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34 6月のジェンダークリニック

葵です。


6月上旬、予定通り祐希のお母さんが院長をしているジェンダークリニックを訪問しました。

今回は私一人です。

前回、母親が同道したときに、両親、姉の考え方を説明したので、

私一人での受診でいいことになったのです。


前回与えられた宿題・・・「自分史」・・・何とか書き上げて、

祐希のお母さん・・・藤原医師というか藤原先生に提出しました。


自分はもの心ついたときから、自分が女だと思ってたみたいな、

典型的な性同一性障害みたいには書いていません。


だって、そうじゃなかったんだから・・・


私の今までの正直な気持ちを書きつづりました。


何で女性の体になりたいと思い始めたのか?

女形に選ばれたことがきっかけだし、祐希のアドバイスもあったけど、

それだけじゃなく、根本的な自分の問題がありそうと考えました。

自分の歴史をひも解いて、その謎に迫っています。


ふりかえってみると、

幼いころから、中学生に至るまで自分が可愛いと言われて嬉しく思っていたことを事実として

捉えることができました。


女の子みたいに可愛いと言われ、

戸惑いはあったし、男としては短所かもしれないと感じつつ、

心の底では喜んでたんです。


ちょっと舞い上がるような気持ちになっていたかもしれません。


まあ、男である以上、少しでも喜ぶような素振りはしないように心がけてきました。

逆に不機嫌な顔を見せたり、怒ったりしました。


素直じゃなかったかな?


普通の男の子であろうとしたからなんですけどね。

男が女の子みたいに見えると言われて喜ぶなんてとんでもないと感覚的に理解してました。


また、女の子の服や持ち物がうらやましかったけど、口に出せませんでした。

正直言って、男の子の服より、女の子の服を着たいとよく思ってました。

やっぱり、それも口には出せず、悔しい気持ちでいっぱいになりました。


そして、中学にはいってからは、体格や容姿の面で、男性的な魅力がないことを感じてました。

同世代の女子に全くモテません。

可愛いと言われるだけで、女性から性対象として扱われませんでした。

自分は女の子の方が向いてるんじゃないか?と何度も思いました。

そして、このまま体がたくましく成長しそうもないことも何となくわかってきました。

小柄で童顔の可愛らしい大人の男性?

そうなるのってどうなんだろう?

嫌だなあって考えるようになりました。


そんなことを、自分史に書いたのです。


「自分史」にざっと目を通した祐希のお母さんは、


「なるほど、よく書けています。

正直な気持ちが綴られていますね。

典型的な性別違和とは違うけど、女子になりたいという気持ちがよくわかります。

あなたは、間違いなく、女の子になりたいと思って育ってきたんでしょうね。

それは容姿によるところが大きいと思います。

あなたは、普通の女の子以上に女の子っぽい容姿をしてたから、

それにふさわしい性別を求めてきたという人生だったんでしょうね。

でも、男性としての常識的な対応、世の中の男子が求められる対応もしてきました。

それはしかたのないことです。

女の子になりたいなんて思っちゃいけないという考え方は当たり前にあるんです。


とは言っても、性別を変えたいと思う気持ちがあっても問題ないんです。

容姿にふさわしい性別が人生を明るくすることができるならば、それは素晴らしいと

思いますよ。


それで、男性から女性への性転換治療は、本人の気持ちの強さもあるけど、

やっぱり、似合うかどうか?、家庭環境はどうか?、経済環境はどうか?というところが大事です。

前に言ったけど、似合わない人にはあまりやってほしくないというのが私の見解。

あまり大きな声では言えないけど、ごつい身体の男性、顔が整っていない男性が女性になりたいと

いっても、とても勧められません。

やはり女性の姿が似合わないと男性から女性への性転換は抵抗あります。

その点、あなたは、すごく適していると思う。

間違いなくきれいになるもの。」


「そうですか?

ちょっと嬉しくなってきました。!

私、女の子になりたいって思うことについて罪悪感を感じてました。

何か、そういう気持ちを押さえつけてきたような気がします。

でも、今の話を聞いて、なんか素直な気持ちになりました。

性転換について、前向きな気持ちになりました。

私、おっぱいが欲しいんです。治療を早く受けようかな?」


「ふふふ、あわてちゃだめよ。

早めに結論を出すけど、もうちょっと考えましょう。

7月までに、私の方で結論をだして、性転換するという結論になれば、

8月に別の精神科医を紹介するから、そちらの診断を受けてもらって、最終結論です。

正式には2年間のカウンセリングが必要なんだけど、そんな時間かけてたら男性化が進むから、そこは何とかします。

私としては、女の子になってほしいと思うけど、もうちょっとお話合いをしましょうね。


6月にもう1回、7月に2回、こうしたお話合いをします。7月の2回目の面談で、

私と葵ちゃんの方針が一致すれば、それがここのジェンダークリニックでの結論です。」


そのあと、念のためだけどと前置きしたうえで、


「好きな男の子とかいるの?」


って訊かれました。


「女の子を好きになることは最近なくなりました。

女の子は可愛い子をみると、ああなりたいなあって憧れる存在にはなるけど、

恋人にしたいとかは全然思わなくなったんです。

だからといって、好きな男子がいるかと聴かれると・・・

それはいないと思います。」


私の頭の中に、板谷君の姿が一瞬浮かびましたが、それは打ち消しました。

今の段階では、男子を好きになってはいけないという気持ちがあります。

なぜならば、女性化はまだ検討中だからです。

それに、女性化が決まっても、むやみに男子を好きになったらまずいんじゃないかな?

という気持ちがあります。


「そう?

でも、こんなに可愛かったら、男子校で葵ちゃんを気に入っちゃう男子出てきそう。

告白されたらどうするの?」


「ええっ?

そんなこと想像できません。

そういうことでは女子の気持ちになれません。」


「でも、女形なんでしょ?

男性に告白されたときの演技も必要かも?

断るにしても、受け入れるにしても、女性がどういう対応するか考えておいた方がいいんじゃない。

演技のために有効よ。」


「そ、そういえばそうですね。

じゃあ、告白なんか受けないと思うんですが、勉強のために考えてみます。

女形なんだから、そういう劇も想定しないといけませんね。」


私は、女性としての恋愛への対応の仕方とか全然考えてなかった。


でも、本物の女性に近づくならば、必要な対応力かもしれないと気づかされた。





性転換希望者に対するカウンセリングって、難しそうですね。女性になりたいって思う人すべてをお医者さんは性同一性障害、性別違和(GID)として、診断を下すわけじゃないでしょうけど、精神科医に相談に来ると言うことは女性になりたいという気持ちが半端なく強いわけで、それに対するジャッジは大変だと思います。それに素質の問題もあると思うんですよね。私の小説では、やはり女の子のような容姿を持っている男子を主人公にしています。

ちなみに、街を歩いていて、中高生で、華奢で、顔が小さい男の子を見たりすると、「君、女の子になろう!」って声をかけたくなります(笑)。才能を感じちゃうんです。

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