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17 女子高での日々

小出葵です。


女子高での生活5日目です。最初の1週間の最後の日がきました。


女子高での生活は決して楽しいものとは言えません。

すごく気を使います。


表面的には女性に見える私だけど、15年以上男として暮らしてきたわけだから、

女の子とはいろいろ違います。

さらに普通の女の子は小学校高学年くらいから、第二次性徴で、体つきが変わっています。

生理もあるし。

一緒にいて、違和感がすごくあります。


それに、女子高二日目からの部活の二人一組の柔軟体操は幼馴染みの由奈がつきあってくれてるけど、

やっぱり女子の体はふわふわというかぐにゃぐにゃだってわかって焦ります。


ちょっと、見渡せば、胸の膨らみや腰の括れ、大きなお尻が見えます。

声もアニメ声みたいに高くはないけど、

やっぱり高いキーです。

低い声のように聞こえても、やはり男の声とは違った声質なんです。


また、髪の毛も長い子が多くて、私のおかっぱ頭くらいの長さだと、物足りないなあ。


女の子に化けて潜入しているけどバレバレだ!って気分。

自分が女装した男性って感じがすごくします。

先日、ショッピングセンターで女装して買い物をして、家族と歩き回ったときは

女性に成りすますなんて簡単だと思ったけど、本物の同世代の女子高生に囲まれると

全然できていないと実感しちゃう。


制服着ているときは、スカートが女性らしい雰囲気をつくるけど、ジャージ姿の時は、

女性の体型じゃないのが恥ずかしい。


まあ、何とかやってはいます。

女性っぽい声を出し、女性らしい仕草をして、少しでも女性に見えるように

努力しています。

でも、あと2週間でどこまでできるでしょうか?


それにしても、ブラジャーしているけど、ずれるのが嫌だなあ。

本物のおっぱいほしいなあ。

そしたら、ちゃんと動かないのに。

ホルモン剤でも飲んじゃいたいな。

一時的に豊胸手術しちゃおうかな?

親が許すわけないけど。


私は性同一性障害ではないのにも関わらず、女性の体がほしいと思ってしまいます。


演劇部の部員は親切に教えてくれました。

「女の子はそんな歩き方しないよ。」

「女の子は恥ずかしそうにするんだよ。」

「女の子って泣くのが武器なんだよ。」

って、いろいろ技術的なアドバイスをしてくれます。


うーん、落ち込むなあ。

女の子には程遠いって、考えちゃいます。


部活が終わったあと私は顧問の福島先生に声をかけました。


「先生!ちょっといいですか?あ、由奈、ちょっと待っててくれる?

先生と10分くらい相談があるんだ。」


「わかった。先に着替えて、待ってるね。」


俺は、みんながいなくなった稽古場にしている空き教室で、福島先生に向き合います。


「どうしたの?何かあった?」


「女の子の真似をしてたら、何かわからなくなって。

だって、ぜんぜん体つきとか、顔つきとかが違うような気がするんです。」


「小出さんも、女の子に見えるよ。

可愛いし。」


「最初は、私も、女の子に見えるかなって思ってたんだけど、

自信がなくなってきました。

私にはおっぱいがないし、お尻も小さいし。」


「それはしかたないでしょ?

歌舞伎の女形だって、男性が女性の仕草をデフォルメして、女っぽい雰囲気を作ってるだけ。

それ以上は無理なの。」


「そうなんですけど、不安なのは、第二次性徴が遅れている感じの私が

これからは男っぽくなってしまいそうで、

女役をやるのが困難になってしまうかもと思うと不安で。

最初はまさに、歌舞伎の女形みたいに、男だけど表面上だけ女にみせるという技を

取得すればいいかなって思ってたけど。

なんか、より本物に近づけてみたくなってきて・・・」


「ふふふ、女の子になりたいの?」


「いや、別に性同一性障害ってわけじゃないんです。

性同一性障害って、自分は女として生まれてきたけど、体が男で驚いているってやつでしょ?」


「あら、ちゃんと勉強してるのね。じゃあ、AG、オートガイネフェリアって知ってる?」


「あ、それもネットに書いてありました。

男性が自身を女性だと思うことにより性的興奮するっていうものですね。

「自己女性化愛好症」っていう表現もあるんですよね?

いろいろ議論がある概念?

私の場合は、全然違うかも。

女の子みたいだって言われて育って、嬉しいと思う気持ちもありながらも、

男としての自尊心から嫌がってましたから。

心の底では、それが自分の個性だと強く認識してたんですが・・・

で、「姫」に選ばれて、嫌がっていた個性が実は自分にとって素晴らしい武器だと気づいて、

なら、最高の女性になろうと思って、突然うれしくなって・・・」


「でも、本物の女の子たちと過ごすと、何か違う。今の男っぽい肉体じゃ嫌だなって思ったの?」


「そ、そうなんです。」


「まあ、また来週に相談に乗ってあげる。

土日にゆっくり考えてみたら。

男は男、女は女よ。そのなかで男役、女役って割り切って演技するのが、

役者。

それ以上求めるとなると、違った世界になる。

今日はちょっと考えるのやめた方がいい。

ね。由奈ちゃん待ってるわよ。」


「あ、すみません。ありがとうございました。

また、相談に乗ってください。」


その後、自宅に帰りながら、由奈が心配してくれました。


「なんか、女役のことで悩んでるの?やっぱり声の出し方とか、仕草とか難しいよね。

私も、男っぽくふるまうなんてできないもん。

可愛く見える葵だけど、やっぱり男の子だもんね。」


「そうだよね。」


家に帰って、スマホを見ると、祐希からのメッセージが入っていました。


「1週間お疲れ様。

あした、いっしょに渋谷と原宿に行かない?

葵ちゃんはちゃんと女の子のカッコするんだよ。

私も女の子になる。本来の姿にね。


女の子どうしのデートしようよ!

もう、私は男子制服脱いで、女の子に戻ってる。

すごく快感。

女の子の下着をつけると幸せ。」


いいなーっ。


祐希は、結局は女の子なんだ。

芝居で男を上手く演じようと思ってるだけ。


私の場合、自分が男だって割り切れていない。本物の女の子に近づきたいと思ってる。

24時間女の子の姿でいたい。ブラとショーツも24時間つけていたい。

男の服や下着は不要だ。変態っぽいけど。


なんか、もやもやしたものが収まらないから、祐希の誘いに乗って、明日遊びに行こう。


それにしても、男の生活送ってたら、あんなに可愛い女の子とデートできないよな。

ラッキーかも。

女形になれてよかったかな。

もっとも、祐希は背が高いから

男姿の私とは全く釣り合わないかな?

弟みたいになっちゃうよね。


ちゃんと女性のカッコをした祐希はどれだけ可愛くなるんだろう。

ショートヘアでボーイッシュだけど、スカート履くんだろうな。

楽しみだ。


あ、私は何を着て行こうかな。

お姉ちゃんやお母さんと相談だ。

うーん、忙しい!

悩んでるひまないや。





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