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30 山野先生の過去

「葵ちゃん・・・私も、葵ちゃんと同じだったんだ。

中学時代までは普通の男の子だったよ。

葵ちゃんと違って、身長は170センチ近くあったから、

女形になるなんて思わなかった。

でも、顔が女顔だから、ぜひ女形をやってくれって当時の先輩方に強く言われて、

引き受けちゃったんだ。


で、私も、ハマっちゃうと中途半端が嫌っていうか、徹底的にその道を究めたくなるタイプなんだよね。


単なる女装じゃなくて、最高にいい女になろうって思っちゃって。

特にメイクしたら、その辺の女性より全然きれいになる私がいて・・・

ごめん、自慢しているみたいで・・・

でも、本当にそう思っちゃって、

私も入部後は24時間、女性として生活するようになったんだ。」


「私と同じだ・・・」


「でも、葵ちゃん、私が悩みだしたのは夏休みの終わりごろからだから、葵ちゃんより

遅い。

ジェンダークリニックの相談は1年生の秋からで、悩んだ末にホルモン治療開始したのは高校2年の途中。

本当は2年くらい相談続けなければいけないみたいなんだけど、そこは早めにしてもらった。」


「よく、思い切りましたね。すごいっ!」


「何かね、1年女の子の姿で暮らすと、もう、女の子でいるのが当たり前になっちゃうし、

やっぱり、胸がないこととか、股間についているものとかが、すごく気になってね。

それに・・・

女の子が同性に見えてきちゃって、恋愛対象じゃなくなっちゃったんだ。

だからといって、男性を好きでもなかったから、複雑。」


「そうなんだ。」

旦那さんが続けてくれた。


「俺と秋葉は別に恋愛関係じゃなかった。女性化に関する相談には乗ってたけどね。

僕も同性愛者ではなかったんだよ。

まあ、秋葉をきれいだなとは思いつつも、仲間っていう意識が強かった。

秋葉は性同一性障害者というより、女の姿でいる方が精神的に落ち着く状態になってしまったんだ。」


「なるほど、参考になります。」


再び、山野先生が話し出した。

「ホルモン治療とかは、後戻りできないから、真剣になることが必要だけど、

だからと言って、常識にとらわれていてもだめだと思う。

女が輝くのは若い時なの。

17才くらいから輝き始める女性の素晴らしさを考えると、

高校在学中に、ホルモン治療はしていたほうがいいと私は考えたんだ。

もちろん、親に養ってもらっていたから、かなり反対されたけど。」


「そうですよね。

一生の問題ですものね。

働いて、生きていかなきゃいけないし。」


「まあ、私は教師になろうと思ってたから、性転換しても仕事はできると思ってた。

そして、結婚できるかどうかわからないけど、女性として私を認めてくれる男性が

現れると信じていた。

そこまで考えたよ。

けっこう自信家だったかもしれない。

もし栄ちゃんがもらってくれなかったら、一生独身だったかも。」


「あの・・・念のためにお聞きしますけど、女子校の顧問の福島先生は女性ですよね。?」


「ふふふ、もちろん。

あの子は大学の時に仲良くなったんだけど、

私が元男性ってわかっても全然変に扱わなかった。

ものすごく懐の深い女性。

だから、葵ちゃんのことも心配しながら、応援してるよ。

私も、福島先生も、ここにいる栄ちゃんも相談にのるから、じっくり考えてね。」


「うれしいです。

相談相手が身近にいて、よかった。

すごく精神的に助かります。

女性化を本当に目指すかどうかは、お医者さんや家族とも相談して、決めますけど、

できれば、夏までに決めたいと思います。

もし、女の子の体になるなら、早い方がいいかな?

なんか、ワクワクしてきた。」


「女性化を目指すということはデメリットもあるからね。

今の時代、ネットにいくらでも書いてあるけど。

実際は体験しないとわからないことが多いかも。

精神的にも強くならないと女性化って続けられないよ。」


「わかりました。」


私は山野先生夫婦と話をしながら、ドキドキ、ワクワクが止まらなくなっていきます。


すごいっ、ものすごく参考になる先輩が身近にいたなんて、何て幸運なんだろう?


そして、お二人のいろいろなエピソードを教えていただき盛り上がったあと、

私は旦那さんの車で自宅まで送ってもらいます。

夢みたいな時間でした。

何か、自分の気持ちがすごく前向きになっていくのを感じます。


それにしても驚いたなあ。

山野先生が元男性だっただなんて。

しかも、あんなイケメンの男性と結婚したなんて・・・




部屋に帰って、服を脱ぐ私。


今日は先生の旦那さんにも会うってことで、思い切り可愛い服を着ていきました。

可愛いブラウスを脱いで、スカートを脱いで、下着姿になります。


うーん、やっぱり出るところ出てないなあ。

不自然だなあ。

やっぱり、胸の膨らみ、お尻の丸み、ウエストのくびれ、肌の柔らかさは

自分にはない。

単に小柄でやせっぽちの女性もどきだ。


やっぱり、女性の体が欲しいかなあ。


でもなー。うーん、じっくり考えるか?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



山野栄作です。


妻である秋葉がちょっとお酒を飲みながら、いろいろ後悔?みたいなことを口に出している。


「ついに、葵ちゃんに正体ばらしちゃった。これでよかったのかな?

まるで、女性化を勧めるようなこと言っちゃったような気がする。

私の時と同じことをする必要はないんだよね。

一生の問題だし、家族のこともあるから、難しいなあ。」



「大丈夫、勧めてなんかいないよ。

葵ちゃんは、ちゃんと自分で考えると思う。


確かに可愛いけど、体の線は男の子だったね。

俺、あっちゃんの相談に乗ってきた経験あるから、男女の違いって

わかるんだ。

葵ちゃんが、今のままでは満足できないと思う気持ち、わかるな。

本物志向だと、偽物のままじゃいられない。」


「まあ、ホルモン治療して、性転換手術をしてもしょせん偽物は偽物だけどね。

でも、できるだけ近づくっていうのは大きいんだ。

戸籍も変更して、やったーっていう達成感はあった。

あと、女として、結婚できたしね。

ウエディングドレスを着れたときは涙が出ちゃったし・・・」


「なるほどね。

最後は自分が納得できるかどうかだね。

葵ちゃん、そこは自分で決めるしかない。

もっと可愛くなりたいと思うかどうかだなあ。」


「うん、いっぱい悩んで、自分で結論出すよ。あの子は。」


よかった。

秋葉の後悔はなくなった。

これからも相談に乗れるな。


個人的には、葵ちゃんにもホルモン治療、性転換をしてほしいけど、

どうなるやら。


あと、好きな男性がいたりすると、違うかも。


俺と秋葉は、高校時代に恋愛関係じゃなかったけど、お互いに惹かれていた

から、方向性が決まったのかも。


男子校だからな。

好きな男ができても不思議ないな。

こりゃ、フォローしたくなってきたぞ!

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