57 続・ヘーロンを探索する話
俺は食料品を物色して野菜や調味料を買い足しておく。売ってるものはイビスと変わらないが、こっちの方が品揃えが悪いな。
「買ってくれてありがとうな、ニイチャンよ」
「自分で旨いもんが作りたくてなあ。中々上手くはできないが」
「あっはっはは、そりゃもう経験がものをいうだろう。オレッチと似たようなもんよ。オマケしとくぜえ」
「ありがとうおっちゃん」
葉物野菜を2束余分に渡してくれたおっちゃんに礼を言う。ついでに最近ヘーロンで何か起こってないか聞いてみた。
「何か、と言われてもなぁ?」
「普段の生活では見掛けないもんでもいいんだけど」
「見掛けないと言やあ、最近黒猫に飛び掛かられて怪我をしたってガキが多いと聞くなあ。ウチには子供はいねえが、中には血だらけになったって奴もいるとか」
首を捻っていたおっちゃんが、思い出したというように膝を叩く。黒猫か、なにかクエストに繋がればいーんだけどな。
「ありがとう。参考になったよ」
「こんなんでいいなら、いくらでも仕入れとくぜ! また買いに来てくれよ」
「ああ、練習は数をこなさねばならんからな。また寄らせてもらうぜ」
食料品屋から離れて3人が待っていた所に戻ると、デネボラさんだけが目をキラキラさせていた。
「聞いていましたか?」
「聞こえた。ぜひ黒猫探す」
まあ、見た目魔女っぽいからな。黒猫セットは憧れなのかもしれん。
「済みません兄さん。私もその話はさっき聞きました」
ションボリしながら謝るアルヘナに気にすんなと言っておく。2ヶ所から同じ話がでれば何かのクエストかもしれないな。
「まずは黒猫を探すわよ!」
「マテマテ、まだ行くな」
走りだそうとしたアニエラを掴んで止める。「ちょっとぉ!」と憤慨しているアニエラをアルヘナに任せ、綺麗な石を並べている子供たちに近付く。
【アイテム知識】も使ってよく見れば、ただの綺麗なだけの石ではなかった。中には金や銀が微量に含まれている鉱石も混じっていたりする。それらを吟味して選び、色を付けてお金を渡す。
「あ、こ、こんなに……」
「ちょっと聞きたいんだが、いいか?」
「あ、はい」
壁際に並んで座る子供たちの中から、1番年長っぽい子が答えてくれた。
「飛び掛かってくるという黒猫を見たことはあるか?」
「はい、あります。うちらの仲間にも怪我をしたのがいて……」
「そうなのか。ではその猫を見たのは街のどこら辺なんだい?」
「ええと、確か北側の方だったかなあ」
「そうか、ありがとう。これは情報料だ」
俺が作ったポーションをひとつ渡す。
子供たちは目を丸くして返そうとしてきたが、「怪我をした子に使ってくれ」と持たせてやった。所詮、自分で材料を採取して作った代物、元手はタダである。
「よくもまあ、あんなスムーズに話が通せるもんよね……」
振り返ったらアニエラさんが感心したような顔で呟いた。アルヘナは「兄さんですから」と自慢気で、デネボラさんは「勉強になる」と頷いていた。
いやいや、普通の受け答えだろう。と言っても他人とのふれ合いなんぞ、VRを除けばしたことのない奴も多いだろうしな。
なんでこんなコミュニケーションの乏しい世界になってんのかは解らんが。それこそ総合統制機構に聞かなければさっぱりな話である。
「とりあえず街の北側に行くわよ!」
片手を高く上げてアニエラさんが駆けていく。それをアルヘナとデネボラさんが慌てて追う。
どうせPTを組んでいるので、マップ上にはメンバーの現在地が表示される。見えなくなった3人をマップ頼りにのんびり追えば、アニエラさんがこちらへ手を振ってるのが見えた。
「どうしたんだ?」
「なにのんびり歩いてるのよ! ほら、早く行くわよ!」
「ええー」
俺の背後に回ったアニエラさんに押されて駆け足のようになっていく。同じ場所で待っていたデネボラさんとアルヘナも苦笑しながら俺たちに続く。
「兄さん、気に入られましたね?」
アルヘナが笑いながらそう囁いてくる。
まったく、山猫にでもなつかれた気分だ。
登場人物が多くなると話の進行速度が遅くなる(白目




