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11 一人称が心の中でも私になる。

私、葵です。

小出葵、15才の女子高生。

ホントは性別は男子だけど、女子高生姿で毎日を過ごすことになりました。


明日からは2週間、女子高に通学することになっています。

ドキドキしています。


あ、私、昨日までは、自分のことを心の中で、「俺」って呼んでました。

しかも、考え方も「男」でした。

それだと、やっぱり私のめざす完璧な「女形」「姫」になれないと思い、心の中でも、女性らしくすることにしたんです。

つまり、心の中でも自分を「私」と呼ぶことにしました。

ちょっと慣れないけど…

頑張って、心の中から女らしくします。


それにしても、昨日、家族で買い物に行ったときには驚きました。


母と姉と大規模ショッピングセンター内を歩いていた時に、同級生で、同じ演劇部に入部した板谷君が声をかけてきたんです。

絶対、知り合いには会わないだろうと思っていたし、知り合いは会っても見事に女装して、女の子になりすましている私のことを発見する人なんていないだろうと思ってたので、驚きで声が出ませんでした。


うーん、ここ1週間、板谷君、尾崎君とは仲良くしてたから、わかっちゃったのかなあ。


困ったのは、母と姉の発言です。


板谷君が立ち去ったあと、


「けっこう感じのいい子ね。あの子を彼氏にしたら?お母さん、あの子だったら認めるよ。」


「うん、私もいいと思う。けっこうイケメンじゃないの。葵のこと守ってくれそう。

私より先に彼氏を作ること、許してあげる。」


ええっ、私、ホモじゃないよ!板谷君だってホモじゃない!


男同士だよ!


そこまで考えて、私は自分の今の状況を把握します。


このまま「姫」でがんばると2年間は女装して過ごすことになる。

特に私は、24時間女の子で過ごすことにより、「姫」として完璧になろうとしている。

普通の男子みたいに女子と恋愛なんてできそうもない。

女の子姿で過ごしていると、恋愛の相手は男性の方が似合いそう。

もし、板谷君と二人で歩いたら、高校生カップルに見られるだろうなあ。

板谷君、たしかにかっこいいから、一緒に歩くとけっこう似合うかも。


そこまで考えてしまう私。

うわっ、とんでもない考えだ。

ダメだよっ。


「板谷君って、彼女とかいるの?」

姉が質問してきました。


「いないはずだよ。高校で彼女作りたいって言ってた。」


「じゃあ、チャンスね。ふふふ。」


「ホント。」

母も面白そうに同意しました。


「ええっ?変な事言わないで!」


私は、からかわれてると思いながらも、動揺してしまいます。


ホモではないけど、女の子姿の時に、かっこいい男の子と歩いたら、けっこういいかも!と想像してしまったからです。


ダメダメ、私は本当は男の子なんだ。

変なこと考えちゃだめ。

板谷君だって、本物の女の子が好きなはず。

可愛いって言ってくれたけど、あれは、女形としての出来を言ってくれただけ。

変な気持ちにならないようにしないと。

私は可愛いかっこしてても、体は男なんだ。

男の子が大好きなおっぱいだって無いしね。


ああ、心の中を女の子にすると、考え方が変わりそうで怖いなあ。

でも、中途半端は嫌だ。

女の子の心理を勉強しないと。


よし、明日は、女子高初登校。早起きして準備しなきゃ。もう寝よう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



板谷翔です。

今は日曜日の夜。

昨日からなんか胸が苦しい。

心臓がキューっとする。

完璧に女装した小出を見たからだ。


正直言って、もろ好みの可愛い女の子になってた。

あいつの姿が頭から離れない。

小学校、中学校の時に可愛い女の子に出会って一目惚れした時に似てる。

俺は男に惚れたのか?


それはまずい!

俺はホモじゃない。


小出もホモじゃないはずだ。

あいつの女子姿はあくまで演技の一環だ。

本気で女になっているわけじゃない。


うーん、

まずいなあ。


いくら女装姿が完璧でも変な気持ちにならないようにしよう。

あいつとは友達としてやっていかなきゃな。


好きな女の子でもできれば変な心配しないで済むんだろうな。

どこかに恋の相手いないかな?

もちろん、小出より可愛いくて魅力的な

女の子!

いい出会いがあることを祈って、

早く寝よう!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






私は柏原由奈かしわばらゆな

月曜日の朝、近所の幼馴染みの家に向かっている。

一緒に、私の学校、桃花女子高校に登校するためだ。


幼馴染みの名前は小出葵。

小学校、中学校が一緒。

仲良かったのは小学校低学年までかな?


小学校高学年以降は、顔を合わせば、話をする程度。

別に恋愛対象ではない。


ただし、男の子なのに可愛い顔してるなーっていつも思ってた。

性格も明るくて、これで、背が高くて、運動神経とかよかったら

人気者になるのにとは思っていた。

小柄で、オタク的な趣味をもつ葵は地味だった。

小さくて、可愛いくて、明るいけどオタクって感じ?

まあ、女の子にはモテないタイプ。


あ、男の子なのに何で、女子高に一緒に登校するのかって?


葵は私の通う桃花女子高校の兄弟校である桃花高校の1年生。

男子校の生徒だ。

葵はそこの演劇部で女形・・・女役専門役者に抜擢された。

どうも、女形・・・「姫」と呼ばれるんだけど・・・は女子高に

女性の雰囲気を学ぶために、女形になってすぐ派遣されるみたい。

3週間だって。

あとは1年の最後の方で、また派遣されるとか。


3週間、授業を一緒に受けて、演劇部の部活に参加して、女子の生態を学んで、女子っぽさを吸収するっていうすごいプログラム。

まあ、間に連休があるから実質は2週間ちょっとかな。


実はその逆もあって、女子高の演劇部には男役がいて、男子校に派遣される。

「王子」っていうんだ。


私も演劇部だから、詳しくなっちゃった。

呆れた制度だとも思うけど、伝統あるみたいだから、表立って批判はできないな。


それにしても、葵、女子の制服を着て、学校に登校するって言ってたけど、

ちゃんと女の子に見えるのかな?


確かに可愛いけど、中学まで普通に男の子だったと思う。

女の子っぽい言動や仕草なんてなかった。


一緒に歩いていて、いかにも女装コスプレみたい感じだったら、恥ずかしいなあ。

頼まれちゃったから、一緒に登校することになっちゃったけど。

あーあ、電話なんかしなければよかったなあ。


あ、葵の家についた。覚悟を決めて、ピンポンするかな。


私は、小出家のインターホンを押した。

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