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関東大戦  作者: S太郎
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第六幕 WYVERN(ワイバーン)「戦士の休息」編

はじまるざますっ!

脚に突き刺さったBULLの角をどうやって取り除くかが今の問題だ。角には毒があり、脚に刺さっている時間が長ければ長いほど体力と意識が落ちていく。


「スケさん!しっかりして!!」


「う……うう……本当に痛い……」


魔法が使えない俺は敵の攻撃を受けると本当リアルにダメージを受ける。そして普通の人間と変わらないので、敵の攻撃をまともに受けると普通に死ぬ。


「ホマー……この角を取る方法を考えてくれ!俺は意識がはっきりしない」


「魔法を使うわ!」


ホマーは俺の脚に手をかざす。意識を集中し、脚の細胞と角を分離していく。しかし角を構成する組織は脚の細胞と高速で結合していく。角の組織が結合する速度より早く分離できなければ、角は俺の命を奪っていくだろう。


「間に合わない!」


「ホマー、こうなったら脚を切断するしか無い」


「そんな……!そんなことしたら一人で歩けない状態になってしまうわ!!」


「このままでは歩くどころか、俺の命がなくなってしまう。やるしかない」


こうして俺の脚は、切断することになった。


……


BULLとの戦いから一ヶ月が経った頃、病院を退院した。季節は夏になっていた。


退院した日、家に戻った俺はホマーとじっくり語った。


「スケさん、本当にごめんなさい。私がちゃんと魔法をかけられなかったばかりに……!」


「それは違うよホマー。君はやることをやってくれている。これ以上、何を望むのか」


「……」


「君がいてくれなかったら、何もかもが終わっていたよ。それに、まだワイバーンはどこかで息を潜めているに違いない」


「この戦いは、持久戦になるかもしれない」


退院後からゆっくりと日常のペースが戻ってくる。ある日、俺はしばらくぶりに出社した。片足を切断したので、車椅子を使って出勤するのには非常に苦労した。まず、駅で人混みを通り抜けるのが大変だった。人は後ろから車椅子の人間が来ても気が付かない。いつもより出社する時間がだいぶかかった。


「スケさん!脚のこと聞いたぞ!?」


「心配かけた。もう大丈夫だ」


同僚が声をかけてくれるのはありがたい。しかし、化け物と戦って脚をやられたとは説明が出来ないので、車にぶつかってしまったと簡単に説明した。


入院中に溜まった仕事を淡々と片付け、早々に退社する。


次の日は土曜日。ホマーとこの土日を使い旅行に出かけた。千葉のとある海岸線をブラブラと歩く。車椅子を彼女に押してもらう。なんとも不思議な感覚だが、とても心地よい。


しばらくワイバーンからのアクションがないのは不気味だが、敵襲を恐れてばかりだと外に出ることも怖くなってしまう。なので堂々と遊びに出ようと考えた。最近はゆっくりと息抜きをする暇もなかったので、とても気分がいい。


「なんでもないようなことが、しあわせだったとおもう」


「古い」


「良いじゃないか。いい歌だろう」


鎌倉時代からやってきた人間に”古い”などと言われても全く説得力がないぞ、と言おうとしたがヤメタ。


「ねぇスケさん、あれ何?」


ホマーが指さした先に海の家があった。丁度、かき氷やフランクフルトなどが売っていたので、買って食べることにした。


「ホマーは何が良い?」


「かき氷……!」


「おっけ!」


イチゴ味のかき氷を2つ注文した。サクサクの氷が熱い体を癒やす。


「ああ、夏はかき氷に限る。うまい、うますぎる」


「おいしいわ、こんなに簡単にかき氷が食べられるなんて、あなたの時代は本当に天国ね」


「ホマーのいた時代では、かき氷ってあったの?」


「わたしの時代では、かき氷は貴族の特権階級が食べるものだったの。氷を削ることが難しかったし、作るのに手間がかかった」


「そうか、製氷機がないし削るのにも電動かき氷機なんてないものな」


「そうよ、あなたたちはとっても贅沢で恵まれてるわ」


「ホマー、この世界にいる限り、いくらでもかき氷を食べると良いよ」


「ふふふ、ここは天国ね」


ホマー様はご満悦の様子だ。


「誰もが貴族のような暮らしをしている世界が本当にこの世で実現するなんて、夢のようね」


「そうだね、ホマーのいた時代からは想像がつかないくらい、手に入れるものには困らない世界になったのかもしれない」


「でも、同時にわかったの。人は手に入れられるものを手に入れたら、それで終わりじゃないということを」


「そのとおりだよ」


人の欲望は留まることがない。美味しいご飯をいくら食べられるようになっても、心を完全に満たすことはない。食欲に満足したら、次は新しいモノを手に入れないと気がすまなくなってきたりする。モノを手に入れても、今度は新しい体験を欲しがる。


「モノ、コト、バの3つを満足させ続けないと、人間は満足できないんだよ。新しいモノ(物)を手に入れたら、新しいコト(事)をしたくなる。そして、新しいコト(事)をしたら、それを誰かと一緒に楽しみたくなる。バ(場)が欲しくなる」


「だから戦争が終わらないのね。私のいた時代も同じだった」


「ホマー、人が戦いを終わらせるときは、きっと誰もが何もしたくなくなるときなんじゃないかって思うことがあるんだ」


「人が何もしたくなくなるときって、それは大事な何かを失ってしまったときじゃないかしら。一切の欲望が終わりを迎えて、人々はただ横たわって緩慢な死を迎えるのを待つだけの存在になってしまうの」


「それは、とても恐ろしいことだね」


時々、ホマーと哲学的な話をすることがあるけど、今日はちょっと深い話をしている気がする。


「スケさん、あなたは戦争は嫌い?」


「うーん、よくわからないな……。俺が生まれて今まで、一度もここで戦争が起こったことがないから」


「でも、他の国では戦争が起きてるんでしょ?今でも」


「そうだよ。でも、遠すぎる場所で戦争が起きていると言われても、実感が沸かないというのが正直なところだ」


「そうかもね。もし実感が湧いていたら、こんなところでかき氷なんか食べる気持ちにはならないでしょう」


「はは……そうだね。人が殺し合っている横で、悠長にかき氷なんか食べていられたら、そいつは狂人だと思うよ」


「スケさん、今、この国では戦争は起きていない。でも、私達は戦争をしているようなものよ。ワイバーンという敵と戦っている」


「そうだよ。でもワイバーンと戦争中でも、俺はかき氷を食べるのを止めないよ。これは息抜きなんだ。次に奴と出会った時は必ず仕留める。でも奴のために俺とホマーの生活が恐怖で何もできなくなるのは、許せないんだ」


俺は今回の戦いを自分の事として受け止められているから、恐怖を克服している。ホマーの目はまっすぐに俺を見ている。その姿を見れば彼女も恐怖を克服しているのが分かる。


「安心したわ。近い内にワイバーンは私達の前に姿を現す。その時は最後の戦いになるかもしれない」


帰りの電車の中で、俺たちはいつの間にか眠ってしまっていた。JR内房線は長い。俺たちの眠りの中でも、敵は爪を研いでいた。


続く

6月はネットフリックスで映画、アニメ三昧でした。7月からは重い腰上げてお仕事お仕事。忙しくなります。

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