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89 情報の話


「60万だったな。ちゃんと用意してあるぜ」

「数日間でよく貯めたなあ」

「結構な情報を放出しましたけどね。ボスが槍を手に入れるのに拘ったんで仕方なく」


 苦笑しながらマイスさんが稼いだ方法を吐露する。いや、情報?


「情報と言うのは?」

「おお、ナナシは俺たちとは初めて会うから知らないんだろうけど、嵐絶は情報を取りまとめている面もあるからな!」


「未知の情報はお金になりますからね。貴方が解放している金の卵の孵し方みたいなものですよ」

「ああ、なるほどー」


 アイテム画面から譲渡を選び、槍を載せる。同画面に金額が60万ぴったり載ったのを確認して同意すれば、トレードが完了した。


「おいおい、値段を吊り上げたりしねえのかよ?」

「いや、別に。この値段だって競売じゃこれくらいじゃないかってレンブンが言ってたから」


 レンブンの名前を出せば、他のクランメンバーがびっくりしていた。

 ジョンさんとマイスさんも少々苦い顔をしている。


「魔王とお知り合いなのですか?」


 マイスさんが顔色を窺うように聞いてくるが、魔王ってなんだ? レンブンの渾名かなんかか?


「レンブンなら普通にフレンドだけど」

「「ぶっ!?」」


 ああ、なんかこの反応はあれか。俺と嵐絶とでは、レンブンの対応にずいぶんと差があるみたいだな。

 現に後ろの方ではクランメンバーの人たちが、好き勝手なことを話しているが。


 「魔王と、友達、だと!?」

 「あの、冷淡冷酷塩対応の御仁と、対等!?」


 もしもし、レンブンさん?

 アナタ、普段の外面(そとづら)はどういう態度で他のプレイヤーと接しているのかね……。


 俺が首を傾げている間に、マイスさんの方で掲示板に「嵐絶が槍を買い取った」ことを報告するそうだ。


「そういやあ、この槍はイカから出たっつー話だが、そのイカってのは釣ったのか?」

「スキッドランサーのことか? あれは倒すの大変だったんだ。突撃しかしてこないし、潜水は制限時間があるし、スキルあっても動きはやっぱりニブイし。他にも……」

「待て待て待て!」


 指折り数えながら水中戦の問題点を上げていると、ジョンさんが慌てて俺の言葉を遮ってきた。


「何ですか?」

「マイス、ルビーを呼んできてくれ。ナナシのそれは立派な情報だからな、こっちで精査して買い取ってやる」


「ただの水中戦なのに?」

「水中戦だからだ!」


 なんで水中が情報になるのか分からないなあ。

 マイスさんがメンバーの中からぽやんとした目付きで、水色の髪の女性を連れてきた。

 彼女はルビーと言って、魔術士でクラン・嵐絶の書記を担当してるんだと自己紹介をされた。


「ナナシさん。とりあえず場所とモンスター名から聞きますね」


 聞き取りがジョンさんから、マイスさんとルビーさんになった。


「場所はヘーロンの南の断崖絶壁の下の海で、モンスター名はスキッドランサーっていうイカだな。全長3mくらいで体の半分が槍みたいになってて、脚は5分の1くらいしかなかった。戦闘方法は遠距離から勢いを付けての突撃だけっぽい。他の攻撃方法は確認していない。ああ、そう言えば採取の出来る珊瑚が生えてたな」


 すっかり忘れていた。

 インベントリから珊瑚を取り出すと、マイスさんやルビーさんが目を丸くしている。

 他のクランメンバーの人たちは飲んでた水を吹き出したりしていた。よく分からんな。


「色々突っこみたいことはあるが、ちょっと聞いていいか?」

「まあ、俺で分かることなら」


 額にシワを寄せたジョンさんが手を上げて聞いてくる。

 具合が悪そうな表情だが、大丈夫かね?


「その断崖絶壁はどうやって降りたんだよ」

「50~60mくらいしかなかったから普通に飛び込んだけど」

「「「…………」」」


 何故目を丸くして黙る?


「帰りはボルダリングみたいにして崖を登ったし」

「おーけー、おーけー。分かった、理解した。どうしてソロがこうも前へ前へ行ってるのが不思議だったんだが。お前基礎スペックが諸々トンデモだな!」


 ビシッと指差してそう言われた。諸々ってなんだ?


「ディスられてるのは分かった」

「ディスってねーよ! 遠回しに化け物認定してんだよ」


 化け物って褒め言葉じゃないよな?

 首を傾げているとルビーさんが手を上げて質問してきた。


「あのー、水中って装備したままですか?」

「装備? 一応水中用装備があるけど」


 ウェットスーツを取り出して見せる。全員が鑑定して性能に唖然としていた。

 まあ、そうな。そこは同意する。


「これはミミズの皮で住人が作ってくれたんだ。食事の礼に」  

「セルテルの、ってある名前が制作者か? 住人に作れるってことはプレイヤーにも作れるのかもしれねえな」


 帰ったら専属の職人プレイヤーに頼んでみるそうだ。俺も誰かに頼まなくては。


「ああ、あとスキルの【水泳】と【潜水】をいっぺんに取ったら【半魚人】ていう称号が来たから」

「まだあるんですかっ!?」


 マイスさんが悲鳴を上げる。

 どうやら水中戦とモンスター情報と採取ポイントとウェットスーツの精算をしていたらしい。そこに再び爆弾を投下したので、資金が心許なくなったそうだ。


 あと情報として売ったので、他に知る人に口止めを頼まれた。

 ウェットスーツはアルヘナで、水中戦云々はレンブンとハイローか。それぞれにメールを送信する。

 レンブンからは直ぐに『了解しました』と、やや遅れてアルヘナとハイローからは『危なくて口外出来ませんよ(出来ねーよ)!!』と返ってきた。


「じゃあ情報料として称号関係が50万。水中戦とモンスターで20万、採取関連が10万、アイテム関連で10万、でいいな?」

「高くない?」

「相場だ! っつってんだろう」


 相場が分からないから頷く。

 お金ばっか増えていくな。今度はお金の使い道を探さないと。



 別所でありきたりなテンプレ小説を投稿(笑)

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  前々から数字を書くときに、「5〜60m」の様な書き方をしているのが気になります。(競売にかける時の予想の値段に関しても同じような書き方をしていました。)  おそらく「約50m〜60m…
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