35 6月の定期公演
高校の演劇部のことはさっぱりわからないのですが、想像で書いています。
男子校で女形とかいて、可愛かったりしたら、男性同士の恋愛も生じるかもなんて思っちゃいます。
葵です。6月の校内定期公演は無事に終了しました。
今回の私は、脇役で、しかも女子高生役で、いつも着ている制服での演技だったので、
楽と言えば楽だったんですけど、緊張しました。
ステージで照明を浴びて、人前で大声で演技するって、ものすごい緊張です。
冷や汗書きっぱなしでした。
コメディだったので、笑いをとらなければいけないお芝居だったんですが、
そこそこ爆笑が起きました。
先輩の演技がとても素晴らしくて、さすがと思った次第です。
大きなミスはしなかったんですが、
先輩からは「まあ、普通過ぎる演技だったな。まあ、度胸試しとしてはよかったんじゃないか?
可愛かったよ。」
なんて、けなされてるんだか、褒められたのかわかんないような評価でした。
1年生の中では、意外にも板谷君の演技が褒められました。
脇役だし、登場時間も短かったんですが、
「演技に迫力がある。」
「目つきがいい!」
「立ち姿が絵になる。」
と、存在感が評価されました。
確かに、舞台での動きにはキレがあったし、台詞にも心がこもってて、
耳に残る感じでした。
コメディの中でまじめなことを言う役だったのですが、
見事にお芝居を引き締めてました。うん、よかった。
尾崎君は、演技は特に評価されなかったのですが、脚本とか、演出とかで、先輩・・・3年生の片桐先輩にけっこう提案してました。僕だったらこうしたいんですみたいな?
入ったばかりの1年生が、先輩に対し生意気そうに提案するのはどうかと、ハラハラドキドキしながら、
耳をダンボにしていましたが、片桐先輩から怒鳴られるようなことはありません。
そのかわり、「できあがったものを批判するのはたやすい。でも、自分が一から作り上げてみないと、
本当の批判はできない。自分でやってみるか?」と皮肉まじりに言われてました。
でも、「はい、自分でやってみたいと思ってます。」と答える尾崎君に先輩は、
「じゃあ、文化祭公演、地区大会の脚本づくりは俺と一緒に作れ!作るの大変なんだぞ。
ここ数年、うちの学校はオリジナル脚本が売りで、コンクールでは評価されにくいというかこき下ろされる
ことが多いんだ。それでも、オリジナルを作ることを我が部は誇りにしているし、俺は好きだ。
オリジナルをやるようになって、コンクールというか大会で全然勝てなくなって、かつての名門も、今は・・・みたいな感じになってるけど、負けるつもりはない。
どうだ?俺は3年だから、今度の脚本づくりが最後だ。
俺の後継者になる勇気があるか?」
尾崎君は真剣な顔で、片桐先輩の話を聴いてました。
「お願いします。
先輩の後釜になりたいと思います。
勉強になるので先輩と一緒に作らせてください!」
「おお、いい度胸だ。
今回は俺に案があるから、基本は俺が作る。
それに対しての肉付けを考えろ。
それで、来年からは自分が一人で作れるようになるつもりになれ。
厳しく指導するから覚悟しろよ。」
「はい。ありがとうございます。」
おおっ、尾崎君、脚本づくりとか演出をやりたいんだ。
すごいなあー。演劇部って、スペシャリストがいると便利だとは思ってたけど、
尾崎君、そういうの向いてそう。
芝居って役者がただ演じればいいってもんでもないしなあ。
いい脚本、いい演出があってこそだもん。
定期公演が終わり、翌日、部室で、今後のスケジュールが部長から発表された。
「これから、9月の文化祭、10月の地区大会でやる芝居の内容について、3年生の片桐さん、顧問の山野先生、そして1年生の尾崎で詰めていく。7月中には台本を書き上げて、配役を決めて、夏休みに入ったらすぐ稽古だ。
小出はヒロインをやる。女形はうちの売り物だからな。
覚悟しろよ。
演技が難しくなるぞ。」
私は、部長に厳しい目つきで指名されて、(うわっ、やばい!ついにヒロインか?)
なんて、ビビッてしまいます。
そんな私の背中を板谷君が叩きます。
「ついに来たな。プレッシャーだけど、負けるなよ。
ここが勝負どころだ。
ふつうの男女共学の学校だったら、ヒロインになる女の子は誰が選ばれるかわからないんだ。
葵はやるべくしてやるんだ。
やりがいがあるじゃないか?
本物の女子以上のヒロインを目指せ!
困ったら、いくらでも相談に乗るし、助けてやる。」
「う、うん。」
ドクンっ。
あ、また、心臓がときめいた。
あれあれっ?どうしたんだろう?
なんで、同じ男子なのに、ときめくんだろう?
まずいまずい。男子にときめくなんてだめだ。
演技のこと考えないと。
でも、いい友達をもった。
板谷君、尾崎君、頼もしい。
次のお芝居については、まだ未完成ながら、片桐先輩がオリジナル脚本を用意していたらしく、
その内容を少しばらしてくれた。
「一応、まだ検討中だけど、次の作品も学園物で行く。
話は大体こんな感じだ。
ヒロインは高校生。
いじめを受けているわけではないが、学校が苦手で、クラスメイトとうまくしゃべれない。
学校に行けなくなり、家にいるか家を出ても、街中でうろつくばかり。
そんなヒロインがある時、街で変わった男子高校生に会う。
ものすごくいい加減で、大ぼらを吹く男子だった。
でも、その男子と関わりをもつ誰もが、幸せな顔になっていく。
ホームレス、妻に先立たれた老人、いじめられっ子の少年、仕事で失敗したサラリーマン等。
ヒロインも、いつの間にか、自分の悩みを克服していく・・・というような話だ。
ずいぶん前に考えたんだけど、女形がいなかったから没にしてた。
男だとちょっとつまんないからな。
近いウチに、何とか書き上げるから、みんな楽しみにしてくれ。
尾崎、この間も言ったけど、手伝えよ。」
「はいっ。」
うわっ、コミュニケーションに難ありの女子かあ?
暗い女の子が、風変わりな男子の影響で明るくなっていくようなお話だから、
二面性とか表情の変化とか大事なんだろうな?
うまく、演じられるかな?
自信ないなあ。
でも、面白そうっ。
思い切り暗い女子から、超可愛い女子に変身できるような演技とかできれば、最高かな?
制服の演技だから、ハイヒールとか履かなくて済む。そこはよかった。
とにかく頑張るしかないっ!
高校生の演劇の大会での劇時間は1時間くらいみたいです。
複雑なものはできないでしょうね。
シンプルなストーリーで、心を打つお芝居がいいのでしょう。




