48 山野先生に報告
ホルモン治療を開始する目処がついた私は、家族に報告後、すぐ山野先生に電話しました。
ジェンダークリニックに行くことは報告してましたし、その後の経過や私の考え方も折に触れて話していたので、ためらいはありません。
「先生、私、女の子になること決めました。
精神科医のセカンドオピニオン、合格したみたいです。
審査みたいなものがあるようですけど、もう、ほぼ決まりです。
近いうちにホルモン治療を開始して
高校3年の夏休みには性転換手術をしたいと考えています。
あの・・・
いろいろと相談に乗ってもらってありがとうございました。」
「そうなの?
おめでとう!!
よかったわね。
ついに女の子のなる道を踏み出すのね。
ふふふ、きれいになれるわよ!
体の感覚が全然変わるから。」
「はい、期待してます!
今の中途半端な状態から一刻も早く抜け出したいんです。」
「まあまあ、慌てないで。
ホルモン治療を開始すると筋力が落ちたり、太りやすくなったりすることも忘れないでね。
いいことばかりじゃないんだから。
それから・・・
今でも多少感じるでしょうけど
男性の視線が怖くなるかも。
男性は 女性を値踏みするから。
本物の女性に近づけば近づくほど、男性の視線を感じると思う。
あと・・・脅かすわけじゃないけど、万一男性に襲われたら、男性の筋力に逆らえなくなるよ。
夜道の一人歩きはやめてね。」
「そ、そうですね。
今までだったら男の筋肉があるから、女の子と間違われて襲われても
力いっぱい暴れれば逃げられると思ってたけど、
そうはいかなくなるということですね。
こわいな・・・
気をつけます。
あ、そうだ。
学校側に説明して、許可を受けたいんです。
できれば、女形を引退しても、女子の制服での通学を認めてほしいし。」
「うーん、なるほどね。
女形の内はよくても、女形を引退したあとも、女子のかっこでいられるか?って心配してるのね。
その点なら心配しなくてもいいかな?
私は、なんだかんだ言って、最後まで女子の制服で通いとおしちゃったんだ。
前例ありで大丈夫だと思う。
私の方からも学校側に説明する。
あと、ホルモン治療ね。私の時は、学校に黙ってたけど、小出さんは私より治療開始が早いから、
ちゃんと報告しておいた方がいいと思う。
うん、校長先生、教頭先生、学年主任に報告するから、ご両親と一緒に学校に来てください。
来てもらう日時は調整して連絡するね。
私の時代と違って、LGBTを支援する方針があるからそんな騒ぎにはならないと思うよ。」
「うわあ、先生の存在が大きいです。」
「そう?
後輩の役に立てるなら、すごくうれしい!
道を開いた感じかな?
これからはLGBTの生徒増えそうだから、学校側も態勢整備しないとね。
あ、女性化した男性としてのアドバイスをしておくね。
女の子になるのが目的じゃないんだよ。
今だけでなく、20代、30代、40代、50代、60代とどんな女性として、生きていくか
をイメージしてね。
私たちは、母にはなれない。
でも、大人の女性にはなれる。
年をとっても、輝けるように、年を取った自分をイメージして、今から備えていくことが大事。
場当たり的にならないようにね。
その方が素敵な人生を送れるような気がする。
私もまだ20代だけどね。」
「そうですね!
なんか、わかる気がします。
女の子になったらそれで人生の目標が達成するわけじゃないんですよね。
そうだ、私も、先生みたいな素敵な旦那さんを見つけたい!」
「ふふふ。
ぜひ、見つけてね。
もしかしたら、今の学校で見つけられるかも。
私みたいに。」
「どうでしょう?
とにかく、がんばります。」
電話を切ったあと、私は思います。
近くに人生の先輩がいてよかった。
山野先生が目標になるし、指針になるもの。
私は、ふと思いついて、姿見の前に立つ。
そして、服を脱いで、裸の体を鏡に映す。
細くて、華奢な体。
色も白い。
でも、完全に男性の体だ。
丸みはないし、骨ばってるし、もちろん、胸やお尻に脂肪はついていない。
ある意味軽くて動きやすい身体。
この体とも、もうすぐおさらばなんだなあと、ちょっと寂しくなる。
胸やお尻に脂肪がついたら、体が重くなるのかな?
胸とお尻におもりを付けた感じ?
走る時に邪魔になるんだろうなあ。
他人の視線が気になるだろうなあ。
今でも、女装して女性のふりをしているから、視線を感じることはあるけど、
実際におっぱいや大きなお尻があるわけじゃないから、全然平気だ。
でも、本物のおっぱいや大きなお尻ができたら、その視線をすごく嫌に感じるかもしれない。
その時に女性になったことを実感するんだろうなあ。
あと、股間か?
これは高校3年に予定している手術までは存在するけど、ホルモン治療の影響で、
機能は失われるし、小さくなっちゃうだろうなあ。
ううっ、ごめんね。私のムスコさん!
でも、生まれ変わるんだ。仕方ないよね。
あと、髪の毛かあ。だいぶ長くなったけど、まだ、長めのボブだなあ。
早くロングヘアにしたいなあ。
そうだ、エクステ(人毛の付け毛を接着して、髪の長さを伸ばす方法)という手があるって話だった。
そろそろ、やってみようかな?
お母さん、お姉ちゃんに相談しよ。
やっぱりロングヘアにした方が、女の子っぽいもん。
あ、裸だった。服着よう。
服を着た時に、姉が部屋に入ってきました。
「ついにホントに妹になるのね。
なんか、すごく楽しみ。
手術したら、いっしょに温泉とか入れるね。」
「それは、まだまだ先だよ、お姉ちゃん。
まだ、おっぱいも膨れてないし。
裸になったら、全然男だよ。
胸ぺったんこ。
これから、おっぱい膨れてきたら、走る時とか大変そうだなって思ってたんだ。」
「そりゃ、あるね。
私みたいに、Eカップなくても、胸がある程度できると、いろいろ邪魔になるんだよね。
でも、女性の象徴だから、愛おしくなるよ。
ふふふどれだけ大きくなるかな?」
「もしかしたら、Aカップどまりかも。Aカップにもならなくて、豊胸手術する人もいるって。」
「まあ、小さかったら、小さいなりに、邪魔にならなくていいかもよ。」
「やだーっ、せめてBカップほしい!
男の子はある程度はあってほしいと思うよ。」
「へへー?男の子の気持ち気になるんだ?」
私は、その時一瞬思った。
板谷君は女の子の胸の大きさを気にするのかな?って。




