49 学校側へ報告
葵です。
セカンドオピニオンの結果を両親に報告した私は、まず山野先生に報告をしました。
そのあと山野先生に段取りをしてもらい、両親とともに学校を訪問することにします。
父は仕事を休んでくれました。
私の人生に関することですから、かなり気合が入っています。
山野先生、学年主任、教頭先生、校長先生の4名が面談に応じてくれました。
学園主任、教頭先生、校長先生、すべて温和な感じの方々でした。
性同一性障害の診断が下りる予定であること、もうすぐホルモン治療を開始する予定であること、
数か月後には体つきが変わってくること、そして、高校3年生の夏休みには性適合手術(性転換手術)
を受ける予定であることを報告いたします。
校長先生が、
「いやあ、山野先生のクラスの子が山野先生と同じ道を選ぶとは奇遇ですね。
今やLBGTを支援する時代ですから、私たち学校側もできるだけ支援しましょう。
何も心配しないでください。うまく高校生活を送れるようにいろいろフォローしていきます。
うちの学校の生徒には、ちゃんとした教育をしているつもりなので、
変ないじめとかセクハラはないと思いますが、十分気をつけます。
とりあえず、女形として女子高生の姿で通学してるから、すぐには不便はないですね。
生徒たちへの説明は慌てることはないと思います。
年内に説明すればいいと思います。
ホルモン治療の効果はたぶん、2,3か月後でしょうか?
11月から、12月でいいでしょう。
見た目だけではなく、体の内部から女性になっていくのですから、きちんとした説明が必要とは考えています。」
と穏やかに話してくれました。
一安心です。
「私も、長年ここで教師をしていますが、うちの女形制度で本物の女子に見える生徒は山野先生と小出さんだけでした。
実は30年前の生徒の中の女形で
卒業後性転換した人がいるみたいなんですが、その人については私は知らないんです。
この学校にいなかったので。
とにかく、これだけ女性らしいものを持って入れば、うまく行くと思いますよ。
応援します。」
教頭先生は過去の女形の顔を想像しながら意見を言ってくれました。
うーん、やっぱり私は珍しいタイプの男子だったのでしょう。
女子的すぎる男子だったのかもしれません。
学年主任は女性で、30代後半。山野先生と同じで出来る系キャリアガール風でした。
メガネの奥がきらりと光るタイプの女性です。
「山野先生が付いているので安心しています。
女性としての人生観を山野先生はしっかり持っていますから。
単に女性になりたいと思うだけでなく、女性としていかに生きるべきかってことを
学んでいくでしょう。
高校3年生で素敵な女子に成長していくことを期待しています。」
うーん、みなさん、嬉しいことを言ってくれてます。
私も努力しないといけません。
父が、校長先生に尋ねます。
「性転換手術をした後は、女子校の方に転校した方がいいのでしょうか?」
「確かに、それも一つの方法です。
実質、同じ学校ですから。
でも、せっかく、男子校に2年以上いたなら、そのまま卒業した方がいいかとは思います。
姫を引退して新しい姫が決まっても女装して卒業するまで女装でいいですよ。
学校として認めましょう!
周囲の生徒も卒業直前で小出さんがいなくなったら、ちょっと寂しいでしょう。
うん、ただ転校の件も案としては残しておきます。
時期がきて、もしご本人が転校を希望するなら、それはそれで希望に沿うように対処いたします。」
「わかりました。ありがとうございます。
そうですね。普通の生徒と違って、女形の「姫」として、ずっと女装しているわけですから、手術をしたからといって、見た目はそんなに変化しないですね。」
学校への面談のあとは、
私たち家族と山野先生で食事に出かけました。
学校近くのレストランです。
けっこう食いしん坊の山野先生が提案してくれました。
ところで、私の両親は山野先生に興味津々です。
こんなにモデルのような美人だとは思っていなかったようです。
「山野先生は本当にキレイですね。
モデルか女優さんみたいです。
女の私でも、その・・・元の性別が想像できません。
この度は、息子、いや娘のために骨を折っていただき、感謝しています。
これからもよろしくお願いいたします。」
母が心から絞り出すように感謝の意を示す。
「本当にありがとうございます。
山野先生が葵の担任でよかった。
葵の人生の目標として、こんなにいい目標はないと思います。」
父も、頭を下げた。
「そんなに頭を下げないでください。
たまたまですよ。
私は自分の道をたどってくれる後輩がいてくれて、嬉しいだけです。
葵さんは、これからもっと苦労するし、いろいろな挫折を味わうかもしれません。
手前みそですが、私も大変な思いをしました。
偏見はやっぱりあるし、本物の女性とは違うことをいろんなところで知ります。
それでも、この人生を選んでよかったと思えます。
葵さんが辛そうになった時は支えてあげてください。
ぜひ、お願いします。
私も微力ながら、力になれたらと思います。
それから、葵さんにはお芝居でもがんばってもらいますし、
受験だってあります。
大切な高校3年生の夏休みはたぶん性転換手術でだいぶ時間を取られてしまうと思うので
早めの受験勉強が必要でしょう。
そのためにご両親のサポートは必要ですよ。」
そうだった、受験勉強もあったんだ。
勉強は手を抜けないなあ。
できるなら推薦で合格したい。
一生懸命勉強して、いい成績を残さないと。
大学はスムーズに女子大生になるんだ。
がんばらないと。
それにしても、夏休み中には板谷君にはカミングアウトしておきたい。
どうしても。
なぜ、板谷君かって?
うーん、なんでだろう?
敢えていうなら、一番仲良しだからかな?
どう思われるかわかんないけど、板谷君なら応援してくれる気がする。
どんなことがあっても友達でいてくれる気がするんだ。
ショックは受けるかもしれないけど、それでも応援してくれるはず。
祐希も仲良しだけど、板谷君は特別なんだ。
それにしても、ホルモン治療で体型や肌の質が変化していくって、すごく楽しみだけど、
怖い気もする。
油断すると太るっていう話だし。
注射するから、経口摂取のように肝臓には負担を与えないらしいから、そこは安心だけど。
ダメダメ、勇気をもって、治療にのぞまないと!
がんばるぞ!




