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Silver Ring  作者: 紫花
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終章-天界編-

昇格の面持ち

私はまた、神様に呼ばれた。


(処罰かな…)


今度こそ『堕落』だろう、けれどそれも良いかもしれない、そう考えながら話を聞いた。


―よくやりました、紗良・セイクル。―


「え?」


思ってもない、言葉。

私を驚かせるには、それだけで十分だったのに。


―使命を遂行しましたので、約束通り、貴女を大天使に昇格しましょう。―


昇格、だなんて。

衝撃の大きさに、私は声を上げた。


「そんな…っ」


―嫌なのですか?―


「そういう訳ではありません。

…こんな事で、大天使になるのは、少し。

それに私の使命は…」


―『衛多・バンクスを無力にする』、でしたね。

果たしたじゃないですか。彼の『堕落』という結果によって、ね。

それに迷う事はありません。誇る事ですよ。―


流されるように、私はそれからすぐに大天使になる儀式を受けた。

儀式といっても仰々しさはなく、穢れを払い、祝詞を読むくらいだ。

それはすぐに終わり、私は自室で新たな服を待つことになった。

大天使としての新しい衣装を着て、それから外出が可能になるらしい。

確かに私の服装は、お世辞にも大天使らしいとは言えなかった。

その間誰とも、私は話をする事が出来ない。


(聞きたい事、あるのに…)


私はひたすら待った。

数時間して、玻璃さんがやってきた。


「紗良・セイクル様、お召し物が出来上がりました」


「様」だなんて、彼女には言われたくなかった。


「あ、ありがとうございます…、あの」


「申し訳ありません、会話は禁止されておりますので…」


「あ…」


玻璃さんは一礼して、部屋を出て行った。

窮屈に、私は感じた。

小さくため息をついて、新しい服に着替える。

大半は昔とまるで変わらない。

だが、足首程の長さの上着を羽織り、ただ結っていた髪に、羽衣と同じ素材の布を結ぶ事になった。

姿見で自分を確認する、前よりは大天使らしくはなった、気がする。

その時、私は初めて表情を知った。


泣いていた。


目が赤く充血してしまっている。

それはどうしようもなかったので、涙を拭って、私は外に出た。

神様の元へ向かうのだ。


「…紗良・セイクル、参りました」


―立派な姿ですね、紗良・セイクル。…その目は?―


「何でもございません、神様。大天使になったのが嬉しくて…」


嘘だ。これは自分でもよく分からない。

神様は特に追及せず、話を進める。


―そうですか。では、大天使が出来る主な事を伝えます。―


「はい」


―禁呪を含めたあらゆる魔法の行使、天使の統率、地獄や下界の行き来が自由になります。―


「…自由、なんですか?」


―はい。天使の場合と比べれば、ですが。―


天使の場合、そこに本当に用があった場合、大天使と神様両者の許可が降りなければ行く事が出来ない。さらにその他たくさんの許可申請がある。


(行けるんだ、天使の時より自由に。

もしかしたら、『堕落』しちゃった衛多くんに会えるかもしれない…)


今の私に最も必要な特権。

それを思うとこの昇格は良かったのかもしれない、そう思った。


―ああ、そうでした。貴女の『福音』はどうしましょうか?―


最も大きな大天使の特権、『福音』。

私は知っていた。それが自分の望む力になる事を。


「…衛りたいです。全ての世界の人々を。

衛る為の、翼が欲しいです」


―分かりました。授けましょう、その力を。―


「ありがとうございます」


そう言って、話が終わった私は神様の元を去った。

足元の白い床を見た。

この遥か下に、衛多くんがいる。

私が望んだ力は、地に堕ちた君も衛るから。

左手を胸元に置き、祈る。


(待ってて、衛多くん。すぐに会いに行くから…)


彼に届くように、私は祈る。




銀の指輪を通して、地の底へと。

天界編終了です、お疲れ様でした。

次回からは地獄編です。


閲覧、ありがとうございました。

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