第三幕 WYVERN(ワイバーン)「振り下ろされる腕」編
2本の脚と2本の腕を持つソイツは、三メートルほどある巨大な熊だった。
第三幕 WYVERN「振り下ろされる腕」編
2本の脚と2本の腕を持つソイツは、三メートルほどある巨大な熊だった。
巨大な熊は腕一振りで人を切り裂く。その健脚はトラックほどの速さを生み出し、人間の脚では到底追いつくことなど出来ない。
「なんだこいつは……今までの敵とは違う。本当にこの世界で力を発揮することができるのか」
「ぐ……ぐふふ……お前が太田 資長か」
「人の言葉をしゃべるのか!?」
「俺の知性は人間のそれと同様、この現実の世界で効力を発揮する物理的な肉体の力をもつ。これは、夢ではない」
そいつは言った。”夢ではない”と。
「変だな?お前の名前を俺は知らないから、お前がなぜこの世界で具現化しているのかがわからない」
「この世界に現れるために、なにも資長、お前の力が必須というわけではない。この力は、お前の専売特許じゃないんだよ。早速だが、お前には死んでもらう」
「お前は何者なんだ」
「俺の名は”BEAR”。殺人熊と呼ぶものもいる」
BEARはそう名乗った瞬間、目の前から消えた。刹那、背中から打撃音が聞こえた。
そして自分の体が浮いた。天と地が曖昧になり、ぐるぐると視界が回転したかと思うと、地面に横になっていた。息が苦しい。空気を吸うことも、吐くこともできない。
「くっ……がはぁ……」
「ほう、一撃で死なないとは……これは驚きだ。お前、なにかを隠しているな」
確かに、これだけの打撃を受ければ骨が砕け、肉が引き裂かれて血を吹き出してもおかしくない。
不思議なことに、体が戦う前より軽い感じがする。そしてよく見ると薄い青色の光が体を包んでいるのが見えた。幻覚なのか?
「資長っ!!」
「その声は、ホマーなのか!?」
そうか!これはホマーの魔法か何かなのかもしれない。なんかさっきお経みたいな変な呪文を唱えていたから、その詠唱効果が働いているのかもしれない。
ホマーが現れた。BEARの出現を予期して、この場所にやってきたという。早いぞホマー!さすがは俺の嫁。
「その熊は普通の熊じゃない!資長じゃ勝てる相手じゃないわ!」
「く……!どうやらそうみたいだ。いままでに出会った奴とはだいぶ”力の方向性”が違う気がする。なんというかこう……リアリティがある!」
「リ……リアリティ!?」
「例えば、殴られたら”本当に”殴られるような感覚だ。変な話だが、今まで出会った奴らと戦って”本当の意味で”ダメージを受けたのはこれが初めてかもしれない」
つまりBEARの攻撃を受けて俺が死んだら”本当に死ぬ”ことになる。これは仮説だけど、今までの戦いで俺が死んでたとしても、本当の意味では死んでいなかったかもしれないのだ。
「お前は!!北条政子か!!」
「卑劣な化物熊(BEAR)、気安く呼ぶでない。今からお前は私と資長に殺されるのだ」
「ぐふふふ……強がっているのも今のうちだけだ!!」
BEARは振り向きざまに体を大きく振り上げた。
「喰らえっ!!ベアトルネードッ!!!」
上段から振り下ろす爪の回転攻撃が襲いかかってきた。すかさず俺はビルの影にホマーの手を引き身を退けた。その瞬間、BEARの爪が地面に激突し轟音が周囲に響く。
ドン……!ビシッ!!ガシャン!!ザザザザザ!!!
あんなものに当たってしまったら、俺たちの体は文字通り粉砕していたに違いない。
「ぐふ……!命拾いしたな。次は無いと思えよ」
「ホマー!BEARは上段攻撃をする特性があるようだ。奴を俺が引きつける!そのときに奴が俺に向かって攻撃を放つだろう。その瞬間に後ろから魔法攻撃を仕掛けるんだ。で、保険をかけて俺にさっきの魔法をかけてくれ。そうすれば万が一、奴の攻撃が当たっても死ぬ確率は減らせる」
「資長……もしあなたがBEARの攻撃を避けられなかったり、私の攻撃がBEARに効かなかったとしても無傷では済まないかもしれないわ」
「心配するなよ。きっとうまくいく」
虚勢を張るしかない。そんなことは分かってる。しかし、ここでBEARを止めなければ、俺達は終わり。おそらく、この世界も。
それに今逃げたところで、俺達は逃げ切れないだろう。BEARの脚はトラック並みの速度が出るのだから。
「俺がカウントダウンする。0になったら奴の後ろに回り込むんだ」
「わかったわ」
BEARがこちらに近づいてくる。ビルの角のすぐそこだ。
「ぐふふ……怖気づいたか。今すぐ楽にしてやるから、うふ。ででおいで」
「気持ち悪い声で囁きやがって。行くぞ……!3・2……」
もう今しかない。
「1……!!」
「ぐふふ、あらー!?こんなところでどうしたの?」
BEARがついに目の前に出てきた。今しかない。「あらー?」じゃないぜ。お前はもう死ぬんだよ!
「0!!!」
すかさずホマーが走り出す。
「ぬうう??」
「BEAR、退場よ!」
ホマーが両手を上げると赤い光があたりを照らす。その瞬間、BEARがガタガタと震えだした。
「な、なんだこの力は!?か、体がうごかん……!!」
赤い光はさらに輝きを増し、BEARがこの世の生き物の声とは思えない叫び声を上げた。
「ぐうおおお!!!!おおおお!!!痛い!!この私が”痛み”を感じているだと!?」
「BEAR、こちらの力を読み違えたな。残念だがお前はここで退場だ!」
「おおおお!!こうなったら!自己破産ッ!!」
BEARの体が急に膨らんだ。
「ホマー!やばい予感がする。ヤツから離れろ!!」
「はい!!」
俺とホマーはBEARから離れる。その瞬間、BEARは爆発した。
ノリと勢いで書いてます……!




