39 生徒会の菅原君
葵です。
7月になって、最近、クラスでは私と板谷君、尾崎君に加え、菅原君ともよく話すようになります。
菅原君のフルネームは菅原直人。
別に演劇部の人間ではありません。
生徒会の役員をやっています。
来年には生徒会長を目指すという統率力・行動力のある男子で、クラスでも中心人物です。
容姿も、ちょっと凛々しい感じで、意思の強い目は特徴的。
なぜ、演劇部の3人と仲良くなったかというと、彼は演劇が好きなんです。
けっこうオタクかな?
お姉さんが、大学で演劇をやっていて、中学生の時に、ミニシアターで生演劇をやっているのをみて、その臨場感にはまってしまったようです。
自分で演劇をやろうとは思わないようですが、時々演劇を見に行くのを趣味にしているようです。
あと、彼にはいかにもオタクっぽい趣味があります。
二次元の美少女が好きなんです。
「リアルな女子は嫌だ。リアルな女子はわがままで、気が強くて、けっこう意地悪だ。
俺は、二次元のアニメ声をだす美少女で満足できる。」なんて、ベタな二次元オタクだったりします。
中学の時に、女の子に手痛いトラウマを背負わされたようで、凛々しい容姿からは想像もできない感じなんです。
菅原君は朝、電車の中でも会います。
私はいつも由奈といっしょに学校の最寄りの駅まで一緒なのですが、電車の中で会うと、
軽く挨拶をします。
ある日、菅原君とあいさつを交わしたあと、由奈は「誰誰?」って私に聴いてきました。
由奈は私の演劇部の仲間である板谷君や尾崎君に通学中に会っても関心を示さなかったのに、
何故か菅原君には関心を示したのです。
「あ、菅原君だよ。菅原直人君。
同じクラスなんだ。
生徒会の役員やってる。クラスのリーダー的存在だよ。
けっこう、運動神経もよくて、スポーツも運動部の人たちと同じくらいできるよ。」
「そ、そう・・・
彼女・・・とかいるのかな・・・」
由奈は、急に恥ずかしそうな顔で恐る恐る私に聴いていきました。
「ええっ?いないと思うけど・・・」
私は、だって二次元オタクだよ!と言葉を続けそうになって、抑えます。
そんなこと、女の子に言えない個人情報です。
しかも菅原君は気の強い女の子が苦手。
由奈はどちらかというと気の強いほうです。
菅原君の情報提供は最小限にとどめておこう。
「そう・・・」
由奈はちょっと安心したような顔になり、それ以上は私に聴いてきませんでした。
あれっ、恋しちゃったかな?それとも、今まで何回か見かけているはずだから、恋に落ちていたかな?
と思いますが、由奈がそれ以上話さないので、追及はしません。
菅原君は現在、生徒会の広報の仕事をしていて、女子校の生徒会とも連携をしています。
女子校にも時々行きます。
由奈にはそのくらいの情報は与えておこうかな。
あ、菅原君は女子高の生徒会と打ち合わせをするときはどうなんだろう?
リアルな女子は嫌いって言ってたけど。
仕事だから、割り切って、女子と事務的に話すんだろうな。
ちなみに女装している私は、中身が男子ということで、平気みたいです。
菅原君、もし、由奈に好かれたらどうするんだろ?
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柏原由奈です。
毎朝、通学は近所の幼馴染みである小出葵と最寄りの駅まで一緒に行動しています。
葵は本当は男の子なのに、4月から女装して学校に通っています。
でも、全然女装に見えません。
普通に女の子の容姿なんです。
最近では、葵が男の子であることを忘れてる感じで、会話をしてしまいます。
声も、仕草も完全に女の子。
でも、胸は無いし、股間には女の子にはついていないものがあるだろうし、
そういうことを考えると、複雑な気分になります。
とにかく、全然男と感じないので、当然恋愛対象にはなりません。
女友達の感覚です。
で、私の恋愛なんですが、中学時代は男女共学だったので、けっこうモテたんですよ。
実は私は自分で言うのもなんですけど、可愛いんです。
最近は偽物女の葵に負けそうな気はするけど・・・女子としては平均以上の可愛さです。
胸も結構大きいし。
その辺は、葵に対して大きなアドバンテージがあります。
でも、彼氏ができたことはありません。
私を好きになってくれる人と、私が好きなタイプと全然一致しないんです。
私は、女子とチャラチャラしないタイプが好きですね。
いかにも女好きと言ったタイプや、軽い感じのタイプの男子は生理的に受け付けません。
あと、葵をキラキラした目でみる男の子も嫌です。
(何で、私を差し置いて、葵をそういう目でみるの?)
って思っちゃいます。
たまに、会う葵の友達の板谷君はかっこいいのですが、葵をそういう目でみるので、対象外。
そういえば、尾崎君も祐希の話ばかりするので対象外。
ほかの女の子の話をする男子は嫌。
そんな私が気になるのは、時々、朝、葵が挨拶を交わす男子校の生徒。
葵の話では「菅原直人」君っていう生徒会をやってる男子。
容姿端麗で、意思が強そうな目。女性を見ても全然特別視しない感じの雰囲気は独特です。
大体、葵の友人の男子校の生徒たちは、けっこう馴れ馴れしく話かけてきて、いかにも女の子と
友だちになりたいオーラを出してくるんです(葵は板谷君や尾崎君以外にも有名人だけあって、
通学中、いろいろな男子から声をかけられるんです。)けど、彼は違う。
全然女子には興味ないっていう感じなんです。
うーん、いい感じ。
葵のことをキラキラした目でみないし、他の女の子の話もしません。
まさかホモ?
それは困る!やっぱり女子と恋愛をする感情は持っていてほしい。
とりあえず、葵のことを好きな感じではなさそう。普通の男友達みたいな感覚だったもん。
もし、彼女がいなければ、仲良くなってみたいなあ。
女子校入って、葵は除いて全く男子と話す機会なくなっちゃたから、
つまんないもん。
あっ、夏休みに男子校との合同合宿があったけ?
でも、演劇部の男子ってあまり興味ないし。
よし、今度、葵に頼もう。




