
私は、ちょっとだけ声をかけます。
「板谷君、がんばろうね!」
「ああ。」その時、彼がニコッと少しだけ笑いました。
そして、再度顔を引き締めます。
彼から、離れて、別のメンバーと打ち合わせをしていると、
「板谷、けっこう辛いだろうなあ。」尾崎君が私の横で、コメントしました。
「もう、尾崎君が板谷君を主役に推したんでしょ?助けてあげてよ。」
「励ますことはできても、演技については俺は何も言えないよ。
俺はまだまだ芝居は素人だし。
ただ、俺も、先輩方も、あいつの存在感と度胸に賭けたんだ。
あいつはやってくれると思う。
小出は、ヒロインとして、あいつの良さというか凄さを引き出してくれ。
あいつは今回エキセントリックな役だから、小出はできるだけ普通の女の子の雰囲気を作って、
板谷の演技と対比できるようにした方がいいだろう。」
「うーん、上手くできるかわからないけど・・・
やってみる。」
さて、帰りは久々に、女子校の演劇部の仲良しの1年生と一緒に帰りました。
駅の近くにあるファーストフード店で、祐希や由奈、はづき、桜とおしゃべりをします。
「それにしても、エクステってすごいね。
ふつうにロングヘアになっている!
春先に比べて、全然女の子っぽい。」
「何か、いきなり髪の長さが追い抜かれていて、ずるいと思っちゃう。
私も伸ばしているのに。」
「髪の毛が長くなったせいもあるけど、葵を男子と見抜ける人はまずいないよね。」
「うん、そうだね。」
「そうかな?」私は、身体を触られれば、感触が違うし、
身体の線がでる服とか着れば、女子とは体型が違うということがわかっちゃうということを冷静に分析してるけど、それを具体的に説明する気にはなれなかった。
みんなは雰囲気で盛り上がっているから、事細かく説明しても、つまらないって思われちゃう。
女の子は予定調和が大好きだし。
ホルモン治療していれば、感触も体型も女子に近づく。それまでの我慢と心の中で叫ぶだけ。
「そういえば、やっぱり、板谷君と葵って、怪しい!」
「うん、さっき男子校のミーティングを見てた時、なんか恋人みたいな雰囲気あった。」
「そうそう、他の男子とちがう距離感があったよ!」
「板谷君って、何気に背が高いし、かっこいいもんね。女子校の女の子に狙われないように、葵、
確保してるのかな?」
「ええ?そんなことないよ!」
突然の冷やかしに私はどうやって対応していいかわかりませんでした。




