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20 家族と相談

小出 葵です。今日は日曜日。


完全女装を開始して、まだ9日目ですが、毎日、女の子のカッコをして学校に通ったり、

東京の繁華街に出たりして、何か気分が変わってきました。


最初は、お芝居で完全に女を演じるための女装訓練と割り切ってましたけど、より本物の女の子

に近づきたくなっていったのです。

なぜなのかわかりません。

見せかけの女子では満足できないっていうのかな?


昨夜、仲良くなった女子高の男役の藤原祐希ちゃんの自宅で、祐希のお母さんの梓さんから、

女性化を勧められて、完全否定できませんでした。

ジェンダークリニックの診察を受けるかどうか考えるように言われてしまいました。


今日は日曜日です。

家族がそろっているときに、女性化についての相談をしなければなりません。


朝食を食べ終わったあと、私は、家族全員に話かけました。


「あのさ、昨日、祐希の家に行って、ご両親に言われたんだけど、

精神科医の祐希のお母さんに、ジェンダー診断受けてみない?って言われたんだ。

つまり、性同一性障害の診断。」


「あれっ?葵って自分のこと女の子だと思ってたのか?

性同一性障害って、生まれた時から自分を女の子と思ってるけど、体が男だから、

違和感を感じるってやつだろ?」

父がずばり指摘する。


「うーん、祐希のお母さんの考えだけど、後天的な性同一性障害もありということなんだ。

つまり、男であることを認めてるけど、女の子になりたい。女として生きていきたいって

思う人もありってことかな?男でいるのが嫌なら、同じだって考え方かな?

正式な考え方ではないみたいだから、

おおっぴらにはできないみたいだけど。」


「なるほど。そういう男性多いでしょうね。

後天的な性別違和っていっぱいいそう。」


「となると、葵は女の子になりたくなったの?」


「うーん、まだわからないんだ。だから、とりあえず診察を受け始めてみるのもいいかな?

って思って。

実際、女装を始めてみたら、女性の姿の方がしっくりきているような気がして。

自分でも意外だったけど。」


「お母さんも、そう思ってたよ。

うん、葵は女の子でいる方が合ってるって感じた。」


「私も、妹ができたって感じがしてた。うん、診察受け始めてみたら?

いきなりホルモン治療するわけじゃないでしょ?」


「本当は診断に2年かけるのが決まりなんだって。二人の精神科医が認めたら、治療開始できるみたい。

でも、数か月で認める場合もあって、そこは抜け道もあるのかな?

とにかく医師の判断によるところが大きいみたい。

まあ、医師に無断で、自分でホルモン剤を輸入したりして、始めちゃう男性も多いみたいだし。」


「そうだな。俺は一応賛成だ。まずは診察を受けて見ろ。

それで、自分が女性になりたいという意識がはっきりしてきたら、女性化もいいだろ。

お前の意思を尊重する。」


「お母さんもお父さんと同じ。女の子になってもいいよ。」


「私も賛成。妹になりなよ。」


私は、全く反対しない家族に驚きました。

それだけ、私の女装が似合っていたということなんでしょう。

ちっちゃくて、華奢で、女っぽい私は、女の子のカッコの方が合うというのは

家族全員の見解だったんです。


「わかった。じゃあ、祐希のお母さんのクリニックに通いはじめてみる。

そして、自分の考えをはっきりさせるよ。

数か月たてばはっきりすると思う。」


私は、どうなるんだろう?と不安な気持ちを持ちながらも、

男として今まで生きてきて、うまく行ってなかったことを

振り返り、人生を真剣に考える機会が来たと思いました。


子供のころから、女の子にモテなかったし、

常に体力的体格的に同い年の男に全然かなわなかったんです。

顔も可愛いと言われるばかりで、かっこいいと言われたことはありません。


女の子になれば、いろいろうまく行くかもしれない。

でも、別に男性を好きになったことないしなあ?


そこまで考えた時に板谷君のことが頭に浮かびました。


いや、板谷君に対しては、友達としての感情しかないはずです。

たまたま、女装姿を見られて、可愛いと言われて家族に冷やかされたから、

ちょっと動揺しただけ。

ちょっと、かっこいいと思うけど。


あ、でもジェンダークリニックでは、好きな男の子いるの?なんて訊かれそうだなあ。

いないって答えるしかないですね。


それより、明日からの女子高での生活がんばらなきゃ。

女の子の中に溶け込むような雰囲気作らないと。

難しいなあ。

だいぶ、女の子たちのリアクションとか、挨拶とか、話し方とか覚えたんだけど、

なんか再現しにくいんです。

あと2週間、できるだけマスターしよう。

あ、演劇の基礎も勉強しなきゃ。滑舌も大事だし、即興演劇も大事だ。




そして、月曜日がやってきました。


また、女子高生だらけの教室に私はいます。


クラスの女の子たちとおしゃべりしてると

「ねえねえ、葵は好きな男の子っているの?そういうかっこしてるの見ると、どう考えても、

女の子が好きには見えないんだけど。」と質問が飛んできました。

元気いっぱいの女子、桑島純華くわじますみかさんです。


「そうなの?やっぱり、男の子が好きだったんだ?」

幼馴染みの由奈が訊いてきます。


「ここ一週間でだいぶ女の子っぽくなったから、来週男子校に行く頃には、心は完全女の子

かも。男子もほおっておかないんじゃない?」

北山文乃きたやまふみのが囃し立てます。


「あ、私、女の子っぽくしてるだけだから。

別に恋愛対象が男子ってわけじゃないんだ。」


「ふふふ、それじゃ面白くない!男の子好きになってよ。」

「うんうん、そうだ。彼氏を作ろう。」

「彼氏ができたら、報告して!」


うわっ、腐女子がいっぱいいます。どうにもならないなあ。

でも、こんなミニスカートはいて、ブラジャーもしてるのに、女の子が好きですなんて

言えないよね?

実際、こんなに女の子だらけなのに、恋愛感情を持つ相手ができません。

どうしちゃったんだろう?不思議!

中学生の時の自分だったら好きな女の子できたと思う。

女性に同化しようと努力してるから、羨むべき対象としか見てないのかも。


「あのさ、私のことはともかく、男の子をみんなに紹介するよ。

男子校の男の子、気にならない?」


「うーん、かっこいい子いるかなあ?」

「同い年だと子供っぽいかな?」

「私、絶対運動部がいい!」


やった!話がそれました。よかった。

それにしても、私は恋愛なんてできるのかな?

男でも女でもない気分です。




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