表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/200

16 男子校での祐希

藤原祐希です。


今日から、男子校に通学です。


朝のホームルームで、さっそく担任の山野先生から挨拶をするように求められました。


山野先生、すごく美人。で、私と同じくらい身長がある。

ヒールを履いているから、170センチ後半の高さになっちゃってる!

でも、細くて華奢だから、でかい女って感じじゃない。

うん、山野先生を見習えば、高身長でもいい女になれるかも。


あ、いけない、今は男子の行動を真似するのが優先です。

いい女になるのは無事に男役を務め上げたあとにしないと。


「初めまして。藤原祐希です。名前は本名です。

今、私と入れ替わりに女子高に行ってる、小出葵さんと同様、

男女どちらでも使える名前かなって思ってます。

さて、見ての通り、男子の制服を着てはいますが、すぐ女の子ってわかっちゃいますね。

でも、男子校に3週間通う以上、男子らしさとか、男子の行動パターンとかいろいろ勉強

して帰りたいと思います。お芝居で、どれだけ男の子っぽくなれるか頑張りたいので。

あ、今自分のことを私と言っちゃいましたが、訓練のために、これからは僕と言いますので、

笑わないでくださいね。

では、お世話になります。

よろしくお願いいたします。」


そのあと、拍手が鳴り響きました。

みんな男子は嬉しそうです。

だって、私、可愛いもんね。

でも、それじゃだめだ。どうにかして、男っぽさを覚えないと。


休み時間には、男子が寄ってきて、次々と質問をしてきました。


「祐希ちゃん、どこの中学出身?」「どこに住んでるの?」

「なんで、王子になったの?」「制服、似合うね。」

ちやほやされるのはいいけど、やっぱり女の子扱いだなあ。


そんな中、演劇部の二人、尾崎君と、板谷君は私のことを男扱いしようとしてくれたし、

しっかり考えていました。


尾崎君が言います。


「うーん、藤原の男性化って、難しそうだけど、まずはダテ眼鏡でもかけるか?」


「メガネ?」


「うん。目が可愛すぎて女の子っぽいから、メガネかけた方が女の子ぽさが消える。」


板谷君も言います。


「そうだな、あと、整髪料付けた方がいいかも。サラサラヘアだと、やっぱり可愛すぎる。

ちょっと、整髪料で、髪の毛立ち上げたほうがいい。」


二人からは次々とアイディアの提案がありました。


「行儀悪いけど、歩くときや立っているときにポケットに手を突っ込むと男子っぽい。」


「無理やりがに股っぽくする必要はないけど、足を投げ出すように歩くと男子っぽい。」


「別れる時に、じゃあな!っていうといいかも。」


「相槌打つ時、そうだなー、まあな、とか言うのも男子だけだな。」


僕は次々とメモをします。(あ、訓練のために心の中でも僕って思うようにしています。)


さすがに、全部はできないけど、できるものはやっていこう。


そして、放課後、僕は部活に行きます。


もちろん、男子二人と一緒。


演劇部の部室に入ると、部長が迎えてくれました。


「ようこそ、男子校演劇部へ。

女子校と同じように、基礎体力づくり、

柔軟体操、発声練習をやってもらう。

あ、更衣室は女子職員用を使用してくれ。

あと、男子の動きや声の出し方は山野先生が

指導してくれる。


「山野先生ですか?

女性なのに?」


「山野先生はなぜか男性と女性の違いに詳しいんだ。声も男みたいな声が出せる。」


「そうなんですか?」


で、着替えて部活が始まります。

基本は女子と同じですが、ランニングは女子より速いし、サーキットトレーニングも力強くて男子と一緒にやると骨が折れます。

発声練習はやはり低い声を出そうとすると辛い。

いろいろと自分が女性であることを思い知らされます。


トレーニングが終わったあとは即興劇。

みんなと一緒ですが、私の横には山野先生が付きっ切りです。


「男はそんな返事はしない!」

「男はもっと力強く歩く!」

「そこで腕をまくる!」

「そこは僕より俺がいい!」

次々と指摘がありました。厳しい!

うーん、でも参考になるなあ。

周りの男子が手本になるし。


しばらくして、先生と二人きりになり、

身体の動き方や話し方について指導がありました。


「女子だけの演劇部における男役はリアルな男子になるわけではないの。

女子が憧れる男性の姿を作るというのがまず第一かな。

でも、宝塚じゃないんだから、高校生の大会では、過剰な王子もどうかと思う。

審査員は学校の先生だからね。

その辺難しいとは思うんだけど、試行錯誤の中から、自分だけの男役をつくっていってね。」


そうか、単なる男子のコピーではダメ!

だからといって、宝塚みたいな大げさな王子さまも高校生らしくないんだ。


うん、私だけの男役を作っていこう。

山野先生、やっぱり頼りになる。

もしかして、山野先生、女子高のOGかな?

だったら、大先輩だ。

これからも相談して行こう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


尾崎皆です。


わーっ、横で見てても、藤原さん、真剣だなあ。

そうだよな。

女子高の演劇部の期待を背負ってるんだもんな。

俺も、いい加減なことをやってられない。

演劇部の中で実績を作って、自信をつけないと、藤原さんに好きだなんて告白する

資格はできない。

演出とかやりたいけど、まずは役者の気持ちを知らないといけないから、

まずは演技の勉強だ。


「板谷、板谷は演劇部でどんなことをしたい?」


俺はとりあえず、質問してみた。


「やっぱり、大会で勝てるようになりたいし、重要な役を任されるようになりたい。

まあ、主役でなくてもいいから、それに近いような。」


「そっか、俺はいろいろ勉強したうえで、演出家になりたい。

オリジナルの脚本、台本を書けるようになりたい。

でも、まだ何もわかってないから、図書館で本でも借りてこようかな?」


「そりゃ、すごいな!

演出家なんていったら、演劇をトータルプロデュースするような役回りだろ?」


「まあな。でも、まだ全然わかってないけど。」


その時だった。上級生から声がとんだ。


「おい、そこの1年。エチュード(即興演劇)さぼるな!

何、話してんだ!お前らは高校デビュー組だから、余裕ないぞ。」


「わっ、いけね。しまった。」


「こりゃ、負けてられねえ。」


そんな俺たちのやり取りや話し方を一生懸命、メモしていた藤原さんだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ