55 コスプレにおける男装、女装
色々なコスプレイヤーを見学した後、私と祐希は祐希の友達がやっているビジュアル系バンドのコピーバンドのライブ会場に向かいます。
オープンスペースで、大きな音でやってるので、地図を見なくても場所がわかりました。
ステージにつくと、アニメのキャラクターに扮した5人の女の子がアニソンを歌っています。
けっこう可愛い!
それで、衣装もよく作られている。
観客もキャラクターのことをよくわかっていて盛り上がっていました。
これは楽しいなあ。
「アニメのキャラ、そっくり!
髪型も上手く真似してる!」
「うん、ウイッグ使ってなくて
地毛でやってるね。
すごく自然!」
女の子たちの可愛さに見とれていると、いつの間にか最後の曲が終わり、次の出演者が出てきます。
「うわっ、女装レイヤーだ。」
私の近くにいたおじさんがつぶやきました。
そうです。アニメのキャラに扮した女装レイヤーたち3人が出てきました。
学園モノのアニメでみんな制服姿です。
きれいにメイクしているし、ウイッグも被っていて、女性に見えなくもないのですが、
やはり、背が大きいし、バランスが変!
手足も何となく、筋肉質。
よく見れば男性ってわかります。
まあ、真ん中の人はまあまあキレイだ。お化粧の出来が他の二人と違う。
演奏も歌もCDを流していて、彼らは口パクでパフォーマンス。
振付とかすごくて、練習の成果が出てます。
(さっきの女の子たちを見たあとだと、やっぱりごつくて可愛くないなあ。
何で男なのに女装するんだろう?
でも、そういうコメントはここでは言わないほうがいいんだろうなあ。)
と心の中で思います。
祐希はさすが空気を読みます。
「あの人たち、すごくメイクが上手いよ。真ん中の人なんか、街歩いていたら女子に見えるよ。」
近くで見ていた知らない女性も
「うーん、完成度高いじゃない!
ウイッグの色やヘアピン、アニメと同じ!」
と、いいところを取り上げて、褒めます。さすがです。
まあ、楽しんでやってるのだから、けなすなんてダメだよね。
あの人たちも、本物との違いはわかってやってるんだから。
下手なことを言わないようにしよう。
私は周りで見ている他の女性のコメントも気になって聴いて、あることを悟ります。
そっか、本物の女性に見えるか?ってことは問題じゃないんだ!コスプレとしての完成度が大事みたい。
また、本物の女性から見て、男なのに女の子っぽくやっていることを評価してあげようという上から目線も感じます。女の子は本音を言わないんだ。怖いなあ。
そんな事を考えていると、女装レイヤーのステージは終了し、
祐希の友達の男装ヴィジュアル系バンドが出てきました。
「わ、陽菜と沙織だー!かっこいいじゃない!キャーっ、頑張って!」
祐希はまるっきり女の子の口調で応援してます。
どうもギターとヴォーカルが友だちのようです。
まあ・・・冷静に見ると男装してても女の子にしか見えません。
骨格が華奢で顔が小ちゃい。
可愛い!
でも、やっぱり本音の感想言っちゃいけないだろうなぁ。
「演奏上手いね!凄い!」
私はとりあえず演奏力を褒めます。
「でしょ?
あと、あの二人イケメンっぽくてカッコいいでしょ?女の子のファン結構いるんだよ!」
黒づくめの衣装でショートヘアをワイルドに立たせた祐希の友達2人は私より背が高い。
祐希と同じくらいかな?
でも祐希の方が男の子っぽいぞ!と思うものの、そこは言わない事にします。
確かに、このバンドのファンの女の子たちが最前列にいて、キャーキャー言ってる!
うん、これも宝塚みたいなもの?
こういうのって、本物の男性に見えるかどうかってどうでもよさそう。
女の子が男装して、男っぽくやってることが大事なのかな?
私の心の中では、男っぽくやっていても可愛いくて女の子っぽさは隠せてないぞって思うんですけどね。
「俺たちのステージ見てくれてありがとう。
愛してるぜ!」
ヴォーカルの子が、どすを効かせた声でMCをします。
そして、ファンの女の子がキャーっって答えます。
うーん、こういう世界ってあるんだなあ。
レズではなくても祐希が女の子に騒がれたいっていう気持ちはこういう感覚から来るんだろうな。
私には男子の感覚があるから、ちょっと変に感じるけど。
「ヴォーカルの陽菜って、バンドではハルヤって名乗ってるんだよ。
ギターの沙織はサリトって名乗ってる。面白いでしょう?」
「女の子にモテモテだね。」
「うん、追っかけもいるんだよ。このバンド。
でね、ヴォーカルの陽菜は、実は男の子より女の子が好きなの。
だから、女の子にモテるのが快感なんだって。」
「え?じゃあ祐希も好かれてるの?」
「私は背が高いから対象外。ただの友達。
彼女が好きなタイプは身長が160センチ未満で、髪の毛が長い女の子っぽいタイプだよ。
私は髪の毛短くしちゃったから、まさに関係ないんだ。」
「ふーん、そうなんだ。」
彼女達のライブは盛り上がりました。
何より演奏が上手いから、人が集まってくるんです。
アンコールまであり、熱気ムンムンのまま終了します。
演奏が終わった後、祐希が私に声をかけます。
「じゃ、フードコートの方に行こう!
そこで陽菜と沙織と待ち合わせなんだ。」
「うん、わかった。」
フードコートで、二人してハンバーガーセットを食べながらくつろいでいると
待ち人達がやってきます。
陽菜さん、沙織さん、あれ?女装レイヤーさんだ!陽菜さん達のバンドの前に出演していたグループの一人だ。一番きれいだった人だ。
でも、アニメの制服姿は目立つなあ。背も高いし。
まずは陽菜さん、続いて沙織さんが挨拶してくれました。
「祐希、お待たせ!
お友達の方、初めまして!陽菜です。
レイヤーさんと話が弾んで、一人連れて来ちゃった。
こちらレイヤーの鈴音さん。
メイクにすっごく詳しいの。」
「祐希、久しぶり!
お友達の方、ライブ見てくれてありがとう!
沙織です。
鈴音さん、女子力高くて面白いんだ。」
レイヤーさんも自己紹介してくれました。
無理矢理作った高い声でした。
「レイヤーの鈴音です。
ばれてると思うから自分で言うと
女装してる男性です。
でも、女性になりたい人間なので、
仕事のない時は、いつも女性の姿なんですよー。」
「鈴音さんは、平日はサラリーマンなんだって。信じられないでしょ?」
沙織さんの追加説明に、祐希が反応します。
「えーっ?
本物の女性だと思った!
綺麗すぎる。
社会人になんて見えない。
大学生かと思った。」
うわー、祐希ったら、よくもそこまで褒めるなあ。
確かに綺麗にお化粧してるから顔だけ見れば女性に見えるけど・・・
全体を見ると女装した男性に見えるし、年齢も、もしかしたらアラサーくらい?
うーん・・・
もうしょうがない、乗っかるか?
「ホント、女の子にしか見えない!
肌もきれいですよね!」
「そお?ありがとう!
一応メイクとか頑張ってるし、
ヒゲとか体毛とかレーザー脱毛してるから
その成果かな?嬉しいな。」
鈴音さんは嬉しそうでした。




