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101 アルバイトを始めます。

葵です。

2月に入りました。


髪の毛は、何とか、セミロングよりちょっと短いくらいの長さになりました。

だいぶ女っぽくなったけど、まだまだ理想には程遠いです。


そんな私は、突然、姉の友人の上田舞奈うえだまいなさんの頼みで、通学路にあるターミナル駅に近いファミレスでウエイトレスのアルバイトをすることになってしまいました。

舞奈さんは姉の高校2年生からの友人で、姉とは別の大学に通ってるのですが、今でも交流があります。時々私たちの家に遊びに来るので、私のことをよく知っているんです。

舞奈さん、私に会うと、すぐ胸やお尻をさわって体の変化を確かめるんです。ちょっとセクハラっぽいことするお姉さん。

「きゃぁっ!舞奈さん、いきなり触らないでください!」

私が抗議すると、

「女同士だからいでしょ?うん、確実に成長してる!女性ホルモンが体中で、活躍してるんだねー。」

なんて、笑顔で答えるんです。

基本的に明るくて、楽しい人なので、許しちゃいます。


さて、バイトなんですが、やるのは演劇部の練習が落ち着く2月、3月の2か月間だけです。

実は舞奈さん、海外に短期留学するので、私はその間のピンチヒッター。

姉は別のバイトをやっているので私に白羽の矢が立ったのです。


経過を説明します。


舞奈さんがしばらく休むとファミレスの店長に申告した時に、代わりに可愛い女の子のバイトを探してきてほしいと言われたみたい。

そこで、舞奈さんは、色々考えて、私を推薦することにしたんだそうです。

「演劇部なら、2月3月は時間に余裕があるかも!頼んじゃおう!葵ちゃんにファミレスの制服着せたい!」って思ったとか。

ファミレスの制服はかなり可愛いんです。


ファミレスの店長には、私のスマホ画像や動画を見せたら気に入ってくれたみたい。

もちろん女性への性転換をめざしている男子高校生ですって、正体は明かしたようなんですが、

「男の子なの?女の子にしか見えない!これだけ可愛ければ、ファンができるかも!性格もよさそう?」

と言って、舞奈さんにスカウトを依頼したそうです。


舞奈さん、私のことを「葵ちゃんはいいお嫁さんにになりそう!」なんて、からかってくる人なんですが、まさか、バイト先の店長にまで売り込むなんて!

びっくりしました。


私は当初、断りました。


だって、制服着るから、更衣室での着替えが必要です。

男子更衣室で着替えるわけにもいかず、女子更衣室は女性スタッフが嫌がるでしょうと思ったからです。


そしたら、舞奈さん、高校生と大学生の女性バイトと中高年の女性パートさん、全員を説得して、女子更衣室を使えるようにしてくれました。

もちろん、一緒には着替えないで、時間をずらして着替えるという条件が基本です。

特に舞奈さんと仲がいい高校生と大学生の女の子たちは、私にちゃんとおっぱいがあると知ると、「一緒に着替えてもいい!」!なんて言ってくれたようで、ちょっとうれしかった。


結局、私は引き受けました。

まあ、2カ月だけですけど、社会勉強になるし、お小遣い稼ぎににもなると考えたからです。

何事も経験は大事だし。


バイトの高校生は数人いるみたいで、私が知ってる子はいないようです。つまり同じ中学出身者や女子校の子はいないってことですね。

友達になれるといいなーなんて思いました。

私、実は、違う高校の女の子と友達になるって結構刺激になるなーって思ってたんです。

ワクワクしちゃいました。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


バイトに入るまえに、もちろん店長の伊藤武いとうたけしさんと面接はしました。


「おおっ、ホントに女の子にしか見えない!

しかも、可愛い!

すごいなー。

そのー、聴きにくいんだけど・・・まだ、手術前なんだよね?」


「性転換手術のことですか?

そうですね。

まだです。

うーん、たぶん、背が低いし、細身だから、女性に見えやすいんでしょうね。

女性ホルモンも摂取していて、だいぶ体の感じが変化したんです。」


「そっか!現代医学の神秘だね。

でも、素質があったっていうことだね。

やっぱり女の子っぽい雰囲気がもともとあったからだと思う。

たった2カ月だけだけど、よろしくお願いします。」


「こちらこそお願いします。」


面接はこんな感じで、問題なくすみましたが、店長の視線が胸に来てることに気づいて、ちょっと恥ずかしかった。

わかります。男性なら、胸のふくらみ気になって当然です。

たぶん、本物なのかなあ?って気になったのでしょう。


そして、数日後、バイトが始まりました。

新しい制服は私の体格にピッタリ。

ちょっとメイドっぽい制服は、けっこう男性客に好評で私もあこがれてた制服でした。

「よーし、張り切ってお仕事しよっ!」と気合が入ります。


とはいえ、生まれて初めての接客業務。オーダーを入力する端末やメニューの種類など、覚えることは山のようにあって、頭の中がすぐにいっぱいになります。

私のコーチは50代のベテランのパート女性で、なかなか厳しい。

長崎由美子ながさきゆみこさんという実にはきはきしているキツイ感じの人なんです。


「はい、すぐお水運んで!そこを片付けて!あ、ちいさな子供がいる家族は店の奥の方に案内して!」

と細かい指示が、次々と入ります。右往左往することばかりで、可愛い制服を着てることなんて、途中から忘れてしまいました。


とりあえず、お客様を待たせないことを意識します。そして、オーダーのミスがないかどうかが常に不安でした。

バイト初日は学生バイトが私だけという少ない人員態勢だったのも、不安に輪をかけます。

私は駆けずり回り、他のスタッフに謝りながら仕事をこなすという感じでした。

ボロボロになった気分で、バイト時間が終わります。


しょぼくれて、フロアから退出しようとしたときに長崎さんが声をかけてきました。

「今日は、全然使い物にならなかったけど、最初としたはまあまかな?とりあえず、声が大きいのはいいね。さすが、お芝居やってるだけあるね。

あとね、きれいな顔してるんだから、笑顔を忘れないでね。」


「あ、ありがとうございます。次回からはもう少し、がんばります。」


「期待してるからね。次回は動線を意識して、無駄のない動きをするんだよ。」


ああ、言われてしまいました。

たしかに、無駄な動きが多かったなあー。

でも、長崎さん、最後は優しい顔をしてくれたから・・・うん、頑張ろう。

長崎さん、私が男とか女とかどうでもいいみたい。

役に立つかどうかだけが興味あるって感じかな。

当然かも。それが、社会人の世界なんだろうなあ。


私は生まれて初めてのバイトにショックを受けながらも、やっぱりやってよかったと思うのでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] ふええ。。 ちょ たのしがっだです!!!!! ほんとに
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