54 コスプレイベント
美容室から帰ってきた日の夜、家族に新しい髪型を見せると上々の評価でした。
姉は驚いてくれました。
「おーっ、すごい!普通のロングヘアと同じじゃない。
やっぱり、最新のエクステ技術はすごいねー。
私の思った通り。
それにしても・・・
何か、私に似てきた。
よし、一緒に並んで、鏡の前に立とうよ。
うーん、やっぱ、私に似てる。
前から、女装した葵って、私が髪の毛を切った姿みたいだなあって思ってたけど、
同じような長さにすると、かなりに似てる!
完全に姉妹って感じ。」
私も驚きます。
実は、美容室でエクステ装着が終わった時に、ちょっとは似てるかなとは思ったんですけど、
こうやって、並んでみると、かなり似てます。
やっぱり血と髪型の力は大きいのですね。
姉は胸が大きいので、ちょっと雰囲気が変わりますけど、
身長とか、身体のバランスとかはかなり似てます。
姉の言う通り、姉妹で通りそう。
あとは、ちゃんとホルモン治療で、この男性的な体を変えないとだめだけど。
父は、
「髪の毛を長くしただけで、ずいぶん印象が違うなー。
うん、女の子らしくなった。
いいんじゃないか?
確かに姉妹というか双子っぽくなったかも。」
とニコニコ笑ってくれました。
よかった。
で、母は、
「これじゃ、どっちが柚で、葵かわかんなくなっちゃうね。
でも、葵は、まだ胸がちっちゃいかな?」
これにはちょっと、傷つきます。
早く、胸を成長させたい。
もし、ホルモン治療で全然大きくならなければ、豊胸手術でもしようかなあ。
そういえば、お母さんもおっぱい大きいなあ。
お父さんはあの胸で恋に落ちたのかも。
さてさて、そんな感じで、家族に褒められて、からかわれているときに、
祐希からスマホに連絡がありました。
どれどれ、どんなメッセージだろう?
私がスマホの画面をみると、
「ねえねえ、明後日部活ないよね?もし暇だったら、行きたいところあるんだけど、一緒に行かない?
中学の時の友達がコスプレイベントに出てるんだけど、見に来てほしいって連絡があったの。
中学の時の友達は女の子なんだけど、男装コスプレが好きで、ビジュアル系バンドのコピーバンドをやってるんだ。
観客ほしいみたい。
それから、女装コスプレイヤーのアイドルグループもあって異性装がいっぱいいるんだって。
男装、女装のオンパレードだよ。
女形、男役の参考になりそうだと思わない?
私、珍しく、男装で行こうと思ってるから、葵も一緒に行こうよ。
もちろん、葵は女の子のカッコだよ。」
男装、女装ってちょっと異常な世界かなって思ってたけど、そうか、コスプレイヤーの世界って、
けっこう当たり前かな?
自分以外の女装って見たことないから、見てみたい。
あと、祐希以外の男装も見たことないし、興味ある。
よし行こう!
「オッケー。明後日なら、大丈夫。
私は、コスプレイヤーに間違われたくないから、普通の女の子っぽいかっこで行くね。
男装、女装の人見るの初めて。
すごく楽しみ。」
「そっか、葵だったら、本物の女の子のふりできるね。
私はさすがに本物の男子に見せるのは無理だから、男装した女子っていうことで行くよ。
葵は女子高の女の子ってことにするから、話を合わせて。
ばれないで過ごしたらすごいよ。」
「うん、ばれないで過ごせるかやってみる。
ホルモン治療始めたばかりで、まったく体は男のままだけどね。
あ、エクステつけて、髪の毛は伸びたよ。
ちょっと楽しみにしてね。」
「そうなの?
それは楽しみ。
女の子っぽさが増したかな?
じゃあ、明後日よろしく。
男装の女子とその女子に憧れてるごく普通の女友達って感じででお願いします。」
わーっ、面白そう!
祐希の友達や、コスプレイヤーたちに女装ってばれないかドキドキする。
そして、明後日に私と祐希はある駅で待ち合わせます。
私は、ワイドパンツにフェミニンではないプルオーバーのブラウスという無難な女子高生の私服姿。
メイクも抑え目にしました。
髪の毛がロングになったので、服装が地味でも、十分女の子っぽさが出てます。
祐希は会うなり、驚きの声を上げてくれました。
「わーっ、ナチュラル!普通の女子じゃない。派手じゃない感じがいかにも真面目な女子高生って
感じだよ。やっぱ、髪の毛が長いとナチュラル感がすごい。」
一方、祐希もそんなに派手ではありません。
無難な男子高校生っぽいファッションです。ジーンズにカジュアルシャツっていう感じです。
例によって、ナベシャツという胸の膨らみをつぶしてしまうサポーターみたいなシャツを着こんでるせいか胸はぺったんこになっています。
でも、やっぱり、女の子の可愛らしさを消すことはできません。男装した女子っていう雰囲気満載です。
これはこれで、好きな女の子いるだろうなあ。
「他人が見たら、仲のいい女子高生二人組って思ってくれるかな?」
「思ってくれるかもしれないけど、レズカップルって思われるかもよ。」
祐希は、私の肩を抱いて、ふざけます。
祐希の背の高さは、私より10センチ高いから、カップルっぽいかも。
でも祐希はレズじゃない。女の子にかっこいいと騒がれたいだけだ。
「そんなこと言ってると、祐希、女の子に好きだって言われちゃうよ。」
「それは大丈夫。話しかけられたら、女の子の声で、かっこいい男の子いないかな?って
言っちゃうもん。」
「なるほど。」
私の肩を抱いたままの祐希の体はやっぱり柔らかい。私と違って、やっぱり女の子だ。
私も、早くこのぷよぷよした触感・・・たぶん脂肪質の体を手にいれたいなあ。
さて、一緒に電車にのって、イベント会場のある駅について、徒歩10分。
目指す会場に着きます。
うわーっ、すごい熱気。
アニメやゲームのキャラのカッコをしたコスプレイヤーが、いっぱいポーズをとってカメラを持った人達の被写体になってる。
男装、女装はパッと見るといません。
目立つのは、色っぽいかっこをしたスタイルのいいお姉さんのコスプレ。
うわ、外人さんもいる。
金髪のお姉さんの女勇者、色っぽいなー。
また、小道具や衣装に凝りまくっているコスプレイヤーの完成度の高さに感心しまくってしまいます。
私たちは、架空の世界の登場人物たちになりきるコスプレイヤーたちの情熱のすごさを思い知ります。




