第五幕 WYVERN(ワイバーン)「せり上がる昇り龍、その二」編
「ホマー!なんで一人で外に出たんだ!?」
本当に人の予想の斜め上を行く娘だなぁ……!
「ホマー!なんで一人で外に出たんだ!?」
「ごめんなさい……私一人でも処理できると思って、調子に乗ってしまったわ」
「君は時々、トンデモナイことを考えるよね!?」
ホマーは人の考えの及ぶところの斜め上を行く発想力があると思う。たしかに、俺ではあの人外の化け物と対峙しても大した力は発揮できない。でも、状況を変えて窮地から活路を見出す力は、今までの戦いの中でも証明してきた。
「ホマー。確かに君の言う通り、俺は弱い。正面切って戦ったら簡単に殺されてしまうだろう」
「……」
「でも君が死んでしまったら、俺が戦っても勝つことはまず無理だ。俺が死んでしまったら……いや、そんなことは考えても仕方ないこと」
「あなたが死んでしまったら、私はここにいる意味がない」
「ホマー、どちらかがいなくなってもこのお話は成り立たない。俺はホマーが死ぬのは嫌だ!」
BULLを倒すためには、後ろから攻撃を仕掛ける必要がある。前からの攻撃は全て弾き返されてしまう。そこで作戦を考えた。
「作戦がある。ホマーは魔法で俺の防御力を最大まで高めてほしい。で、俺はこれを使ってBULLを引きつける。無敵のオトリ作戦だ」
そう言って俺は家から持ってきたこの”赤いマント”を出す。小学校の時の学芸会で使った赤いマントだ。テレビでマタドールが闘牛をおびき寄せる時に使うような方法で、BULLを引きつける。
「その間にホマーは奴の後ろから魔法攻撃を仕掛ける。そして決着をつけよう」
「本当にそんなマントで効果があるのかしら……」
「大丈夫だ。仮に赤いマントをみて興奮しなかったとしても、バカにされたと思って怒って襲ってくる。どちらにしても必ずヤツから来る作戦よ!」
ドドーン!!ゴゴゴゴゴ……!!!
BULLが迫ってきている。俺たちは車で川沿いの土手の陸橋下に来ている。ここなら安全かと思ったが、どうやらそうでもないらしい。BULLは俺たちの場所に気づいているらしい。
「ぐふふふふ!!資長!!政子!!いるのはわかっているんだぞ。出てくるがいい!!」
「向こうは待ってはくれないらしいな。ホマー、行ってくる。あとは作戦通りに!」
「気をつけて……!」
BULLは土手の上に待ち構えていた。改めて見てみると体がでかい。前に戦ったBEARくらいはある。大型トラック並みのデカさだ。
「へへ……!牛野郎!でけぇ図体しやがって。でも気が小さいらしいな。そんなとこに突っ立ってないで、こっち来やがれ!」
俺もここ最近の一連の戦いの中で、気がでかくなってきたらしい。前までこんな挑発的なこと言えなかった気がするんだ。
「ふふふ、資長。お前は過去のデータによると非常に姑息な戦い方をするという事らしいな。お前の挑発にはそう簡単には乗らない。お前を相手にするより北条政子を先に殺す。お前の相手はその後でもゆっくりやらせてもらうぞ」
BULLはこちらの戦力を理解しているらしい。だが。
「牛野郎、これを見てもお前はそこに立ち止まっていられるかな?」
赤いマントを出し、ヒラリヒラリとなびかせる。今日は天気がいいから、陽の光を浴びたマントは赤々と輝いている。絶好の洗濯日和だぜ!
「グルル……!!」
マントを翻すとBULLの動きが止まった。作戦は成功か!?
「……そんなものを翻して、貴様はマタドールか何かか?今時、本物の牛だってそんなものには引っかからないわ」
冷静なツッコミをされる。まじか。どうやら挑発が足りないらしいな。もっと煽り文をいれてやる必要があるのか。
「へい!牛野郎、ビビってこっち来れないんだろ。お前、本当に牛なのか?その角はお飾りなのか?そんなんじゃ、母ちゃん泣いちゃうぞ?おお?」
「……」
「お前の角は強そうに見えるけど、本当は大したことないんじゃないの?BULLなんて大層な名前で呼んでやったのに、それじゃレッドブル飲んでたほうがマシじゃない?」
「……」
「あら?おうしさん、おこっちゃった?ほら?本当の事言われてだまっちゃったんだ?残……」
ドゴオオオン!!!
一瞬何が起こったのか分からなかった。気づいたら俺は、物凄い速度で空を飛んでいた。思った以上に挑発が効いたらしいが、これは魔法で守られていても痛い。地面に激突したとき視界が一瞬、真っ赤になった。本当に魔法は効いているのか?
「グルルルル!!!」
「お……ごおぉ……いってぇ……!」
「キッサマ……!!完全に消し飛ばしてやる。あと、母ちゃん馬鹿にする奴は許さねぇぞ!!!」
BULLは俺の事しか見ていない。一度怒りのスイッチが入ったら、他のことが考えられなくなる性格のようだ。
BULLが頭を地面近くまで下げ、足踏みをし始める。再度向かってくる合図だ。
「うおおおお!!!しねぇぇえ!!!!」
ドッドッドッドッドッドッドッドッ!!!!
ホマー、そろそろ来てくれ……!こいつの攻撃、こちらが魔法で守られてるとはいえ、結構痛いよ!そして怖いよ!迫力満点だし!牛さんの顔って近くで見るとこんなにデカかったのね!
ホマーがBULLの背後に現れた。いいタイミングだ。そして手を空にかざすとBULLの体が赤く光る。
「ぐ!!ぐおお!?なんだこの熱は!?熱い!!熱い!!」
BULLが苦しむように暴れる。そして、BULLの体があちこちから燃え始める。
「退場よBULL。今晩のおかずは焼肉ね。」
「ぐおおお!!!?体が熱い!!そして動けない!?」
「へへ……BULL。お前は俺のことしか見てなかったからそうなるんだよ!」
「ぐごごご!!!ここで終わりだと思うなよ!?」
BULLが最後の力を振り絞って体を無理やり動かす。その時、BULLの角がこちらに向かって放たれた。角は全速力で飛んでくる。
「な……!?何!?その角、飛ばせるのか!!??」
「スケさん!!」
ズン……!!
気がつくと角が俺の右足の太腿に突き刺さっている。最初、熱いという感覚だけがあったが、一瞬にして痛みに変わった。
「う……うわあああああ!!!あああ!!痛い!!!痛いよ!!!」
ホマーの魔法が俺を守っていたはずなのに、この角はそのバリアを貫いて俺の体に突き刺さっていた。
「ぐふふう……その角は資長、お前の体を徐々に蝕む……悶え、くやみながら死ぬがいい……!!」
BULLの体は崩れ、土くれに変わっていった。BULLとの戦いは終わった。
「スケさん!!」
「う……うう……」
続く
誤字脱字が多いので気をつけます;
主人公が敵を煽り気味なのはストレスが高まってるからですかね。蒸し暑いですしおすし。
今月(6月中)はニートみたいなもんなので更新頻度高めっす。




