107 祐希の男子校研修と尾崎の決意
尾崎皆です。
2月半ば過ぎ、待ちに待った日がやってきた。
そう、女子校の「王子」の研修週間だ。
男子校の「姫」が女性らしさを学ぶために男子校に通学し、女子校の「王子」が男っぽさを学ぶために男子校に通学するという1週間である。
俺の大好きな藤原祐希が俺たちの教室に月曜日から金曜日までいる。部活も一緒だ。
最高の1週間になりそうっ!
先週、バレンタインデーに小出を通じて、手作りチョコをもらった後に電話でお礼をしたけど、直接感謝の気持ちも伝えられる。うん、いいタイミングだ。
よし、月曜日から金曜日までの5日間、少しでも藤原と仲良くなるぞ。
藤原は王子でいる間は「恋愛はしない宣言」をしていて、交際を申し込む状況にないけど、今の内にできるだけ仲良くなっておかないと。
ライバル多いからな。
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藤原が教室にやってきた。
うーん、やっぱ教室の雰囲気が変わる。
小出には申し訳ないけど、本物の女子だけがもつ華やかさ、可憐さがあるんだ。
藤原は小出と違って、LGBTじゃなく、ノーマルの女性だからホルモン治療なんてやってない。
だから、高校1年生という第二次性徴期がどんどん進んでいるんだ。
男役の「王子」としてのかっこよさは身についてきているが、同時に、隠しきれない女性らしさの向上がある。
たぶん、体全体が女っぽくなっているに違いない。
「藤原、この間は俺と板谷にチョコありがとうな。」
昼休み、教室に人があまりいない時、俺は他の男子に聞こえないように、お礼を言った。
「どういたしまして。演劇部の仲間だからね。それに二人は私の親友である葵の大事な両腕的存在だし・・・
そういえば、板谷君と葵って、何か進展ありそう?」
「ははは、仲はいいけど、男同士の親友と同じだよ。
学校でも、みんなそうみてる。
町で見かけたら一般の人はカップルと思うかもしれないけどな。
もし、進展があるとしたら、演劇部引退して、手術してからだろうな。というか、二人の大学受験が終わってからだろな。」
「何、それ。
つまんないなー。」
「でも、藤原だって、演劇部で王子をやっているうちは恋愛しないって言ってたじゃないか?」
「ふふふ、そうだね。私も器用じゃないから、王子をやっているときに女の子の気分になるのはやっぱり避けたいし、引退したら、受験で忙しいから、恋愛は大学合格後かな?」
藤原は俺の気持ちがわかってるくせに、平気でそういうことを言う。
でも、正直な気持ちだから仕方がないだろう。
藤原のやつ、王子になった時は、「僕」「俺」って無理していってたけど、「私」という一人称になったな。まあ、学校生活はそれでいいだろう。男装しているって行っても、あくまで宝塚的な感じで、女だってわかる男装だから、必要以上の男っぽさは必要ないしな。
「尾崎君だって、演劇部のプロデューサー兼舞台監督みたいな感じで、これから超忙しいんじゃない?」
「そうだな。全国大会までは先輩がいるけど、全国大会以外のイベントである新歓と定期公演は俺が企画のリーダーやるし、秋の地区大会からは俺がとりしきるしなー。たぶん死ぬほど忙しくなる。突っ走って、3年の初めに引退するよ。」
「ええっ?もし全国大会に行けたらどうするの?」
「2年連続の全国大会か?それもあこがれるけど、3年の夏まで部活やったら、俺の頭じゃ大学に行けない。行きたい大学もあるし、勉強したいな。」
「どこの大学に行くの?」
「演劇で有名な○○大学だよ。演劇を研究したい。演劇の演出の仕事を根本から習いたいんだ。
演劇はもうかりそうもない仕事だけど、もしかしたら一生やっちゃうかも。」
「ふーん、そうなんだ。
私も、○○大学に行こうかなー。」
「ええっ?何で?」
「尾崎君が関わる演劇の舞台に立ってみたいような気がするんだ。
高校だとできないじゃない。
友達が演出する演劇ってすごく面白そう。」
藤原の目はちょっと輝いていた。
俺のことを好きだってわけではなく、演劇仲間としては興味を持ってるということなんだろう。
恋愛関係は今は考えないけど、人間としては興味をもっているってことなんだ。
ちょっと残念だけど、でも、いつかは恋愛関係になれるかもしれない。
そのためには、演劇に対する情熱が大事なんだろうな。
「おお、もし俺が大学で演出できたら、主役にしてやれるかもな。
でも、その時は男役じゃなくて、女役だぞ。今とは違うから勉強しろよ。」
「ありがとう。
そういってくれるなら、私も頑張らなきゃね。
男役やってるけど、引退したら、すぐ女性としての演技の勉強もしなきゃね。
葵はどうするのかな?
演劇続けるのかな?」
「やるんじゃないか?
あそこまで努力してるんだから。
演劇はあいつにとって、単に女子になるための理由ではなく、人間性を高めるためでもあるような気がするんだ。」
「そっかー。私も負けてられないね。」
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部活でも俺は、藤原と一緒にいる時間が多かった。
二人一人でやる柔軟体操も藤原と一緒にやった。
他の部員はみんな俺が藤原を好きなことを知っているので、文句は言わない。
藤原の体は柔らかいし、いい匂いがする。女の子だなあって思う。
しかし、即興演劇の練習とかすると、彼女の男役としての成長をすごく感じた。
目つき、声の出し方、勇ましさ、実に男っぽく凛々しい。
こいつ、宝塚に入って、男役目指すって言うのもアリじゃないか?そう、思うほどだ。
身長もあるしね。
でも、宝塚なんて入られたら、会えなくなっちまう。
やっぱりだめだ。
「尾崎、楽しそうだな。」
部活中、板谷が俺をからかってきた。
「まあな、こういう王子・姫の研修はこれで終わりだからな。大事な時間だよ。
彼女と話して、自分の進むべき道がわかってきた。俺は演劇により深く入っていくぞ。」
「おお、すごい決意だな。例の演出家の道だな?」
「まあ、舞台監督、脚本家、映画監督っていうのも興味ある。とにかく演劇を作り上げる側になりたい。
それにまい進していく。藤原がその流れに絡んできてくれるって俺は信じている。」
「スゲー自信だな。でも、その前に、高校演劇で何かをつかまないとな。頼むぜ、俺たちの演劇のプロデュース!今年の秋まで負けたくない気分だからな。」
「おお、任せとけ。」
2月11日は祝日なので、更新したいと思います。
「玉抜き手術」について書きました!




