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50 8月上旬 夏の合宿

8月になり、3日目になりました。


ついに毎年恒例の男子校、女子校合同の合宿の日がやってきたのです。


日程は3泊4日で、県の施設を借りて行われます。

主な目的は、秋の文化祭から始まって地区大会でやる劇の本格的な練習を開始し、ミーティングや台本の

手直し・修正も行うことです。大会にむけての本格的スタートと言っていいでしょう。

また、プロの指導者を招いて、演劇の基本を学ぶという大事な経験もさせてもらえるのです。

うん、貴重なイベントです。

男女合同の練習って言ったって、一日一緒に過ごすのは初日だけ。

あとは、それぞれの劇の練習です。2日目から4日目は、発声練習等のウオーミングアップだけ一緒。

まあ、休み時間などで交流する時間があるから、それは楽しみですけど。


県の施設はバスに乗って2時間以上かけてやっと到着する山奥にありました。

電車などではいけない超不便なところ。

近くにコンビニもありません。

部活動に集中できる環境といえるでしょう。

たぶん、土地はタダみたいに安いところじゃないかな?


合宿所は、学生向けの格安の施設ですがなんでもそろっています。

体育館、小体育館、武道館、舞台施設、プール、グラウンドなど全部そろっていて、

高校生、大学生の運動部、文化部の合宿にはもってこいの場所です。

ブラバンやロックバンドが練習できる防音設備のある設備もあります。

食堂も安くて量があって好評。

何て言ったって、大食漢の運動部の連中も来るところですからね。

もちろん、ダイエットを気にする女子メニューもあります。

いや、女子だけでなく、男子でも体重を気にするスポーツもあるわけで、

カロリー低めで栄養バランスがとれているメニューも充実していたりします。


さて、宿泊部屋は大部屋となっていて、男子部屋と女子部屋に別れていますが、

私と祐希はどっちの部屋で寝るのでしょうか?


もちろん、祐希は服を脱げば女性なので、女子部屋に決まっています。


となると、私は男子部屋?

でも、学校ではずーっと女子のかっこをしていて、トイレや更衣室も変えているし、

下着も女子のものを常につけている私が男子と同じ部屋なんて、ちょっと恥ずかしい。

今さら男に戻れません。

どうなるんだろう?と悩んでいたら、山野先生と福島先生が話し合い、

そして、女子演劇部の人たちとも話し合って、私は女子演劇部の1年生の部屋に入れてもらうことが

できました。

女子校の1年生は私のことを女子扱いしてくれたようです。

感謝です。

トイレは多目的トイレを使用。

着替えは、他の女子が着替えるときは外に出て、みんなが着替え終わって外に出た後するという

ルールも確認しました。

問題はお風呂。

他校の女子もいるし、女子風呂は使えません。

かといって入らないわけにはいかず、運動部用の男子シャワールームで体を洗うことにしました。

男子シャワールームは小さな個室になっているため、女子のかっこをした私がはいっても

問題はありません。でも一人で行くと目立つので、板谷君と尾崎君に付き合ってもらうことに

しました。

ああ、早く手術をしてしまいたい。

男と女では、あまりにもいろいろなことが違うんだなって、団体生活をすると思い知らされます。


さて、当日バスが目的地につきます。


入口で、男子部員と女子部員が集まり正面から向かい合います。合わせて総勢60人くらいいるでしょうか?まだ引退していない3年生も参加していますから、けっこうな大所帯です。


男子の方はみんな緊張しています。

だって、普段全然女子と話をする機会がないんですから。

私は偽物の女の子だから、全然違うと考えているんでしょう。


「俺、中学卒業してから、全然女子としゃべってないよ。どうしよう?

うまく話せるかな?」


「安心しろ、1年。俺も、まともに女子としゃべるのは昨年の合宿以来だ。」


「先輩、先輩は3か月に一度の選抜メンバーによる女子高との研究会には参加しなかったんですか?」


「参加したけど、昨年は7月に参加したんだ。だから、昨年の合宿以来、女子との交流がないんだ。

部長や副部長は毎月の男女演劇部幹部ミーティングがあるから、いいよな。

けっこう部長同士で、カップルになっちゃうことあるんだぜ。

ちなみに、うちの前部長と女子校の部長は付き合ってる。」


「ええっ?知らなかった!役得じゃないですか?」


「うん、ちょっとずるい。まあ、ひがみだけどな。」


尾崎君は、やっぱりウキウキしています。

うん、祐希がいるとやっぱり楽しそう。

好きなんだろうなあ。

どうも、祐希は演劇部にいる間は男子とは交際しないという宣言をしたようなんですけど、

逆に言えば、誰とも付き合ってないってことで、尾崎君は諦めてない感じ?

別の女の子を好きになると言う選択も考えたようですが、好きという気持ちをすぐ消せないみたい。

ずっと好きでいるのかな?


私は、以前女子高研修で仲良くした1年生たちと手を取り合って、再会を喜びます。


「ちょっと髪の毛伸びて、女の子っぽくなったんじゃない?」


「うーん、そうかな?まだボブで、セミロングには遠いよ。早くロングにしたい。

エクステ付けようかなって思ってる。」


「おおっ、すごいこと考えてるね。それいいかも。」


「そういえば、葵と噂になっている男の子って誰?教えてよ。」


「ええっ、何それっ?誰がそんなこと言ってるの?

さては?」


私は、祐希の方を見ます。祐希がニコッと笑って、バツが悪そうにしています。


「もう、祐希ったら。変な噂がたったら、本人が困るよ。

私も避けられちゃう。」


「ええっ、噂になっているって嘘?もしかしたら、葵の片想い?」


「違います。もう、祐希が面白がってるだけ。男の子の方は、きわめてノーマルなんだから。

変な噂がたったら、傷つくかもしれないでしょ?」


「ふーん。じゃあ後で祐希に聴こう。どの男の子かなあ?」


「私も興味ある。確かめなきゃ。」

「うん、私も私も。」


演劇部の1年生で、噂話やコイバナが大好きな、島田はづきと、福山桜がものすごく盛り上がってる。

困ったなー。

しょうがない。板谷君に話しておこう。

変な噂がたったらごめんねと。


あれ、誰も、板谷君って言ってないけど・・・

噂の相手って板谷君のことだよね。祐希が吹き込むんだから。

尾崎君ってことはないよね。

ううっ、祐希に確認してからだ・・・

ああ、混乱する。

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