四章-end-
聖母の嘲り
遠く、近く、靴音が響く。
それはかつて聞いた優しい音には遠く。
冷たい氷がぶつかり合う音に近かった。
長いスカートに、中には薄く線が引かれたワイシャツ。
提灯袖が、彼女を少し、高貴なものへと見せている。
普段、重力に引かれたままにしている髪は、きつく詰められていた。
髪に引かれて釣り上った目元が、彼女のいつもの雰囲気を、全く違うものにしていた。
さながら、優しい天使から冷徹な鬼になったかのような。
そのくらい、彼女の印象は変わっていた。
「驚くべき事が、起きてしまいました…」
―どうしました?―
頭に直接響く声の持ち主、神に語りかける女は、血のように紅い眼を光らせ、淡々と事実を述べる。
「衛多・バンクスから生命力を取りましたところ…、神様、あなた様が与えた分より多くの生命力が取れてしまったのです。」
―彼は、大丈夫なのですか?―
あまり、感情を読み取れない声。
両者の声はそれほどに冷たいものがどこかにあった。
「大丈夫どころか…、連れて来る前と何ら変わりがないのです」
数秒の間の後、嘆息が響く。
―…それは、大変な事になりましたね。
もう少し、詳しく調べなくては…。―
その言葉に、女は素早く応対する。
「分かりました。では、蒼良の力を使いますか?」
女の応対に満足した調子を、少し声に乗せながら、神は快く了承する。
―…そうした方が良いでしょう。あれは役立ちますから。―
神の了承に、下げていた視線を上げ、女は真っ直ぐ目の前の空間を見つめる。
「分かりました…フフ…。」
不敵に笑う女、静歌・キャロルは首のロザリオに触れた。
「あなたの仰せのままに…神様…」
更新遅れてしまい申し訳ありません。
なんだか前書きと内容がかみあってませんが、ご容赦ください。
閲覧ありがとうございました。