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58 夏のプール

板谷翔です。


8月も半ばを過ぎ、もう新学期が見えてきた。


でも、まだ夏真っ盛りだ。

太陽がじりじりとしているから、たまらずプールに行きたくなり、中学の時の友人の何人かに声をかけたところ、4人が賛同してくれた。

行先は市営プール。

競技に使われる正式なプールで、水深が深く。ちっちゃい子は入れない。

俺たちはみんな泳ぎが得意なので、問題なし。


一緒に行ってくれたのは、中学3年の時仲良かった佐久間和樹さくまかずき高山静也たかやましずや庄司博人しょうじひろと三島彩花みしまさいかだ。

中学の時、一緒に遊んだ仲間である。


ちなみに、庄司と三島は付き合っている。

中学の時から付き合っていて、高校も同じ高校に行ったので、交際が続いているっていうわけだ。

中学の時に付き合った男女って、違う高校に行って別れるケース多いけど、二人は同じ高校に進学して、

うまく危機を乗り越えたって感じかな。


プールでいっぱい泳ぎ、バカ騒ぎをして、俺たちはくたくたになる。

紅一点の三島に至っては現役水泳部だけあって、俺たちより泳ぎがすごく、男だから負けたくないと張り合っていたら、みんなえらく疲れてしまった。



プールサイドの日陰で、俺たちはアイスを食いながら、コイバナを始めた。


佐久間が庄司、三島カップルをうらやましがる。

「いいな、庄司は。俺はいまだに彼女ができる感じがしない。

でも、文化祭、体育祭があるからな、秋が勝負だ。」


高山もそれに応じる。

「そうだ、うちの学校も文化祭、体育祭で、男女が仲良くなるって聞いてる。

これから本気になればいいんだ。」


「でも、佐久間君、高山君、逆にその2大イベントで、告白とかで失敗すると、そのあと全然男女交際ができなくなるって先輩に聴いたよ。くれぐれも慎重にね。」


「おお三島に言われるとリアリティあるなあ。

俺に気があると思って告白して失敗した中学時代を思い出すよ。

可愛い子ほど、思わせぶりうまいからなあ。」


「そうなんだ。俺のことを好きだと思ってたら、そう思ってるやつがほかにも10人くらいいるんだよな。」


「でも、みんなは男女共学だろ?俺のところは男子校だぜ。みんなが羨ましいよ。」


「へーっ、でも、板谷君。

もしかしたら、女の子と付き合ってない?

前に庄司君と遊園地に行ったら、女の子と二人で歩いている板谷君見かけたよ。

女の子、すごく可愛くて、あの時庄司君、絶賛してたんだから。」


「おお、そうだ。

板谷がすげえ可愛い子と一緒だったんだ。

彼女かな?ってあの時ジロジロ見ちゃった。」


「何、板谷、本当か?

彼女なんかいないって言ってたじゃないか。

本当だとしたら裏切り者だぞ。」


「おお、そうだ。

さっきも女の子と仲良くなる機会ないって言ってたよな。

女子校との付き合いがあるから知り合いにはなれるけど、

なかなか仲良くなるところまでは行かないって言ってたよな?」


「いやー、まいったなー。あの時、庄司と三島も遊園地にいたのか?

油断できないな。

あの子は別に彼女じゃないよ。

ただの友達。

向こうも俺に恋愛感情ないから。」


「でも、ラブラブの雰囲気あったけどなあー。

女の子も嬉しそうにしてたよ。

私、女だから、恋する女の子の顔ってわかるんだから。」


いやー、まいったなー。

とりあえず、手をつないだり、肩に手を回したりしたところは見られてないみたい・・・だな。

危ない、危ない。


「うん、確かに可愛い子なんだけど、事情があって、二人で歩いてたんだ。

実はほかに男女が1名づついて、4人で遊園地いったんだよ。

みんな友達で、カップルじゃないんだ。

もし、本当に彼女ができたら、みんなに報告するよ。

うーん、これしか言えないけど、信じてくれ。」


「そこまで言うなら、付き合ってないのか?

でも、可愛い子だったよね。

脈はないの?」

諦めない三島彩花だ。


「うーん、今は脈はないよ。その子、男女交際する気は今ないと思うから。部活に夢中なんだ。」


「部活って何?」

今度は庄司が聴いてくる。


「うーん、俺と同じ演劇部だよ。」


「何だ、結局女子高の演劇部と仲良くやってるんじゃないか?

いいなー。俺なんか、テニス部に女子がいるけど、まったく相手にしてもらってないよ。」


「高山は部活で女子と話せるんだろう?

俺は帰宅部で、クラスメイトしか女子と話せないけど、クラスの女子はみんな数人のイケメンに夢中だよ。」


俺は頭が痛くなる。

まさか、女装した男子生徒とデートっぽいことをしたなんて打ち明けたくない。

ここはごまかし切らないと。


そうだ佐久間の高校にも、高山の高校にも、わが中学から可愛い子が進学している。

そっちに話を持っていこう。


「そうだ、佐久間の高校にはうちの中学から、山川祐奈やまかわゆうなが進学したよな。

あの、おっぱいが大きくて有名な。」


「おおっ!よく覚えてるな?

そうだよ、山川祐奈は可愛いんだよなー。

うちの学校の1年の女子の中でもいいランクにいるぞ。

ちなみに彼氏はまだいない。

実は恋人候補の一人にしてるんだ。

家に帰る時、電車で一緒になることがあって、話すこともあるんだけど、すげー緊張しちゃって、

上手く話せないんだ。

でも、これから何とかしたい。

山川といえば、高山の高校には、山川と仲良かった吉田真央よしだまおが行ったじゃないか?

あの子には彼氏いるのか?」


「よく、聴いてくれました。

俺の調査だと吉田真央には彼氏はいない。

吉田は真面目だし、性格が結構きついから、男を寄せ付けない雰囲気あるからなあ。

でも、美人なのは確か。

実は俺は惚れてるんだ。

機会があれば、告白したいと思ってる。

だけど、クラスが違うから、けっこうハードル高いよ。」


よーし、上手く話しの流れが変わった。

佐久間、高山、庄司は山川祐奈と吉田真央のことについて話しが盛り上がり始めてる。


ホッとした俺に小さな声で、三島が囁いてきた。


「もう、板谷君ったら、ごまかすのうまいなあ。

わたし、あの可愛い子、また見てみたいな。そのうち会わせてね。

彼女じゃないって言ったって、彼女に近い存在なんじゃない?

どうせ否定するでしょうけど。」


「まあ、想像したいように想像してくれ。あの子は恋愛対象じゃないんだ。」


だって、男なんだから。


俺は心の中で、大きくため息をついた。

そして、もう一つの気持ちも思い起こす。


でもあいつ、可愛いんだよな・・・あいつが女だったらな・・・


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