59 魔女から報酬をせしめる話
タイトルが酷い再び。
はむ! ぱくっ! むしゃむしゃ!
ばくばくっ! ずずーっ! ごくん!
テーブルの上に大量に並ぶ料理を魔女が片っ端から胃の中へ片付けている。
いやーなかなかの健啖家でいらっしゃいますねー。
俺たちは呆れ顔で積み重なっていく皿を眺めているだけだ。
魔女さんを助け起こして鳴り響いた腹の虫で、俺たちはおおよその事情を察した。本人が「おなか、へった……」と死にそうな感じで呟いたりもしたんでな。
魔女の家のキッチンは、独り暮らしの片付けが出来ない人みたいな感じだった。
食器とフライパン山積みの。変な臭いはするわ、ハエが飛んでるわ。
仕方なく魔道コンロと手持ちの食材を引っ張り出した俺は、アルヘナと手分けして料理を開始したのである。料理スキルが大幅に上がってレベル20に、SPが14になったぜ。アルヘナにも料理が生えたそうな。
現在、汚キッチンはアレキサンダーとシラヒメが掃除中である。汚れだろうがなんだろうがアレキサンダーにとっては関係なく食えるものらしく、食器や器具を丸ごと体に取り込んでから綺麗になったのが出てくる。
シラヒメはそんなキッチンに糸を張り巡らし、Gやハエを片っ端から捕食していた。ペットの使い方としては激しく間違っているが、とてつもなく有能なのは間違いない。
そうこうしているうちに魔女さんは全ての料理を食べ終えた。
「ふう~。生き返ったわ」
「そりゃよーござんしたね」
色々買い揃えていた俺の備蓄はすっからかんだ。また狩りに精を出さなければならんな。
「危うく餓死するところだった……、あ、あら?」
振り返った魔女さんは、俺たち4名のジト目が突き刺さってるのに気付いて顔を引きつらせた。
「まったく、期待したクエストがこんな結末だったなんてね。ぬか喜びだったわ」
「たまには外れクエストもある。次に生かそう?」
「ええっ!?」
アニエラさんとデネボラさんは肩を落として落胆していた。
俺たちの中では1番期待度が大きかったもんなあ。魔女おばさんを餓死から救うじゃ、なんかファンタジーの醍醐味から逸れたようなクエストのような気がしないでもない。
それにしてもこれでクエスト終わりって訳じゃないだろう?
「【料理】スキルが得られただけマシかもしれないですね。あとは骨折り損ですけれど」
「あ、あのー?」
なんか言いかけてるから聞いてやれよお前ら。
「……で、魔女さんは食材代を払えますかね?」
「「「あ」」」
なんか俺のひと言がトドメになったようで、よつん這いになって項垂れてしまった。
これは後で翠や貴広に聞いたんだが、わざと肩透かしみたいなことを言ってNPCの自尊心を煽り、報酬を吊り上げる廃人の手口だそうな。そんなんで増減する報酬があるんかい。
βからのプレイヤー怖っ!
「本当にお手間をお掛けして申し訳ありませんでしたー!」
50代くらいの魔女のおばさんは俺たちに向かってふかーく頭を下げた。
なんでも研究に夢中になっていたら備蓄を補充するのを忘れ、餓死寸前になるまで食料がないのに気付かなかったそうな。いや、気にしろよ。
なけなしの魔力を使って黒猫に助けを呼んでくるように頼んだらしい。
しかし使い魔とリンクすれば喋れたところ、主が倒れてしまったために黒猫が助けを求める行為が結果的に人を襲うように捉えられてしまったようだ。
後日街を回って理由を話し、各方面に頭を下げに行くと言っていた。
「大したお礼にならないのだけれど、命の恩人たる貴方たちにはこれを」
と差し出されたのは【生活魔法】のスクロールが4本。あとアレキサンダーとシラヒメには、キッチンを綺麗にしてくれたお礼として指輪のアクセサリー。防御力+1だそうな。
アレキサンダーは頭頂部にちょこっと出るように体に沈ませて、シラヒメは右前脚にとりつけていた。
「【生活魔法】ってなんだ?」
「ちょっとした旅に便利な魔法よ。手が洗えるくらいの水が出るとか、焚き火用の火種くらいとか、さっぱり出来るくらいの清浄とかが使えるくらいね」
「ほほほう!」
「ああっ、兄さんが悪巧みしてる越後屋みたいな顔に!」
「どんな顔よ!」
直ぐ様スクロールを使用して【生活魔法】を我が物にする。ふはははは、我が野望にまた1歩近付いた!
「ありがとうございます。このような素晴らしい物を頂けて感謝の極み!」
「アンタ本当にさっきと同一人物かい?」
魔女さんの手をガッと握り、真摯な態度で礼を述べる。俺の豹変具合になんだかちょっと腰が引けているようだ。
「ねえちょっと、ナナシさんてあんな人だった?」
「兄さんはあるキーワードに繋がる事柄があれば豹変するんですよ」
「ん、人それぞれ。趣味もそう」
アルヘナたちが訝しげな目を向けてくるが、目的に達するための手段を得られるなら気にもならんな。
あと、そうだ。ちょっと聞いてみるか。
「あー、魔女さん」
「ああ、自己紹介がまだだったねえ。セルテルと呼んどくれ」
「セルテルさんは、次の街に行くにはどうやったら行けるか知ってるかい」
セルテルさんはきょとんとした後に「あー、あー」と納得したように頷いた。
「アンタたち北の街へ行きたかったのかい。それなら印を2つ集めな。それがあれば北の森は通れるさ」
おお、聞いてみるもんだなー。有力な手掛かりがこんな所で得られたぞ。印ってなんぞや?
「あ、あのっ! 印ってどういう物なんですか?」
「ああ、ヘーロンは北の街の門みたいな役割りでね。何人かの顔役がいるのさ。そいつらに認められれば印が貰えるのさ。こんなのがね」
とセルテルさんは俺たちの前に何かを4つ転がした。
それは猫の描かれた銀色のコインだった。
「え?」
「その1人が私って訳さ。おめでとう、アンタたちは合格さ。持ってお行き」
目にして手にしてからようやく、俺たちは今し方手に入れた情報の達成感を得ることが出来た。
「「「やったー!」」」
「でも、あと1つ必要」
デネボラさん。
折角の喜びに水を差すの止めてもらえませんか?
ちょっと気を抜くと女性口調を書いてしまう。後々修正がいっぱい。
習慣が怖い罠。




