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38 葵の日常

葵です。


7月になりました。


私の日常を紹介しましょう。


まずは朝起きたら、ブラを付け替えるとこから一日をはじめます。


えっ?どういう意味だって?


実は女性気分を24時間続けるために、疲れている時を除いて、ずーっとブラをつけているんですけど、寝る時と起きている時は違うブラをつけているんです。


寝ているときはおやすみ用のナイトブラっていう柔らかいブラを付け、起きたら普通のブラを付けてるんです。そこまでするの?なんて言われそうですけど、姉に勧められてやってたら、習慣になっちゃいました。

でも、本当はおっぱいないから、すごく情けないんですけど。


あと、朝大変なのは髪の毛の手入れ。

ブラッシングして、少しでも可愛くなるようにヘアメイクします。

少し伸びてきて、今は中途半端な時期。

早くセミロングくらいにならないかなあ。


制服を着て、幼馴染みの由奈と登校している最中はなるべく女子高生っぽい雰囲気を作ります。


歩き方、話し方、カバンの持ち方、髪の毛をいじる仕草なんかを登校中に見かける女子高生をコピーしながら、毎日進化させていきます。

由奈は


「何か、あたしより、女子高生っぽい!何か負けてる気がする!」なんて、言ってきます。


私は、


「そんなことないよ。由奈みたいな可愛さにはまだまだだよ。」って答えて、由奈の女性としてのプライドを傷つけないように気を使います。

別に嘘は言ってません。

私には、おっぱいは無いし、股間にはあっちゃいけないものがあるし、やっぱり敵わないから。



学校に着くと、私は紅一点になっちゃいます。


これが、最初の内はすごく気になりました。


学校側が、セクハラ禁止令を出しているし、常にクラスメイトの板谷君と尾崎君がそばにいるので、

変な事はされないんですが、男子生徒の視線が気になります。


男子生徒の視線がいろいろチェックしてくるのがわかるのです。


髪型、顔、パッドと下着で作っている胸の膨らみ。

揺れるプリーツ・ミニ・スカートとそこから出している足など、

女子を強調するものすべてを見られているような気分になります。


男だとわかっていても、男子は女子的なものを見てしまうのです。


階段を昇る時は下から覗かれているような気がして仕方ありません。


実際に、クラスメイトの何人からかは、

「小出、ミニスカートの中を階段の下から覗いたけど、意外にパンツ見えないもんだな!」

なんて言われました。

見せパンのスパッツを履いているから、覗かれても大丈夫なんですけど、油断も隙もあったものではありません。


ところで、スパッツを履くのは、パンツを見せないようにするだけが目的ではありません。


男性の象徴を隠すためでもあります。

黒いスパッツを履けば、股間の凹凸は目立たないし、サポーター的な効果で、抑えつける効果があります。


普通のパンツ、すなわち下着のショーツでは、男性的な凹凸を見られちゃう危険性があるから、予防になるのです。


男性の象徴を体内に押し込むという「タック」という技があるんですが、それは体によさそうではないので、私はやりません。


ミニスカートって本当に大変。

女の子気分を盛り上げてくれるのはいいけど、覗かれたら見せパンを履いていても恥ずかしい。

あらゆる場面で、気をぬけません。


でも、可愛い女の子を演じていていいこともあります。


男子生徒からは、大体は優しくされます。

重いものを持ってもらったり、レディファーストみたいな対応をとってもらったり、ちょっと嬉しかったりします。

学校の外でも、一般の方や他校の生徒から親切にされたりしました。

男子の時には経験しなかったことです。


あ、そういえば、通学時に2回ほど、他校の男子から告白を受けてしまって、びっくりしました。

帰りに一人になった時間でした。


私が通っている桃花高校は女子高と同じ駅にあるので、他校の生徒から見たら、私が男子校に通っている

女形とは思いもしなかったのでしょう。桃花女子高校の生徒だと思ったようです。


二人とも、けっこうかっこいい男子でした。

爽やかな男子で、もし私が普通の女子だったら、かなり本気で交際を検討してしまったかもしれません。

そして、私を普通の女子高生と全く疑っていなかったので、対応には苦労しました。


特に最初の男子高校生に言われたときは、頭が真っ白になってしまいました。

「ええっ?あの・・・すみません!」と言って、逃げ出してしまったくらいです。

そのときに、「明日も同じ時間にここにいるから返事をください。」と背中で声が聞こえました。


翌朝、学校で、板谷君と尾崎君に相談して、断るのに一緒に行ってほしいと頼んだら、


「だめだよ。女の子に思われているなら、一人で断らないと。

自分で理由を考えて断ったほうがいい。

もちろん、男だってばらしちゃだめだぞ。」


「うん、俺たちが付いていったら、相手はショックだ。

断るの簡単かもしれないけど、フェアじゃない。

一人で会って、自分の言葉で断ろう。

可愛い女の子として断るんだ。」


そんなことを言われてしまいました。


そっか。そうだよね。

向こうは勇気を出して、告白してきたんだ。

こちらも誠意を示して、考えて断ろう。

そして、女の子を好きになったという気持ちにケチをつけちゃいけない。

正体は隠そう。

もし女装男を好きになったってわかったらトラウマになってしまうかもしれない。


私は、部活のあと、一人で、昨日と同じ時間に同じ場所に向かう。


私に告白した男子高校生は待っていた。

私が来ることを信じていたようだ。

私は、彼の前で立ち止まり、口を開いた。


「私なんかを好きになってくれてありがとう。

うれしいけど、お付き合いはできないんです。

私にはすごく好きな人がいるんです。

ごめんなさい。わかってください。」


私は、ひとつひとつの言葉を絞り出すようにして伝えた。

ちょっと涙が出た。

演技だったかもしれないし、演技じゃないかもしれない。

気持ちを込めれば涙はでるもんだ。


相手の男子は、ちょっと驚いた顔をしていたが、


「ショックだけど、はっきり言ってくれて助かる。

女の子って曖昧に返事する子が多いけど、

君みたいに自分の言葉で、意思をはっきり伝えてくれるとスッキリする。

うん、ありがとう。

告白してよかった。

君を好きになってよかったよ。

じゃあね。

君も頑張ってね。」


辛そうな感じでありながらも、吹っ切れた感じで立ち去る男子高校生。


生まれて初めて、男性に告白されて、断ってしまいました。


(あれっ、私に好きな人っていたっけ?)

ちょっとだけ板谷君の顔が頭に浮かんだけど、

(いつもの仲間の顔が浮かんじゃった。まずいなあ。)

と、その感覚をすぐ打ち消します。


あーあ、男の体なのに、女の子として男子を振ってしまいました。

早く女の子の体がほしいなあ。



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