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59 2回目のホルモン注射 

8月23日、もうすぐ9月です。


私は、2回目のホルモン注射を受けに行きました。もちろん草野医師のクリニックです。


ホルモンの効果というのはまださほど感じていません。

何となく、乳首の周りが引っ張られるような感じがして、しこりもできましたがおっぱいが膨れ始めたみたいな感覚はありません。あくまで違和感だけかな?

まだ2週間しかたっていないのですから、当たり前でしょう。

体全体の変化もあまり感じません。

性欲の方は多少鈍化したかなあ。

男性特有の朝の現象はあまりなくなりました。

やっぱり、少しづつ、変化してるのかも。


2回目の注射をしたあと、草野先生が説明してくれます。


「1回の注射じゃ全然変化でないからね。不安にならないでね。

今日の2回目の注射のあとも、まだそんなに変わらないかも。

変化が出るのは3回目の注射のあとかな?

個人差があるから約束はできないけど・・・

うーん、今はまだ身体が準備作業をしている状態と思ってね。


それにしても、髪の毛、急に伸びたわね。エクステ?」


「はい、エクステです。ちょっとお金かかっちゃったけど、手っ取り早く、

女の子っぽくなりたくって。」


「ホルモンの効果はまだまだだけど、すごく女の子っぽくなってる。

たぶん、髪の毛を伸ばしたことによって、精神的にだいぶ変わったのかもね。

ヘアスタイルって大事ね。

私、髪の毛切ろうかと思ったけど、やっぱりロングヘア大事にしよう。

私も葵さんに負けないよう女を磨かなきゃね。


あ、そういえば睾丸摘出もそろそろ考えないと。」


「あ、それ、私も考えてました。女性ホルモンを補給しても、男性ホルモンを出すものがあると

あまりうまくないんですよね。」


「そうなの。手術するまで手を付けない性転換希望者もけっこういるけど、考えておいて。

今日渡したペーパーに睾丸摘出のメリットとデメリットを書いておいたから、じっくり読んでね。」


「はい、考えます。性別適合手術まで2年近くあるから、早く女子高生らしい体にするんだったら、

睾丸摘出はしといた方がいいなと思ってたんです。下着の履き心地もすっきりするし。」


「そうなんだ。まあ、10月くらいまでに家族とも話し合ってね。何て言ったって未成年なんだから、

ご両親の承諾なしには何もできないんだから。

私は、個人的には早くした方がいいと思ってる。」


「はい、早くするつもりで検討します。」


私は、帰りの電車で、色々考える。

早くホルモンの効果でないかな?

早く、睾丸摘出したいなあ。

早く女の子っぽくなりたいなあ。


そんな時、急にスマホにメッセージが入りました。


女子校に通学していた時に仲良くなった桑島純華くわじますみかからです。

同じクラスだった女子で元気いっぱいの女の子。

ロングヘアがきれいな子です。

小柄で華奢なのが特徴かな。


「えー、何だって。あと夏休み少ししかないけど、会わない?

女の子らしくなったはずの葵に会いたい。文乃もそう言ってる。」かー。


すると、もう一回スマホが鳴りました。

名前が出た北山文乃きたやまふみのからです。

文乃も女子校通学の時にすごく仲良くしてもらいました。

やはり同じクラスで、長い髪の毛をポニーテールにしたりツインテールにしたり、

ヘアスタイルが楽しい子です。

彼女は背が高くすらっとしているのが特徴。


二人は女子校通学時の親友的存在だったかな?


メッセージは

「葵に会いたい!おしゃべりしたいよ!」となってます。


確かに、夏休み前は駅前で偶然に会ったりしたけど、挨拶程度でちゃんとした会話してない。

夏休みになってからは全然会ってないや。


できたらホルモン治療の効果が出てから会いたかったなぁ。変わったところを見せたかった。


あ、そうだ!

変わってる!

エクステで変わったヘアスタイル見せたい!

エクステで女の子っぽくなってる!

驚いてくれるかも!


よし、スマホに入力しよ。


「うん、会おう。明日会える?」


「オッケー。」


「了解。甘いもの食べたい!」


あっという間にメッセージの交換が終わり、翌日会う事が決まります。


東京でウインドウショッピングすることにしました。

やっぱり渋谷、原宿ですね。

なんかワクワクします。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌日、ハチ公前で待っていると、


「あれっ?葵?うそ、髪の毛伸びてる?ウイッグ?でも、ちゃんと分け目があるし・・・」


相変わらず元気いっぱいの純華が、驚きながら声をかけてきました。

純華は教室でいつも元気いっぱいだった。


うわっ、デニム生地の短いスカートだ。サンダル履いていて、足が長く見える。

肩を大胆に出してるし、ちょっとギャルっぽい。

でも、髪に付けた花のアクセサリー

が夏っぽくて子供っぽさもある。

すごく健康的で可愛い!

今の私にはできないなあ。この柔らかそうな肌は女性ホルモンがなせるものだもん。

私が同じカッコしたら、肌が硬そうに見えちゃう。

ホルモン治療の効果が出るまでは肌見せ我慢しなきゃ。

そう思った私のカッコはなるべく肌を見せないコーデ。


水色のワイドパンツに白の七分袖のスモックシャツ。涼しそうに見えながら肌の露出を防ぐ

作戦だ。


「久しぶり、純華!これはね、エクステだよ。髪の毛を繋いでセミロングにしてるの。」


「うわっ、すごい。つなぎ目わからない。普通に自分の髪の毛に見える!

それにしても、髪の毛伸びたせいか、普通の女子にしか見えないよ。

声も自然になった。やっぱり24時間女の子態勢はすごいね。もう、5カ月もやってるんだもんね。

いろいろ慣れてくるんだね。」


その時、ちょっと離れたところから声が飛んできました。


「葵、純華!お待たせ!!」


北山文乃です。ちょっと焦ってるかな?でも顔はニコニコしてる。


「葵、髪の毛が違うから、最初誰かと思ったよ。付け毛つけてる?」


「うん、ご名答。エクステだよ。」


「うわっ、よくわかったね!私はウイッグかと思った。」


「ウイッグだと、ちょっと頭が大きくなるし、分け目が不自然になるけど、

頭は大きくなってないし、分け目もあるもん、付け毛かなって思ったんだ。

でも、それにしても自然。葵の本来の髪の毛の長さを知らないとわからないレベルだね。」


「よかった。完成度高いってことね。」


私は美容師の環奈さんに心の中で深く感謝しました。




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