103 翔、葵のバイト先に遊びに行く。
板谷翔です。
学校で、尾崎、菅原、山中、佐藤と一緒の時に、小出に声をかけられた。
「あのさ、2カ月限定なんだけど、ファミレスでバイト始めたんだ。
制服すごく可愛いの。
よかったら、見に来てね。」
と誘われてしまった。
「まあ、みんなのスケジュールが合ったときに、行くよ。
バイトしてるところ写真に撮ってやるよ。」
「うん、お願い!」
という会話になったんだが、なかなかみんなの都合が合わない。
どうしようかな?俺一人で行くかな?約束したのは俺だし。
とある日思い立ち、ファミレスのあるターミナル駅に向かう。
今日は土曜日で、部活はないし、特に用事がなかった。
行くなら、今日だと思ったんだ。
でもな、ファミレスに一人で行くって、ちょっと嫌だな。
目立っちゃうじゃないか?
駅の改札を出て、付近をうろうろしながら、考える俺。
その時だった。
10メートルくらい先を中学の時の同級生の庄司博人と三島彩花が歩いているのを見かけた。
庄司と三島は付き合っている。つまり恋人関係だ。
「おお、庄司と三島じゃないか?」
「おお、板谷じゃないか?久々だな。」
「あら、板谷君、どうしたのこんなところで?」
「突然だけど、二人って、今忙しいかな?」
「さっき、二人で映画を観てきたところだ。
腹が減ったから、どこかで食事しようと相談しながら歩いていたとこだよ。」
「うん。板谷君、私たちに何か用事?いっしょに食事する?」
「飯食いにいくのか?
なら、好都合だ。
俺の友達がファミレスでバイトしててさ、遊びに行く約束しちゃったんだ。
バイトしているところを写真に撮ってくれって頼まれちゃってさ。
一人で行くのこっぱずかしいから、一緒に行ってくれないかな。」
「何、それ?
変わったやつだな。ファミレスでバイトしてるところ写真にとってほしいなんて。」
「あ、わかった。東口の先の交差点にあるファミレスじゃない。
あそこのウエイトレスの制服、むちゃくちゃ可愛いんだ!
私バイトしてみたいって思ったもん。バイトしたら、写真撮りたいと思った。
なるほどねー。
友達って女の子でしょ?」
「うっ(まあ、女の子ってことにするか?男子校の姫って言うとややこしくなる。そう言えば、この二人、前に俺と葵を遊園地で見かけてるんだった。葵のことを女子高の演劇部の生徒って信じてるはずだ。)、
そうだけど・・・」
「おお、板谷もすみにおけないな。彼女か?」
「いや、違うよ。前にも二人が遊園地で見かけたっていう、女子校の演劇部の女の子だ。
友達なんだ。」
「ええっ!あの可愛い子?覚えてるよ!板谷君の彼女だと思った子だ。」
「あの子か!思い出した。おお、会ってみたい!うん、付き合うよ。」
俺は、その時に急いで考えを巡らす。
葵はニューハーフってことで、バイト先のスタッフに説明して、ウエイトレスをやってるって言ってた。まさか、客にもニューハーフなんて説明するわけはないよな。普通の女性のふりをするんだろうな。
よし、大丈夫だ。
「あの可愛い子とまた会えるの?やったー。
板谷君、紹介してよ。私、友達になりたい!」
「彩花は可愛い女の子が好きだなー。女の子のアイドルが好きだし。俺と付き合ってるから、レズじゃないとは思うけど。」
「レズじゃないよ。でも、可愛い子には目がないの。可愛い女の子は天使だもん。抱き着きたくなるんだ。」
三島はけっこう美人だが、可愛いタイプではない。現役水泳部で、けっこうがっちりしている。
華奢な女の子っぽさ満点の女子は憧れみたいで、よくこういう発言をする。
まあ、葵は女の子じゃないんだけど、今更正体を明かせないな。
何とかごまかそう。
「ここ、ここ。前に友達と2回くらい来たよ。
けっこう、ドリアが安くて美味しいんだ。」
店の場所をよく知っていた三島が男性陣を先導して、店の前まで来た。
おお、女の子はこういう店詳しいな。
ドアを開けて、店内に入る。
「いらっしゃいませ!!」
俺たちと同じくらいの年のウエイトレスが出迎えた。
確かに可愛い制服だ。
ちょっとミニスカのメイドっぽい。
ネームプレートには「倉崎茜」と書いてあった。
4人掛けの席に案内される俺たち。
しばらくたって、俺たちの接客担当になった倉崎さんに、オーダーを告げると、
「かしこまりました。ほかに何かご注文ありますか?」
と答えが返ってくる。
俺は、恥ずかしいけど聴くしかなかった。
「あのー、小出葵って、今日出勤してますか?
友達なんで、ちょっと挨拶したいんですけど。」
「えーっ?葵の彼氏さんですか!かっこいい!!
今、呼んできますから、少々お待ちくださいね!!」
「ちょっと、待って!友達ですって!」
倉崎さんのリアクションはすごくオーバーなもので、かつ、人の話を聴こうとしない感じだった。
俺の声が耳に入っていない感じで、小走りに店の奥に入っていく倉崎さん。
困ったなー。
「へーっ、やっぱり、彼女なの?素直じゃないなあ、板谷君は。」
「隠すことないじゃないか、可愛いんだから。」
うわっ、誤解が誤解を呼ぶ。
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葵です。
ファミレスでのバイトでちょっとした休憩が終了し、フロアに戻ってくると、
倉崎さんが、「葵、葵、彼氏が来てるよ。かっこいいじゃない!あんな彼氏がいるなら隠さないでもいいのに。」って興奮した声で、私に声をかけてきました。
「えっ、彼氏なんていないけど・・・」
私は店内の奥を覗きます。
「あっ、板谷君だ。」
「板谷君っていうの?いいなあ。彼氏がいて!
あ、早く行ってきなよ。せっかく来たんだからさ。
制服姿見せないと。
写真撮ってもらいたいんでしょ?」
「は、はい。」
私は、彼氏じゃないことを説明することがめんどくさくなりました。
倉崎さんは、早とちりなので、細かい説明なんか聞きそうにありません。
早速、板谷君の席に向かいます。
「板谷君、来てくれたの?ありがとう。みんなは?」
「ほかの連中は都合が悪くてさ。
今日は、中学の時の友達と来たんだよ。あ、こいつが庄司、で、こっちの女の子が三島。
この二人、付き合ってるんだ。」
「庄司です。前に、板谷と一緒にいるところを見かけたことあるよ。
板谷とお似合いだね。さっきの子が彼氏さんって言ってたけど、そうなの?」
「いや、友達です。さっきの子は早とちりなんです。」
「でも、友達以上、恋人未満って感じがする。これから彼女になるんじゃないかな?
あ、私、三島彩花です。初めまして。
うわっ、目の前でみるとやっぱり可愛い。以前、博人と一緒に見かけたときより可愛い!
あのさ、よかったら友達になってくれる?連絡先交換して。」
「あ、はい。板谷君の友達なら、問題ないと思うから・・・いいですよ。」
そのあと、私と三島さんは連絡先を交換し、私は板谷君に制服姿の写真を撮ってもらって、その場を離れました。
幸いにして、他にお客さんがいない時間で、かつ、厳しい長崎さんがいない時だったので、怒られないで済みました。
長崎さんがいたら、「何やってるの?学校じゃないんだよ!」って雷が落ちてたところです。
結局、料理を運びに行ったのは、もう一人の高校生バイトの斎藤さん、そして、水のお替りを持っていったのは、大学生バイトの島村さんです。
二人とも、板谷君のことを私の彼氏と信じちゃって、テーブルまで見に行ったという次第です。
もう、説明するの、めんどくさい!彼氏と思われてもいいや!そう思っちゃう私でした。




