一章-end-
桜花の笑み
一週間後。
短かった春休みが終わり、俺はまた学生としての日々を送る。
灰色のブレザーはようやく体に馴染み、だが窮屈なものを感じる。
スニーカーを履き、俺は家を
「おはよう衛多くん♪」
「紗良!?」
目の前には黒いブレザーを着た少女。一房ずつ二つに結んだ長い髪が揺れる。
「学校行こっ♪」
「はっ!?何で!?
お前天使だろ!?」
天使の筈の少女は何て事のないように言う。
「だって、高校生活楽しみたいし」
「意味分かんねーよ!!」
「あははっ。
さ、行こうよ♪」
そう言って左手を差し出す。
その中指には、銀色のリング。
俺の、『手錠』の片割れ。
「分かったよ」
手を取らず、俺は通学路を歩き出す。
少しむくれた紗良も後についてきた。
五分ぐらい無言で歩き、ようやく俺は喋り始めた。
「そういえばお前、どこの学校行くんだ?」
「ん?
衛多くんと同じ学校だよ?」
「…お前何歳?」
「永遠の十七歳♪」
「あっそう…」
そこで、強く風が吹いた。
ゴオッと音をたてて、それは樹々を揺らす。
生えていた樹は桜。
花弁が風に舞った。
「綺麗だね!」
そう言って紗良は桜吹雪の中を歩いていく。
だが彼女は唐突に歩みを止め、振り返り、
笑った。
花が咲くように。
光が強さを増したように。
桜が踊る。
舞い、跳ね、廻る。
そう、俺の中で、外で、彼女の笑顔を引き金に。
運命は、廻り始めたんだ。
これで一章は終わりです。
-end-はその章の後日談みたいな役割をしています。
比較的重要な章なので、見逃すと話についていけなくなります、注意。
閲覧ありがとうございました。