33 6月公演の稽古
小出葵です。
6月になりました。
もうすぐ、6月公演があるということで、演劇部では毎日厳しい稽古が行われています。
6月下旬に校内で行われる新人全員出演の公演なので、1年生は厳しく指導されています。
私もそうですが、同じクラスの板谷君、尾崎君も芝居は素人なので、先輩から厳しい声が
飛んできます。
「今の、棒読み!」
「また、台詞噛んでるぞ、ちゃんと自主練習してるのか?」
「台詞間違ってる!勝手に芝居を変えるな!」
「動きが遅い!」
私に関しては、
上記に加えて
「女の子はそんな態度にならない!」
「その動き男だぞ!」
「声が低すぎる!」
「そんなんじゃヒロインやらせることなんてできないぞ。女形を辞退するか?」
なんてことも言われます。
まあ、普段は優しい先輩なんですが、稽古中は人が変わったようになります。
けっこう落ち込みますが、仲間がいるので助かります。
部活の帰りに、1年生だけで集まって、愚痴の言い合いや励まし合いがあり、
何とか前に進もうという気持ちになります。
「小出は、とにかく一生懸命であることが大切だと思う。演技が下手であっても、ひたむきにやってる
姿はけっこういいぞ。」
「うん、まあ、下手だよな。でも、やっぱり可愛いし、表情にはいいものがある。
これからだな。」
なんて声があると、心が折れそうになって、やっぱりやめようかな?なんて気持ちになったとき、
もう一度がんばろうと思うようになります。
演技に対する悩みに加えて、女性化に関する悩みも抱えてるので、
心の中が複雑なんですが、
何とか大丈夫です。
そして、さらにたよりになるのは、尾崎君と板谷君です。
尾崎君は「今日は先輩にめちゃめちゃダメ出しされたよ!悔しかったー!
でも、負けねーぞ!このままじゃいられねえ!」とポジティブな雰囲気をつくってくれるし、
板谷君は優しい。
板谷君は私が落ち込んでる時に
何気なく肩を叩いたり、肩を抱いて
「頑張れよ!」とニコッと笑って元気をくれる。
こういうスキンシップは本物の女性だったら嫌がるんだろうけど、
私の場合は板谷君とは男同士の感覚があるから全然平気だし、嬉しい!
とは言っても、他の男子はどうかなぁ?
信頼関係とかキャラとかがあるから
けっこうダメかも。
一応女の子の気分で過ごしてるんだからあまり体に触れられるのは嫌かな。
板谷君限定ということで。
ふふふ。
公演日が近づくと、道具や衣装作り、
告知、ポスターの掲示等でも忙しくなります。
文化祭ではない校内公演なので生徒に宣伝しないと観客は来てくれません。
それに看板の女形である私はまだ見習い中で
今回は脇役です。
情け無いなあ・・・
仕方ないんだけど・・・
私は大工的なことが苦手だったので
衣装作りに励みます。
まあ女形なので、裁縫が得意になった方が
似合うでしょう。
部室にはミシンがあり、先輩に教わりながら
服を作ります。
今回は現代劇なので作る衣装作りはちょっとだけでした。
過去のストックもあるし、それほど負担ではありません。
空いた時間はチラシやポスター作りに頑張ることになりました。
どうやって人を呼び込むか?とデザインやキャッチコピーをみんなと考えながら作るのは勉強になります。
仲良しの尾崎君、板谷君は大工仕事担当です。
尾崎君は苦手そうでしたが板谷君は実に器用でした。
「こういうの、小さい頃から好きだったんだ。」と
腕まくりをしながら、手際よく作業をしているのをみると、女子ならカッコいい!と思うかもしれません。
偽物女子の私もカッコいい!と思ってしまうくらいですから。
「板谷、大道具専門になるか?いい腕してるな!」なんて先輩にからかわれてました。
「いや、オレ、主役級の役者目指します!」
「おお、言うなあ!だったら、もっと演技の練習しろ!」
なんて会話が聞こえます。
私は、もし板谷君が主役級なら私と恋人役もあったりして?なんて思っちゃいます。
ちょっとドキドキするな。
何故だろ?
ところで恋愛の劇とかあるのかな?
休憩時間に先輩に聴いてみました。
「あの、恋愛系の劇もやることあるんですか?」
「最近はやってないけど、以前はやってたみたいだよ。ラブシーンを演じた部員もいたみたい。まあ、女形といっても中身は男だから
ラブシーンって言ったって、抱き合うくらいだけどな。そんでやるのは校内公演の時のみ。
俺たち高校生だからさ。
大会、コンクールで芝居をやる時は高校生らしいものを求められてるから、恋愛系はやらないよ。
でもいい脚本があれば、やるかもね。
爽やかで高校生らしい内容なら。
オリジナルの脚本か、既存の脚本、どちらでもいいんだけど。」
なるほど、プロのお芝居みたいに
ラブシーンがあったら問題になるよね。
やっても校内の生徒限定かな?
やったらドキドキだな。
あ、そんなこと考える前に少しでも
芝居を上手く出来るようにならないといけない。
大体、男性を好きになったことのない私が、恋愛劇とかできるわけないか・・・
それにしても、最近は女の子をみてもドキドキしなくなってきたな。
気持ちを女性に近づけようとすると、女性が恋愛対象にならなくなるのかも。
それに、体も女性にしたいって思い始めたし。
でも、男性を好きになるって感覚はないよね。
今は中性的存在かな?ニュートラル?
でも、女性になりたいって気持ちが強くなると、もしかして男性を好きになる?
そんなことを考えながら、ポスターを校内で貼り付けていたとき、
掲示板の位置が高くてうまく貼り付けられないことに気づきました。
「うーん、椅子でももってくるかなあ?」
「やっぱ、小出はちっちゃいな。どれ、俺が貼り付けてやる。」
突然、後ろから、ニコニコ笑った板谷君が声をかけてきました。
そして、私より身長が20センチ高い板谷君は、ポスターを上手く貼り付けてくれます。
「よし、これでいいよな?
みんな観に来てくれるといいなあ。」
「あ、ありがとう。
私、背が低いから…」
「俺、背が低い女の子は
いいと思う!
可愛いからな!
じゃ、俺は別の仕事があるから、
行くぞ。
まだポスター貼るんだろ?
頑張れよ。」
板谷君は走ってたち去ります。
ドクン!
私の心臓が鳴りました。
ええっ!トキめいたの?
まさか?
私の小説を読んでいただいている皆様。本当にありがとうございます。
本日もがんばって、来週の分の準備と、目標100話に向けてのプロットづくりに励みました。
私の小説は、稚拙でマニアックな物語ですが、そんな物語でも読み続けてくれる方々がいることで頑張ることができます。何とか主人公が高校を卒業するまで続けて行きたいなあって思っています。
応援よろしくお願いいたします。
では、また来週!




