5 採寸、準備、幼馴染み
普通の男子だと、女子の制服がぴったりくるっていうことはあまりありません。
やっぱり小柄で華奢じゃないとダメですね。
今回から幼馴染みを登場させました。
ちょっと世話好きかな?
保健室には、俺のクラス担任で、演劇部の顧問である美人教師、山野先生と保健室担当の女の先生がいた。
保健室の先生はやはり20代後半で、可愛い感じだ。
色っぽい系の山野先生と対象的に
アイドル系かな?
うん、ここはオアシスかもしれない。
「私、保健室担当の香山京香です。
あなたが、新しい姫なのね。
うん、可愛い!
期待できそう!」
「ありがとうございます。
いろいろとお願いします。」
毎日女装するんだ。もしかしたら、相談事もあるかもしれない。
本物の女性には助けを求めるかもしれないと俺は思った。
「じゃあ、採寸しましょ。華奢だから普通の女の子サイズの制服でオッケーっぽいね。」
香山先生が採寸してくれる。
身長、体重、胸囲、ウエスト、足の長さ、袖の長さ、足の大きさを測ってくれた。
「驚いた。ほんとに女の子サイズね。一応、オーダーするけど、桃花女子のOGの制服で、十分間に合いそう。
でも、やっぱり新品がいいよね?
うまく着こなしてね。
制服は冬物のブレザーとスカート、夏物のスカート、長袖ブラウス3着、半袖ブラウス3着、リボン、
ベスト、靴、ソックス、トレーニングウエア、Tシャツ、ハーフ・パンツね。
今日は月曜だから、業者に発注すると金曜までに届くと思う。
届いたら連絡するので保健室に来てください。
サイズが間違ってないか、着てもらってから渡すから。
それからね。下着も1着だけ買っておくよ。
全部学校の費用から出るから、心配しないでね。
あなたにはお金がかかってるの。プロ野球の新人選手みたいに期待されてる。
下着はとりあえず、1着は学校側が用意するけど、
あとは、自分で家族と相談して、好きなもの買ってね。2着目以降は自費よ。」
おおっ、プレッシャーだ。
金のこと言われると弱い。
それにしても、女ものの下着もつけなければいけないんだ。うわっ、忘れてた。
超恥ずかしい。
「それから、髪型、いまでも、女の子っぽいけど、ちょっと工夫した方がいいかも。
髪の毛はこれから伸ばしてね。
今がボブってとこだから、1年かければ、セミロングっぽくなるし、引退まではロングヘアっぽくなるかな。途中で、エクステつけて、早めにロングヘアにしたほうがいいかも。」
「そ、そうなんですか?
髪の毛伸ばすんですね?」
俺はロングヘアになった自分が想像できなかった。
「だいたい 、姫になる子は最初、ウイッグを被るもんだけど、あなたの場合、最初から地毛でいける。
うーん、恵まれてるよ。」
山野先生がコメントした。
女の子に間違われる髪型が役に立つとは思わなかった!
それにしても山野先生、部室で先輩に見せてもらった歴代の女形「姫」たちの一人に
似てる。兄弟だったりして。
自宅に帰り、家族にスケジュールについて報告する。
女子の制服が支給されること、
来週からは、女子高生の姿で桃花女子高校に3週間通う事、髪型をもっと女の子っぽくした方がいいこと、そして言いづらかったが、下着が必要な事を話した。
父は、
「いよいよ本格的になるな。支度と準備は
お母さんと柚に任せた!」
と楽しそうだ。
母は
「うん、任せて。週末は忙しくなるね!
柚、週末は買い物と葵の訓練よ。
部屋のインテリアも変えなきゃ!」
「そうね。下着だけじゃなくて、
女子高生に必要な小物や私服、
化粧品、装身具を揃えないと。
私が使っていたもので捨ててないもの
あげる!
あ、私の高校時代の制服まだ捨ててないから
着てみる?サイズ合うんじゃない?
着こなしの練習できるね。
下着は明日、大学の帰りにとりあえず1セット買ってくる。
明日は大学午前だけだから。
来週から、女装して女子高行くんでしょ?
じゃあ、外出訓練もしなきゃ!
美容室行って、縮毛矯正もいいかも。」
母も姉もノリノリだ。
姉はすぐメジャーを持ってきて俺の体のサイズを測りだした。
確かに女装して街中歩いたり、
電車乗ったり、女子高行ったりと
人の目に自分の女装姿晒すんだから
不安だ!訓練しないと!
本物の女の子に見られるようにしないと。
そんな時に家の電話が突然鳴った。
母が出る。
「あら、由奈ちゃんじゃない?
久しぶり!
うん、そう。葵が「姫」に選ばれたの!
桃花女子にも情報伝わったの?そおー?
あ、葵に代わるね。」
うわっ、由奈だ。
近所に住む幼馴染みで、小学生低学年まではよく遊んだ。
まあ、小学校高学年から中学になると、まあ、機会があればちょっと話す程度の
仲で、特に仲良しではない。
可愛い容姿をしているんだけど、おしゃべりで、話し出すと止まらないおばちゃんみたいな
性格なので、苦手だった。
そういえば、あいつ、桃花女子高校に入学してたんだ。
「あ、俺。何、俺のこともうそっちの学校に伝わったの?」
「あ、葵、久しぶり。私、実は演劇部にはいったの。私、中学の時も演劇部だったから、
続けたくてさ。
そしたら、男役制度があったり、関連の男子校に女役制度があったりしてびっくり。
しかも、来週、うちの学校に男子校から女役の訓練のために男の子が来るっていうし、
どんな男の子が来るのかな?って調べたら、葵なんだもん。びっくりしたよ。
確かに、葵は女の子みたいな容姿だけど、でも性格は女の子っぽくないよね。
大丈夫?」
「そういわれると、自信なくなるけど、やるしかないって決めたんだ。
超恥ずかしいけどさ、期待されちゃってるから。
あ、そうだ。
来週、自宅から女装して、女子高に通学するつもりなんだ。
一人で行くのちょっと心細いから、いっしょにいってくれないか?」
「まじ?
男子のカッコで来るのかと思ってた。
自宅から女装して行くの?
すごいなー。勇気あるね。
でも、訓練になるか。
そうだなー、いかにも女装した男の子って感じだと恥ずかしくて、一緒に歩けないから、
ちゃんと準備してね。
そこんところちゃんとしてたら、一緒に行ってもいいよ。
朝、寄っていくから、その時に一緒に歩けるか判断する。
あんまりひどかったら、男子の恰好で行かせるよ。」
「わかった。あと数日あるから、姉貴に鍛えてもらうよ。」
「そうだね。歩き方とか、言葉遣い、仕草とか気を付けてね。
うーん、心配だな。
うまく女装できて、女の子のふりできるのかな?
朝は時間ないから、支度遅れないようにね。」
「おお、任せろ!」
と答える俺は、全く女っぽくなかった。
女装して、学校まで登校するって、すごくハードルが高いと思いますが、
素質のある男子なら、けっこう問題なくクリアしそうです。




