47 セカンドオピニオン
7月末、祐希のお母さんの藤原梓医師から紹介され、
もう一人のジェンダークリニックの医師の診察を受けに行きます。
先生から事前に紹介先について電話連絡がありました。
「紹介先が決まったから、早いうちに行ってね。
書類関係は全部コピーして、相手の医師に郵送してあります。
また、電話でも連絡とって、細かいニュアンスを伝えてあるから心配しないでね。
担当の医師の名前は草野優佳医師。30代前半の独身美人女医よ。
私より10才くらい若いの。
葵ちゃんみたいな若いMtFの診察するのは初めてみたいだから、すごく喜んでた。
彼女はきれいなニューハーフが好きなの。
葵ちゃんに会うのすごく楽しみにしてた。」
「そ、そうですか?
前にもそんな話聴きましたけど、変な人ですね。
いたずらとかされませんよね?」
「ははは、大丈夫。ちゃんとしたお医者さんよ。ニューハーフはプライベートで好きみたいだから
心配しないで。」
変な人じゃないならいいかな?
それにしても、女医さんが多いなあ。
女性になりたい相談はおじさんのお医者さんにするのって抵抗あるから、女医さんが増えているのかも
しれない。
そして、診察の日がやってきました。
梓先生のお話によれば、1回で診察というかカウンセリングは終わるって話。
医師が納得できなかったり、迷ったりすれば、2回以上診察するみたいだけど。
行ってみたら、ジェンダークリニックは草野医師の父親が院長で、優佳先生がサブの医師でした。
60前後の男性医師が担当にならなくてよかった。
診察室に通され、草野医師に対面します。
うわっ、驚いた。女優さんみたいにきれいな女の人。
梓先生も美人だけど、40代後半だから、それなりに大人って感じだけど、
草野先生は、20代って言ってもいいくらい若い美人。
とてもお医者さんなんて見えない。
「こんにちは、お待ちしてました。
藤原先生から資料はもらっているから、大体のことはわかっています。
それにしても、普通の女子高生にしか見えないわね。
うん、街を歩いていても全然わからないレベルね。」
そうです。私は女子高の制服で来たのです。
やっぱり、それが、一番いいかな?って思ってるので。
「24時間女装してるって、資料に書いてあったけど、なるほどね。
もう、身振り仕草がもう板についているわね。
今でも可愛いから、ホルモン治療したら、とびっきりの美少女になりそう!
すごく、楽しみ。
それで、女の子になることについて、悩みとか戸惑いとかないの?
もう、資料の分析はしているし、あなたの実物を目の当たりにして、
私としては、ゴーサインを出す気持ちは満々だけど、
悩んでいるなら、相談にのりますよ。」
「まったく、悩みはありません。
もう、女の子になるって、決めました。
心の中には一点の曇りもありません。」
「子供を作ることができなくてもいいの?
後戻りできないんですよ。
あと、一生女性ホルモンのお世話にならないといけないから、いろいろ不便だよ。」
「そういう負の面もすべて理解しています。
苦労してもかまいません。
人生は一度しかないし、若いうちに女性になりたいんです。」
「うわっ、見事までに、人生を決めちゃってるのね。
わかりました。
セカンドオピニオンも合格です。
性同一性障害ということで診断を下しますね。
後は学会の審査会があるけど、藤原先生と私が決めたならもう間違いありません。
来月のお盆前からホルモン治療開始しましょう。
私のところで、注射してあげる。
内服する方法もあるけど、注射の方が、内臓に負担を与えないからいいと思う。
パッチを使うという手もあるけど、注射にしましょう。
体の変化は私の方で、観察しますからね。
いろいろアドバイスしてあげる。
とびっきりの美人になってくださいね。
あなたならなれるわよ。」
ニコッと笑いながら、診断を下す優佳先生。
それこそとびっきりの美人である優佳先生にそう言われると、うれしい。
「あの、よろしくお願いします。
私、キレイになりたいんです。
先生、きれいなニューハーフ好きなんですよね。」
「えっ?藤原先生、そんなこと言っちゃったの。
困ったなー。
確かにそうだけど、葵さんは、ニューハーフっていうより、普通の女性として、
美人になれる素材だよ。
だって、もう16才なのに、あまり第二次性徴が進んでいない感じがするし、
細い肩幅と細い腰をみると、男性の痕跡を残さないで、見事な女性に変身できそうだもの。
うん、がんばりましょう。
あとは、食事とか、エクササイズとか、声の出し方とかいろいろ美人になるための
小技があるから、教えてあげる。
確かにニューハーフさんの知り合い多いから、いろいろ教えてあげられるわね。
あっ、そうそう。
学校側には早く説明して了解を得てね
それからでないとホルモン治療開始できないから。
学校が反対しちゃうとホルモン治療は保留になっちゃいます。
女形として学校に行ってるから、ふつうの高校生MtF(女性化を志す男性)と違って、今は問題ないけど、
体が本格的女性体型になる数か月後に問題になっちゃうとまずいから。
ちゃんと話しを通しておかないと。
あと、女形をやめても女装を続けることができるか?って問題もあるよ。
そのへんも相談して了解得てほしい。
系列の女子高に転校するということも考えておいた方がいいかも。」
「はい、ちゃんと学校には相談しておきます。
確かに、体の変化がわかってから申告するのはおかしいですよね?
事前に報告します。
けっこう、先進的な学校なので、問題になることはないでしょうけど、
細かい不都合がいっぱい考えられますね。」
「じゃあ、帰ったら、すぐにご両親に話して、学校に相談に行ってね。
学会の審査はあっという間に通すようにするから。」
「お願いします。」
「それにしても、可愛い制服ね。
羨ましい。
私って、県立の進学校で、スカート丈けっこう長かったし、だいたい地味な制服だったし。
着てみたいな。」
「先生なら、絶対似合いますよ。
私、姉のお古も持ってて、もう一着あるから、先生も着てみますか?
二人で、一緒に制服姿で歩きますか?」
他人が耳にしたら、たぶん30才くらいの女性をコスプレさせるのは無理があると思うでしょうけど、
私は本気で似合うと思ったのです。
そのくらい、キレイで若いお医者さんでした。
「まあ、嬉しいこと言ってくれるのね。
考えておきます。
私と友達になっちゃう?ふふふ。」
お茶目なところも、十分若さを感じさせる先生でした。




