第七幕 WYVERN(ワイバーン)「最終決戦は突然起こった。そして俺はワイバーンを必ず倒す!」編
人生の脅威がある日突然起こるように、戦いもまた、突然始まる。
俺がいつものように出社するために家を出た、まさにその瞬間に事は起こった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
「うわ!地震か!?」
地震だ。車椅子越しに大地の振動が伝わってくる。危険なので一旦じっとしている。
「けっこう大きいな……!電車止まるんじゃないかな?」
そして次の瞬間。
ボオオオオン!!!ドドドドドオオオオオォォォ!!!!
「う、うおおお!?!?これは……!!」
周囲の建物がものすごい勢いで破壊されていく。風のような、何か見えない力がビルや家屋、電信柱などにかかりなぎ倒していくように見える。
「この力、絶対にヤツの仕業だ!!ワイバーン!!」
目の前に電信柱が飛んでくる!
ブンッ!!!
「当たるかよっ!!?」
思い切り車椅子を後方に動かす。その瞬間、電信柱が目と鼻の先に降ってきた。
ドゴオオオオン!!!
「くっ!!あぶねぇあぶねぇ!!このままだと殺られる!!ホマーーー!!!」
俺がホマーの名を叫ぶ。ホマーがやってくる!
「スケさん!!」
「ホマー!!」
「防御術、風を抑制、周囲を一斉検索するわ!」
「この現象は、やはりワイバーン!?」
「今までの攻撃とは全く次元が違うわ。明らかに強力な術を常時行使できる実力の持ち主よ!」
「ワイバーン!!出てこい。いい加減……最終決戦と行こうぜ!!」
俺とホマーが住んでいるこの鎌倉まで奴が直々にやってきたということか。前回のBULLとBEARの戦いから少しばかりおとなしくなっていたかと思うと、意表を突かれたとも言える。だが、心はほとんど動じない。いつ奴と対面しても、その瞬間、必ずぶっ殺すと誓ってきた。
昼間なのに空が粉塵で暗くなった。今の爆発の影響だけではなさそうだ。
「ふふふふふ。資長、政子。資長は何度か実際に会っているな。政子、お初にお目にかかる。私がワイバーンだ!」
「禍々しい気配。龍の姿とも、巨大な鳥ともつかない妖しい姿。まさに外道……!」
「はっは!!初対面にしては手厳しいご評価をいただき、ありがとう」
「ワイバーン!!ここで決着をつけてやる!」
「ふん。私を殺すことが本当にできるのかな?その実力、試してみようか」
ワイバーンが空高く舞い上がったかと思うと、翼を激しく動かす。すると物凄い風が周囲に吹き荒れる。竜巻が巻き起こる!
ゴオオオオオオオオッ!!ザザザザザ!!
「やばい!飛ばされる!!」
「安心してスケさん。面白いものを見せてあげるわ!風を味方につける!」
俺たちの周囲に吹き荒れる風が回転を始める。すると風が周囲を取り囲む。
「風は竜神が引き起こすと言われる。竜神を飼いならすのよ!」
風が周囲を取り囲んでいるが、俺たちはちょうどその風の回転の中央にいる。中央はほとんど風が吹かない。いわゆる、台風の目というやつだ。
「これでしばらくは安全か!?」
ワイバーンがワンパターンな攻撃をしている間は安全そうだ。そう長い時間はくれそうにないが、今のうちにヤツの実態を整理する。
「ホマー、そんなに時間はないが……ワイバーンの実態を今一度整理する」
ワイバーンはドラゴンの異名と言われる通り、俺達が想像するところのドラゴンの姿をしている。
全身が暗い緑色をしていて、硬い鱗で覆われている。仮に大きな刃物があって突き立てても、刃の方が負けて欠けてしまうだろう。
体の大きさは大型トラックぐらいだが、大きな翼を広げると横幅が20メートルくらいになる。学校のプールが24メートルだとすると、丁度プールくらいの大きさだ。
飛行速度は速く300Km程度出せるようだ。これは全速力のツバメよりも速い。
目はとても良く、俺達が人混みに紛れて隠れていたとしても見つけられるようだ。
また、人の言葉を理解することも、しゃべることもできる。
さらに、翼を使った強風攻撃、尻尾の毒針、口から吐く炎攻撃、西洋の魔法を使った多種の攻撃手法をもつ。
そして、奴が使う魔法は西洋に伝わる手法で作られている。ホマーの知っている術は東洋圏で使用される系統なので、ホマーの知識ではワイバーンの使う西洋の魔法が分からない部分もあると思う。だが、どんな攻撃でどれほどの威力かは奴の部下たちとの戦いの中でおおよその推測はできる。
「スケさん!何とかしてワイバーンをうまく誘導してほしい。私が仕掛けた術でワイバーンを拘束し、破壊するわ」
「いつの間にそんな術を仕掛けていたのか?」
「最近の不穏な動き、一連の事件。いつかウチまで敵が攻めてくるかと思って、念を入れて待っていたわ。この鎌倉という街は、今や私の罠があちこちに張り巡らされている」
「全く気が付かなかったぞ……!」
「スケさん。戦いはココが大事よ!」
ホマーが頭に人差し指をさす。得意げな表情が憎たらしい。後でじっくり懲らしめてやる。ばかやろう。
「まあいい……俺はホマーが何処に罠を仕掛けてるのか全くわからないから、誘導を頼む。俺は障害と脅威を可能な限り回避するから……あとはホマーに頼るしかない」
「スケさん。私がこの時代に来た理由が、分かった気がする」
「……」
「この戦いが終わったら、今度こそ平穏な日常を過ごしましょう」
「ああ。必ず!ホマーに見せたい場所とか、食べさせたいものがいっぱいあるんだ。この時代にあるものを一緒に見たり、感じたりしたい」
「ふふ……あまり食べすぎると、体が心配ね」
「はは……」
周囲がさっきよりも静かになってきた気がする。次の一手が繰り出されようとしているのだろうか。
「ホマー、敵はもう待ってくれそうにない」
「そのようね!スケさん。まずは駅前の市街地に行くわ!」
「よし、行くぞ!!」
ホマーが防御壁を俺たち二人分の空間に集約し、動きに合わせて移動するようにする。これで移動しながら固い守りを得ることができる。俺たちは市街地に向かって走り出した。俺は車椅子で路面が心配だったが、何とか周囲の瓦礫を避けることができた。車椅子生活が始まってからというもの、すごく腕が鍛えられた気がする。
一方、ワイバーンは上空から二人が走り出したのを見逃さない。
「くく……!!ついに出てきたな!!覚悟せい!!」
続く
今月は仕事を再開したので筆が遅くなりまし……




