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22 葵、女子高研修最後の日

「小出さんの女子高研修も最後の日です。みなさん、男子がクラスにはいって戸惑われたこともあったでしょうけど、小出さんは無事に最終日を迎えました。ありがとうございました。じゃあ、小出さん、挨拶をしてください。」


「はい。みなさん、男子なのに、女装した私に・・・授業を一緒に受けさせていただき、ありがとうございました。

変な気分だったと思います。

おかげさまで、リアルの女の子の話し方や仕草や声の出し方を学ぶことができました。

実はけっこう真似させていただいています。

誰の真似をしているかは内緒ですけど・・・。

ごめんなさい。

それから、私の入っている演劇部は男子高と女子高の交流が活発です。

だから皆さんとお会いする機会が色々とあると思います。

楽しみにしています。

それから・・・

1年生の最後の方で、もう一回女子高研修が1週間くらいあるので、そのときもよろしくお願いします。

本当にありがとうございました。」


拍手が沸き起こりました。

「いつでも、遊びにきなよー、葵!」

「可愛いよ。葵!」

「女の子にしか見えないよ!葵。一緒にお風呂入ろう!」

「彼氏つくりなよー!」

いろいろな声が飛びます。

ちょっとふざけた声もありますが、みんな親しみのある感じでした。


私、小出葵は女子高で3週間過ごすという、研修というか訓練を今日で終えます。

女子だらけのところで男子一人でいるのはアウェイ感が半端なく、最初は息が詰まる気がしましたが、

みんな暖かく接してくれて、いじめられることもなく、無事に過ごせました。

クラスのみんなに感謝です。


そして、

放課後、私はクラスのみんなに囲まれます。

けっこう、みんなに抱き着かれました。

泣いてる子もいます。

「葵がいなくなるの寂しい。」

「遊びに来てね。」

「SNSで連絡とろうね。」

「今度、一緒に、甘いもの食べに行こうよ。」

ほぼ、同性の感覚で接してもらってます。

すごい進歩です。


結局、いろいろな約束をすることになってしまいました。

何人かとは、遊びに行く約束とかもしてしまいます。

うわっ、ノリで約束したけど、約束実行できるかな?

女友達増えたのは嬉しいけど。


でも、恋愛対象じゃないんだよね?

クラスの女子は私のことを全然男子と思わなくなっちゃってます。


そして、部活に出た私は最後の練習に参加し、そこでも、演劇部のみなさんとの別れを惜しみます。


福島先生には、いろいろ相談に乗ってもらいました。

より、リアルな女の子に近づきたいという悩みを相談していて、結局、福島先生は

それは無理だから、演技力でがんばりましょうという返答をいただきました。

実は女性ホルモンによる治療を考えますなんて、言えませんでした。


しかし、部活の時間の最後の方で、福島先生が私をこっそり呼び、

小さな声で話しかけてきます。


「実は、私の知ってる演劇部出身の人で、あなたみたいな悩みを持ってた人いるから、

その人に話しておくわね。

その人がもしかしたら、相談に乗ってくれるかも。」


「そんな人がいるんですか?今はどうしてるんですか?」


「ちゃんとした社会人よ。

今度会うと思うから、詳しく説明しておく。

しばらく待っててね。

ごめんね。私じゃ、相談に乗り切れなくて。

でも、これからも、いつでも相談していいよ。

勉強の話でも、恋の話でも相談に乗るよ。

私のスマホに電話でも、メールでも、SNSでもいいから気楽に連絡してね。」


「はい、ありがとうございます。」


いい先生だなあ。まだまだいっぱい相談に乗ってほしいから、助かります。


演劇部の部活が終わると、お別れ会ということで、お菓子とジュースで、1時間ほど部室で、

盛り上がりました。


最後に全部員と福島先生の前で演劇部部長である3年生の荒木結愛あらきゆあさんから、今回の研修のまとめと励ましの言葉をいただきます。

そして男子校演劇部とのパイプ役になってほしいと頼まれました。


「小出さん、短い間でしたけど、よく頑張ったと思います。最初の頃に比べるとだいぶ女性らしい動きがマスターできたと思うし、

声の出し方も進歩したんじゃないかな。

でもまだまだ発展途上だから、完璧を目指して努力してくださいね。

あと、男子校と女子校は連携関係にあるから

よろしくね。

具体的には、

毎月 、部長副部長が会う定例のミーティングが1回、

3か月に一度開催の演劇研究ミーティング、

これは選抜メンバーが参加、

夏休み中の合同合宿、

そして文化祭の時にお互いに文化祭公演をPR する取り組みとかいろいろあるんだ。

それぞれに関わってくると思うから

頭に入れといてね。

あなたと藤原さんが両方の部活をよく知ってることになるから、いいパイプ役になると思う。

頑張って くださいね!」


「ありがとうございます。

いろいろ教えてくださったことは忘れません。

今後も女子校の演劇部の方たちとは仲良くさせてください。

これからもよろしくお願いします。」


私は深く頭を下げました。


部員全員から割れるような拍手が起こります。


私は、顔を上げるといつのまにか涙が出てます。


「まあ、泣いちゃダメじゃない。」

私より背が高く、グラマーでおっぱいの大きい荒木部長が私を抱きしめてくれました。

優しいなあ!


うわぁ、ふわふわだ。いい匂いもする!


他の演劇部員も集まって来ます。


みんなもらい泣きをしてくれました。

次々とハグされて、

「これからもよろしくね!」

「ヒロイン役頑張ってね!」

などと声をかけてくれます。

由奈も

「もう、女の子にしか見えない!」

なんて抱きついて来ました。

幼馴染だから、ちょっと恥ずかしい。


帰りはいつも通り由奈と一緒に帰ります。

自宅の最寄りの駅から自宅近くまで

並んで歩きます。


「来週からも、学校のある駅までは一緒に行こうね!

なんか一人だとつまんないから。


そういえば、葵って、何で急に女の子っぽくなったんだろ?

高校になって大変身って感じ。

何かあった?

みんなが噂してるけど

男の子が好きなの?」


「別に男の子が好きなわけじゃないよ。

女の子っぽく振る舞うと自分が輝くのがわかったからかな?」


「そうかあ。

男の子は小柄で可愛いくてもメリット

ないもんねー。

うん、いいんじゃない。

男子校の姫!

これから、もっと自分を磨けば

輝くよ!


まあ、お互いに演技力を進歩させないとね。


私も女子校でヒロイン目指すよ!」


由奈はやる気十分でした。


わー、私も負けていられない!



明日も更新します。

平成最後の更新です!

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