間章-end-
断定の談笑
十二月二十五日、午前八時。
昨日の礼服のまま、俺はベッドに倒れていた。
何時間か前の事なのに、昨日の事が頭から離れなかった。
小さな背中が、
真っ白い姿が、
涙に濡れた顔が、ずっと脳内を巡っている。
あの時、言いたい事がたくさんあった。
「なんで一人でいるんだ」とか。
「礼服似合ってる」とか。
けれど、彼女はあの時泣いてしまったから。
俺が、泣かせてしまったから。
だからただ、抱き締める事しか出来なくなっていたんだ。
(…それに)
あの後、紗良は先に帰ってしまった。
(…会いに行こう)
そう思った時だった。
ノックの音がした。
「…どーぞ」
小さな音で扉が開いた。
羽衣。脇辺りまである白い手袋、同色の太腿まである白い長靴、桜色の薄いミニのワンピース。
紗良だ。
昨日の礼服は、手袋と長靴にファーが付き、首と裾にファーが付いたノースリーブの白い腿までの上着に、中には銀のタイトスカートを履いていた。
白いファーの髪飾りも付いていて、まるで雪に包まれたような格好だった。
春になって桜が咲いたような格好の彼女は、
「…おはよ、衛多くん」
俯きがちに挨拶の言葉を投げた。
「…おはよう。どうした?」
足を床に投げ、俺は彼女に近付いた。
「うん。…昨日、言いたい事あったけど、言えなかったから今言いに来た」
「なんだ?」
少しの間を置き、彼女は言う。
「…、
メリークリスマス、衛多くん♪」
笑って上げた紗良の顔には、涙で赤くなった目元があった。
その時、俺は決めた。
罪を背負った俺でも、彼女だけは衛っていこう、と。
そして、俺は気付いた。
「大切なもの」が、何なのかを…―。
次の章で天界編は終了です。
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