106 女子高での研修
葵です。
バレンタインデーが終わりました。
次の週は女子高で過ごすことになります。
春先と同じように、女子校で授業を受け、女子校の演劇部で活動をします。
代わりに、祐希は男子校で授業を受け、男子校の演劇部で活動をするわけで、入れ替わりなんです。
登校した日に私は、クラスの女子に囲まれます。
毎日会っている由奈や純華や文乃のようにたまに会っている女子は除いて、久々の会話です。
文化祭の時には私は女子高に来ていて、何人かは会っているけど、それからも5カ月ほどたっています。
とりあえず、ほとんどの子が私の容姿の変化に驚きます。
「ええーっ!全然変わっている。完全に女の子だ。顔が丸くなって、優しい顔になってる。」
「うわっ、腕とか触るとプニプニしてる。確か春は堅かったよ!」
「おしり、大きくなってるよ。うん、春はお尻ちっちゃかったもん。」
「おっぱい、本物だよね。すごい!触ってみていい?」
「髪の毛伸びたよねー。うーん、女の子っぽい。春先はまだ中性的な気がしたけど、もう、女子にしか見えない。」
とにかく、体全体をじっくり観察されるし、身体のいろいろなところを触られます。
これってセクハラじゃないか?と思うんですが、元々は男子である私にみんなは遠慮がありません。
「すごい、ホルモン治療ってすごいなー。」
「うちの弟にも女性ホルモン与えたら、ウエストくびれちゃうのかな?」
「Bカップなの?ずるいー!私負けてるじゃない。頭来たから、触らせて!」
まあ、大騒ぎするのは初日だけです。
女子は飽きるのも早いんです。
私は触られながら、我慢します。
体育の時間が来て、春先は別の部屋で着替えた私ですが、今回はみんなと一緒に教室で着替えます。
クラス全員、一緒に着替えてもいいって言ってくれました。
着替えの時も、触られまくります。
「わー、可愛い下着付けてる。どこで買ったの?」
「お尻が桃尻だよ。いいなー。」
「うわさの彼氏とはどこまで言ってるの?」
「性転換するんだよね。いつするの?」
女子の興味は尽きることはありません。
きゃあきゃあ声をあげながら、私のプライベートに侵入してきます。
でも、嫌な気分にはなりません。
こういう、女子の余計なお節介的なところを学ぶのも研修の一環です。
体育の時間に、女の子と二人一組で柔軟体操をするときには、春先との変化を強く感じました。
春、部活で祐希と柔軟体操をしたときには、女子の体の柔らかさをものすごく感じたんですが、
今は自分の体もプニプニに柔らかくなっています。
柔らかい身体同士で、余計柔らかい感覚が増します。
「女の子同士の体が接触すると、不思議な感触だ。」なんて、思っちゃいました。
口には出しませんけど。
で、クラスの女子が一番興味をもって、私に質問してきたのは、ずばり「性転換手術」です。
「切り取っちゃうの?男子とエッチできるようになるの?生理はあるの?」
なんて、質問が次々と飛んできます。
「うーん、切り取るというより、作り変えるっていう感じかな?
生理はないよ。だって、子宮とかは作れないんだから。
したがって、子供も作れません。
残念だけど、そういう道を歩むことにしたんだ。
男性との性行為は、できるようになるかもしれないけど、色々大変かも。
手術したあとのトレーニング次第だよ。」
なんて、真面目に答えていきます。
みんな、グロい話にもすごく食いついてきます。
男子と違うのは手術のグロい話にあまり抵抗がないこと。
生理で出血が身近な女子と男子の違いかも。
演劇部での部活では、声の出し方が変わったって指摘されました。
顧問の福島雅先生が、
「すごい、完全に女の子の発声法をマスターしてる!
女の子の声で、大きな声をだしてるもん。
声帯の手術をしないで、ここまでできるなんて、すごい努力ね。」と感心してくれました。
姉が、マンツーマンで指導してくれたことがこんなところで評価されるとは。
男子校では、声が女子っぽいことについては、みんな慣れちゃったせいかあまり指摘されなくなってました。
それにしても、雅先生、相変わらず美人だな。
彼氏できたのかな?
他の生徒がいない時に、何気なく聴きます。
「先生、相変わらず美人ですよね。
その細い腰、すごく魅力的です。」
「ふふふ、努力してるんだから。食事制限と、フィットネスにヨガ。けっこう大変なんだよ。」
「で、彼氏できたんですか?」
「ぎくっ!!うちの部員が聴かないことをズバリ聴いてくるとは!
もう。そこがやっぱり男の子だなー。
それ言われると、落ち込んじゃう。
山葉には誰か紹介してって言ってるんだけどねー。
女子校にいると、教師もほとんど女性だし、男性はおじさんばかりだし。
なかなか機会がないのよ。」
「男子校の男性教師がいるじゃないですか?」
「うーん、それもねー。
確かに男子校にかっこいい男性教師いるから、山葉に探りを入れたんだけど、いいのは売れてるんだ。
残念なことに。」
雅先生、すごい哀しい顔をしている。
うーん、お世話になってるし、誰かいい人がいたら紹介したいな。
難しいな。今の時代って。こんな美人でも出会いがないんだから。
さて、部活では、同学年の女子から、板谷君との仲についてけっこう聴かれます。
「付き合ってるの?できてるって言う噂になってるよ。
一緒にいるとすごくお似合いだもん。」
「性転換するなら、問題ないんじゃない。戸籍も女性にするんでしょ?」
みんな悪気はないでしょう。
性転換しても、子供が作れる体になれるわけではなく、一生女性ホルモンの外部摂取をする人間になるなんてことを説明すれば、ちょっとはわかってくれるかもしれないけど、女子高生は単にコイバナが好きなだけ。シリアスな話をするべきではないって私は考えます。
「うーん、性転換して、身体が完全に女性化したら、男性との恋愛を考えます。それまでは、まだ考えられません。だって、ついてるんだもん。ついてるって、けっこう重大なことなんですよおっ。いつもそこにその存在を感じるんですから。」
私は、男性性器の重要性を強調してごまかすことにします。
「そうなの?それだけ女っぽくなっても、そうなんだ。ついていると、やっぱり女子になりきれないんだ。」
女子部員の関心は、私についている男性性器に向かいます。
そもそも、男性性器って、どうなの?ふだん、どんな存在なの?みたいな話になっていきます。
保健体育の授業みたいな話になっていって、私と板谷君の噂話はどこかに飛んでいきます。
由奈が、私の耳元で、
「あいかわらず、ごまかすのうまいんだから。」と囁いてきました。




