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81 進化する話


「ああ、疲れた」


 道の真ん中に座り込んでポーションをがぶ飲みする。今日だけでずいぶん消費したなあ。

 同時にポーンといういつもの音が頭の中で鳴った。あー、今度は何だ? 称号か?


 ━━【解体】スキルと称号【ネッツアーの加護】により、倒したプレイヤーキラーから奪うものを1種類に限定出来ます。直ちに選んでください。


 なんだこりゃ? 面倒だなあ。ええと選べるのは「武器」「防具」「アイテム」「スキル」の4つか。

 げっ、カウント60秒でもう半分過ぎてんじゃん。武器防具はいらん。アイテムも今は飽和状態だからスキルしかないか。ぽちっとな。


 プレイヤー○○から【剣】スキルを奪いました。

 プレイヤー○○○○から【水魔法】スキルを奪いました。

 プレイヤー○○○から【隠れる】スキルを奪いました。

 ━━称号【強奪者】を手に入れました。対象となるものはプレイヤーキラーのみです。


「ぶっ!?」


 いきなり3つのスキルが増えて久しぶりに称号が増えたと思ったら、なんか名称が不安しかねえ。

 何々、倒した相手のスキルを強制的に奪う。対象となる者はPKのプレイヤーのみ?

 なにこれ凶悪に酷い……。

 今度からPKに襲われたら逃亡を選択しよう。


 ステータスを確認したらビギナー15レベルと成っていた。シラヒメは16になっていたので差が埋まってない。グリースは11か。

 【格闘】でパワークラッシュという技を既に覚えていたようだ。全然気付かなかった。

 命中マイナスの威力倍とか地味に酷いな。ゼロ距離用じゃねえか。


 溜め息を吐いたところで再びポーンという音が脳裏に響く。


「まーたーかー。今度は何だよ……」


 ━━プレイヤーのレベルが一定値に達しました。ペットのステータス閲覧制限を解除致します。


 これはアレキサンダーの見えなかった部分のことか。俺の前でぷるぷる震えてるアレキサンダーの頭上にステータスを開く。


 名前:アレキサンダー

 種族:レッドスライムLv.20

 所有スキル:【物理攻撃無効】【溶解】【インベントリ】【ジャンプ】


「……」


 えー、お前レベル20だったの? 最初から20あった訳?

 少なくとも5レベル差があったらステータスは閲覧できないのは分かった。最初からスキルが4つあったところをみるに、レベル15以上だった可能性も捨てきれない……。


 あ、通達に続きがあるな。


 ━━ペット、レッドスライムのレベルが最大値に達しました。

   対象は進化します。進化先を選択してください。

   ・レインボースライム

   ・エルダースライム


 レインボースライムはほぼ全ての属性魔法を使えるスライム。エルダースライムは1属性に特化して(アレキサンダーの場合は火)ステータスがアップしたスライムだそうだ。


 選択画面が表示されたままで目の前にいる本人に聞いてみる。


「アレキサンダー、お前エルダーとレインボーとどっちがいい?」


 体を傾けて不思議そうにしているので、右か左かで選ばせる。右がレインボー。魔法をバンバン使いたい方向に行くか、今まで通りぽよんぽよんしていたい左かを決めてもらう。

 しばらく左右をキョロキョロしていたアレキサンダーだったが、左の方に移動してぷるぷると体を震わせた。


「エルダースライムっと」


 選択すると同時にアレキサンダーの体が光輝く。まん丸ボディが丸ごと発光体となったかのような光を放ち、唐突に収まった。


「チ、チー?」

「ぴい?」


 シラヒメとグリースが戸惑うほどの変化がアレキサンダーに起こっていた。

 色は変化がない。トマトのように赤いままだ。

 変化したのは大きさである。サッカーボールくらいのサイズから、直径50cmのビーチボールサイズへと巨大化していた。

 つぶらな瞳はそのままだ。頭頂部に埋まる従魔の証と指輪も変わらない。

 もしかしたら従魔の証は登録し直しかなあ? あとでギルドいったら聞いてみよう。


 進化したことで主人の欄からはアランたちの名前が消えてしまっている。大丈夫か、これ。

 そしてしばしその場に留まってみたが、追加の通達はそれ以上来なかった。

 そんで進化後のアレキサンダーのステータスがこちら。


 名前:アレキサンダー

 種族:エルダーレッドスライムLv.1

 所有スキル:【物理攻撃無効】【溶解】【インベントリ】【ジャンプ】【炎魔法】


 なんて恐ろしい奴になってしまったのか。頭に乗せたら首が折れないか心配になる。

 というか【炎魔法】ってなに?


 そしてもうひとつ気掛かりなことがある。戦闘終了から20分近く経っていて城が消えていないのだ。


「完全に街道塞いでんな」


 端から端までにPKプレイヤーを納めようと、かなり急いだからな。落ちた位置に関してはあんまり気にしなかったせいもある。


「このままここに置いといたら、イベントと勘違いされそうだなあ……」


 街道だから人が通らない訳はないだろう。今は奇跡的に人通りがないけれども、それも時間の問題だ。

 ヘーロン側から人が来るかもしれないので、街道沿いの木立の中へ息を潜めて隠れる。もう少しで30分になろうかという時分に、イビス側から声が聞こえてきた。


 「城だ!」

 「なんでこんな所に城が?」

 「クラン・エトワールの仕業か? 俺たちをヘーロンに進ませないための」


 うっわー。おもいっきりアルヘナたちに迷惑が掛かっているよ。……と思ったところで城が消える。石垣(天守台)に寄り掛かっていたと思われるプレイヤーが倒れたようだ。


 「あいたたた……」

 「城消えたねー」


 向こう側にいたのは男性で大剣を背負ったのが1人。金属鎧で固めたのが1人。女性は弓持ちが1人と杖持ったのが2人だ。


 「ハッ!? もしかしてここで何かイベントがあったから、城が残ってたとか?」

 「その可能性はあるわね。襲撃イベントの時も、10分くらいで城は消えたと言うし」

 「じゃあエトワールもここを通り過ぎたばかりだということか!」

 「今なら追い付けるかもしれねーぜ! 走るぞ!」

 「あっ!? ちょっと待ってよー!」


 なんだか金属鎧を着た戦士のはしゃぎっぷりが凄いな。

 がっしゃんがっしゃんと喧しい音を立てながら、先頭切って走っていった。杖2人と戦士が続き、弓持ちが泣きごと言いながら追っていく。

 ゲーム内でも運動オンチというのはいるんだろーか?


 ヘーロンにアルヘナたちがいないことを祈ろう。

 隠れていた場所を出た俺たちはヘーロンに向かって移動を始めた。



 進化にするかランクアップにするか悩みました。

 何か適切な単語があった気がするのだけれども、歳のせいか忘却が酷い……。

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