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43 ダブルデート続き

葵です。


私と、祐希、板谷君、尾崎君は遊園地につきました。


千葉にある大混雑する夢の国ではありません。


そこそこ混雑するけど、街の真ん中にあって、いつでも行ける便利なところです。


4人でアトラクションに乗ります。


最初は私と祐希、板谷君・尾崎君という二人組でアトラクションに乗るパターンだったんですが、

途中から、私と板谷君、祐希と尾崎君というペアになります。


尾崎君が強引にその振り分けを行いました。


尾崎君は祐希のことが気に入ってるみたいだから、何となくわかります。


板谷君は可哀そうだな。私みたいな偽物女子と一緒で。

思わず、板谷君に言ってしまいます。


「ごめんね。ペアの相手が私で。

偽物の女の子だと盛り上がらないよね?」


「そんなこと気にすんなよ。

男同士の方が気楽だぜ。

やっぱり、男同士のほうが気楽に何でも話せるからな。

俺が、藤原と二人きりになったら、緊張して何しゃべっていいかわからなくなるよ。」


「そう・・・」


男同士って言われちゃった。ちょっと悲しい。

間違いない事だけど、女装して、オシャレしてるのに、男って言われるのは・・・きつい。

板谷君、言葉を選んでほしかった。

元気がなくなる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


板谷翔です。


遊園地で、二つのペアになって、アトラクションを楽しんでたら、俺のペア相手の小出が

急に落ち込んじゃった。

こりゃ、まずい。

原因はわかっている。

葵に対して「男同士の方が気楽でいい」って話したからだ。


小出は、別に性同一性障害ではないけど、女形で頑張ってる。

女に見られるよう、一生懸命努力している。

その葵に、男同士っていう言葉は不適切だったかも。

このペアの組み合わせに不満はないということで、使ったんだけど、

まずかったかなあ。

でもなあ、女の子に見えるとか、他の女の子と比べても可愛いなんて

言いにくいよ。実際そうなんだけど、そんなこと言うと、変な気分になっちゃいそうで。

俺、普通の女子が好きだからなあ。

ホモじゃないんだ。

でも、いまのところ、恋愛対象がいない。

毎日、通学の時、女子校の女の子いっぱい見るけど、イマイチときめかない。

正直小出の方が可愛くて女の子っぽいからかも。

うーん、倒錯の世界だ。


そうだ、とりあえず小出には元気になってもらわないと。

とりあえず、女の子に見えるっていうこと、可愛いっていうことを言わなくちゃな。

オシャレしてるし、ヒールのある靴を履いているし。

よしっ。まずは二人っきりになるか?

藤原、尾崎の前で、小出を褒めるのは気が引けるし、

別れて行動したほうが、尾崎も喜ぶだろう。

尾崎は藤原と仲良くなれるチャンスになる。


「おい、尾崎、次はどれに乗る?」


「俺は、そこのアトラクションを試したい。」


「あれか?俺はそのタイプは苦手だから、あっち行って小出と観覧車乗るわ。俺、観覧車好きなんだ。

小出、付き合ってくれるか?」


「え?あ、いいよ。」


「よし、決まり。

じゃあ、1時間後に、あの、売店で待ち合わせよう。お互い乗りたいものを試そうぜ。」


「わかった。1時間後ね。」


「葵、観覧車、楽しんでね!」


「うん。」


俺は、小出を促し、観覧車乗り場に向かった。

まだ、ちょっと元気ない。

よし、ここは大げさにやるか。尾崎と藤原が見えないところに来たな。

「小出、何かこうやって二人で歩くと、俺たちって高校生カップルに見えそうだな。

せっかくだから、恋人っぽくやるか?

俺、彼女いたことないから、練習させてくれ。

小出は女の子にしか見えないから、やってみたい。」


「えっ?」


俺は、小出の手を握った。おっ、こいつの手、ちっちゃい。可愛いな。


「ええっ、ちょっと・・・。」


「いいだろ?練習だよ。可愛い小出と練習したいんだ。

どうしても嫌だっていうなら、やめるけど。」


小出は顔を真っ赤にしていた。


「別にいいけど・・・つまり、デートの練習・・・恋人の練習・・・ってことだよね。」


「うん、そういうこと。

じゃ、仲良くやろうぜ。」


俺は、初々しいカップルに見えそうだなと思いながら、小出の手をしっかり握りなおした。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


葵です。


びっくりしました。


板谷君は私とペアになって、男同士っていったくせに、

二人きりの状況にするし、可愛いからデートの練習をさせてくれって言って、

私の手を握ってきました。

完全に高校生カップルのデートの状況になりました。

ちょっと恥ずかしい。

しかも、並んだ観覧車は若い男女のカップルばかり。

家族連れもいますけど、圧倒的にラブラブカップルばかりです。


前のカップルは男性が女性の腰に手を回していて、ベタベタしてる。

うわっ、今にもキスをしそうなほど、見つめ合ってる。

見てて恥ずかしくなる。

その前のカップルは女の子が男の子の腕に腕を絡ませて、おっぱいを腕に押し付けてる。

もう、好きで好きでたまらないって感じ。

なんか、ここに私たちいるの場違いだよ。

そう、思ったときでした。

板谷君がつないでいた手を外し、その手を、前のカップル同様に、私の腰に回しました。

ひゃーっ、恥ずかしい。

練習だってわかってるけど、ここまでやるの?


「ここの観覧車なら、東京一望できそうだな?やっぱり来てよかった。

二人で、いい景色見られるぞ。」


板谷君は冷静を装ってるけど、けっこう大胆だなあ。

ホントに、彼女いたことないのかな。

けっこうかっこいいから、中学の時モテただろうに。

今、好きな女の子いないのかな。

その気になれば、彼女できそうだよ。


私たちの番がやってきます。


待望の観覧車です。


私が先に座り、板谷君が私の横に座ってきました。

向かいに座るのかと思ってたので、ちょっと驚きます。


「このほうが、同じ景色見られるだろ?」


そして、観覧車が昇りだすと、板谷君は私の肩に手を回してきました。

まるで恋人みたいです。

わーっ、こんなことされると、本物の女の子になった気分になっちゃうよ。


さすがに私は言いました。


「板谷君、初デートの時に、そこまでするの?

さすがに、最初からそんなに馴れ馴れしくイチャイチャしないでしょ?」


「おっと、言われちゃったか?前の二つのカップルの真似をしてみたかったんだ。

前の二組も、同じ椅子に座ってたからな。

それにしても、小出は小柄で細いから、抱き心地いいな?

うん、恋人にはちょうどいいサイズだ。」


板谷君は肩に回した手を戻そうとしません。

私は、ちょっと恥ずかしいと思いながらも、男子に愛されている女子の

気分を感じてしまいます。

でも、言わないと。


「もーっ!

練習だから、いいけど。

本物の女の子とデートするときは、相手の気持ちを考えて、行動してね。

初デートだったら、手もつながないカップルいると思うよ。

そんな感じの若いカップル、さっき見たよ。

それから、恋人のふりするなら、葵って名前で呼んで!

小出って言われるとカップルっぽくない。」


「わかった。じゃあ、俺のことは翔って呼んでくれ。」


「じゃあ、恋人モードの時は、名前で呼び合うってことね。」


私は口を尖がらせながら、表面上だけ不機嫌な顔で言います。


あれっ?何だか嬉しい!さっき落ち込んだのに楽しくなってます。

恋人ごっこなんだけど、肩抱かれて、名前で呼び合うこと決めて、

気分が変わりました。

私、女の子として扱われてるんだ!

やっぱ、嬉しい!



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