三章-end-
行く秋の冷笑
気が付けば、冥い空はそこには無かった。
欠伸が出た。そういえば殆ど寝ていない。
今日の授業は居眠りばかりになりそうだ。
屋根の上には寝不足の俺と、今にも寝そうな蒼良と、ゆっくりと起き上がる紗良と雷に打たれた萌。
鳥の声が小さく響く。
「……アンタの『ヴァルキリー』は、【強制送還】じゃ、なかったの…?」
ぎごちなく、萌は起きながら、紗良に問う。
「それは鎌の方。今のはこの鈴の能力、【神託】。」
「【神託】…、まさか」
「そう。幻の『天賜器』、『ジャンヌ』。
見つからなかったのはずっと『ヴァルキリー』に付いていたから。私も知ったのは最近だけどね♪」
いつもの可愛らしい笑みを浮かべ、紗良はこちらに歩いて来た。
「お義姉ちゃん、やっぱりすごいね☆
格好良かったよ☆」
「蒼良が頑張ったからよ。
あれがなかったらきっと使えなかった。負けてたかもしれない。」
そして、紗良は俺を視界に入れた。
どちらからともなく笑う。
駆け寄り、天使は俺に軽く抱きついた。
「衛多くん…
さよなら」
何かが、通り抜けたような気がした。
突き飛ばされるように体が離れた。
バランスを取ろうとして、取れない。
屋根にぶつかり、ずり落ちて死ぬ前に、
俺は消えた。
最後に聞こえたのは、
「馬鹿じゃないアンタ!?
天使が人間なんかに抱きつく事なんて、連れていく時ぐらいのものよ!!」
と言う、
萌の、冷たい笑い声だった。
これで三章は終わりです。
次の終章で、この『下界編』が終了となります。
閲覧、ありがとうございました。