86 生産作業の話
さて宝箱フェア2日目ログインである。
昨日は撮影ついでに気になる海岸だったんで色々見て回ってきた。
海岸というか泳げる所は極僅かな入り江、後は崖だけどな。
崖の海岸線を有する区域は鷺和という。
これといって目立つものはなく、自然と住宅地の広がる区域だ。
朱鷺城の東側に位置し、境目に朱鷺城遊園地がある。
朱鷺はイビスなんたらだし、鷺はヘーロンだかヘイロンだったと思う。北に熊沢があるのが決定的だろう。
滅茶苦茶怪しいんだが、あるブイってこの辺の地域をモデルにしてんだろ。
探せば遊園地に相当する場所が見付かるのだろうか?
でも森の中にあったの魔女のアナイスさん宅だったしなあ。
あそこより更に奥地行くと、国境を押し通ったことになりそうで怖い。
ヘーロンの街中は職人関係のプレイヤー以外が少ないような気もするが、また何かあったのかな?
一応冒険者ギルドに行って、進化したアレキサンダーの従魔証について聞いてみたが、そのままで良いそうだ。
今日はアレキサンダーの戦闘力を確かめに砂漠側に行こうと思う。あとパワークラッシュの試し打ち。
リアルだと鷺和の東に砂漠なんかなかったけど。あるのは砂娑和という湖なんだが、何から何まで同様という訳でもないんだろうな。
「おっと忘れてた。ポーション作らないと」
東門手前でUターンして商業ギルドへ向かう。
丁度空いていた作業部屋を使って、ポーションを作りまくる。
念のため簡易作成ではなく、手順を確認しながら手作業でだ。手作業で作ると時々HQ品が出来る。
俺のレベルだと15本中1個くらいだ。
あともの凄い勢いでレベルが15になった。その後はゆっくりになるようだ。
HQ品のポーションはプラス表示が付く。効果は通常のものより5%上昇すると出た。
オロシの所には売ってなかったなこれ。
ちょっと確認のため、ポーション状態だとどうなるのか、10本分を神器のたらいに入れて様子を見てみる。
ポーションのままなのか、ポーション茶になるのか、ちょっと楽しみだ。
だいたい作り終えた頃に作業部屋に「ちょっといいですか?」とギルド長のふとっちょオバさんが入ってきた。
「ナナシ様から委託されていた品物の競売が終わりました」
「は、早いですねえ」
「競売は10日おきに開催されるのですが、丁度いいところに突っ込めましたから。落札額は220万Gでしたので、ナナシ様の取り分は手数料の2割を差し引いて176万Gになりますね」
「……はい?」
なんか最初に聞いた想定額より倍の値段が聞こえたんだが、空耳か?
「最初90万くらいだと聞いたんですけど」
「ええ、でもこの手の物は出品が10年ぶりくらいだったものでして。高位貴族の方々がずいぶんと白熱してらしたようですよ」
お貴族様怖いな!?
そんな金額がポンと出るほうが驚きですわ!
「ええと、全額貯金でお願いします」
「分かりました。ではギルドカードをお預かりします」
ふとっちょオバさんのギルドマスターは出ていった。
カードは後でカウンターに寄って受け取ってくれとのことだ。
シラヒメは俺が作業している最中に、糸の束を作っていた。
この前のコインをくれたオジさんの件もあって、必要になるんじゃないかと思ったようだ。
ランクとしては中の中くらいか。20束を渡してきた。
糸を作ると腹が減るから食事を出す。
野菜炒めを出してやると、皿ごと腹の下に抱えるようにして食べ始める。
「誰も取らないって」
「チー」
シラヒメが気にしている方を見ると、もの欲しそうな目をしたグリースとアレキサンダーがいた。
「いたよ」
グリースにはグリンピースみたいな豆を塩茹でしたやつを、アレキサンダーにはリンルフの生肉を与える。
体が大きくなった分大量に食べるかと思ったら、小さい時と変わらぬ量しか食わなかった。
戦闘すればまた違うのかな?
商業ギルドのカウンターでカードを返してもらう。これで貯金が216万くらいになってる筈だ。怖いなー。6万くらい下ろしておくか。
東門直前でまたもやUターン。ハルハルトから防具完成の報が飛んできたからだ。
プレイヤー露店の方は閑古鳥が鳴いていた。昨日の混雑は何処へ?
「ああ、そりゃビギナーさんのせいじゃないか」
「え?」
熊革の鎧を受けとるときに聞いたら、思いがけない答えが返ってきた。
「なんでも先日、酒場でビギナーさんのPK被害を聞いた信者の連中が大挙してPKKに行ったって話だぜ」
「えええーっ!?」
話を聞いていた他の職人プレイヤーも楽しそうに話してくれた。
「説教教の連中も動いたって言ってたぜ」
「攻略組も熱心に狩ってたとよ」
「なんか騎士団に話付けた奴もいて、スラムに巣食ってた闇ギルドぶっ潰したって聞いたぜ」
「それは、お礼をして回った方がいいのかなあ?」
「いやいや、もうそれ自体がイベントみたいな感じになってたから、ビギナーさんが気にするこっちゃねーよ」
「この波に混じってただけの連中も多かったみたいだしな」
「ビギナーさんはあれだ。またなんか見付けて来て、みんなに知らせてくれりゃあいいんだぜ」
「今度はまたクエストとか頼むわ」
「ああ、まあ、善処する……」
情報源はアルヘナだなやっぱり。その後でそんな大ごとになっていたとは……。
「ビギナーさん」という自分の知名度がおっかねえ。迂闊なことも出来ないなこりゃ。
砂漠まで出て何か探すとするか。
どうも硬い・毒持ち敵が厄介なようで、こちら側には街の近くで戦闘する者以外はいないようだ。
一応道はあるんだし、オアシスでも探すか。
現在のナナシ装備品
●武器
リングベアの籠手
金属バット
●アクセサリー
オンドゥリの腕輪
根性のベルト・バックル
根性の鉢金
灰色ネズミのマント
●防具
熊革の胸当て
蛇皮の強化ズボン
熊革のブーツ
気にしてた方がいらしたので。




